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退魔の郷〜神と人間の間の者たち〜  作者: 朝顔


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森での修行 3日目〜森の生活・午前の部〜

「うん、美味しいね」

「……ありがとうございます」

 今朝、夜も明けきらぬ時刻にいきなり押し掛けて来たファビアンは、急遽用意された朝食をそれはそれは美味しそうに口に運んでいる。



 今日はエドワードが早朝散策に出掛け林檎を収穫して来たので、残りの二人はジュエンに叩き起こされた後、朝食を準備する手伝いに入っていた。 

 とはいえ実際に調理するのはジャンとジュエンで、リンガとケントは食器の準備や野菜の皮剥きやパン種の成形などを担当した。

 やはり生まれて初めての炊事に四苦八苦していたものの、実家や学院ではまず体験出来ない事と楽しんでいた。特に自分たちが丸めたパン種が焼き上がっていく様子には目が釘付けになっていた。

 そして焼き上がり、歪に膨らんだ自分のパンを見てお互いに笑い合っていた。



 そうして和気藹々と食事が始まるかと思いきや、突然ファビアンが乱入してきた事に戸惑い落ち着かない3人組。そしてその元凶たるファビアンは、実に優雅に気兼ねなく食事中である。……その場には、何とも言えない空気が漂っている。



 そして微妙な雰囲気が漂う朝食を終え、今日も元気に畑仕事だ。

 この森の畑や果樹園にはそれぞれ特殊な結界を施してあり、各々四季を再現した環境に調整してある。具体的にはあちらの畑は春の環境、そちらは夏の環境、と畑ごとに変えてあるのだ。その為、一年中作付けと収穫が可能という訳である。

 その為季節感というものは無くなってしまうが、森の中に限らず食糧確保は、古今東西生きとし生ける者にとって最重要課題である。

 


 今日は昨日耕した畑に苗を植える作業だ。

「な、なあエドワード……こんな感じでいいのか?」

 恐る恐るといった様子でリンガが尋ねる。

 一応教わった通りにやったつもりだが……これもまた生まれて初めての作業なので自信が持てない。

「そうですね。そんな感じで大丈夫です。」

 対するエドワードはここに住んでいた時は元より、エモリアたちに引き取られてからも土いじりはよくやっていたので、二人の監督を兼ねている。

「エドワード、これでどうだ?」

 ケントは自信満々に言うが……

「もう少し深く植えましょう。これではあっという間に倒れてしまいます」 

「う〜、中々難しいな……」

 ケントがボヤくと

「君が大雑把過ぎるだけだよ」

「え〜」

 そんなこんな言いつつ、3人仲良く植え付けていく。



「……それで、市井の者と退魔師は?」

 3人組が畑仕事に精を出している間、ジュエンは座学である。

 住む者の居なくなった廃屋の1つをジュエンの学習棟として利用している。これは何ごとも雰囲気が大事だという兄ジェスの発案だ。 

 学習棟なので、様々な書物を収納管理する蔵書室も完備している。ここにはジュエンの学習用の書物ばかりでなく、ジェスやジャンの研究資料やエモリア所蔵の医学書、更にはこの家屋の元の持ち主が残した蔵書など、実に様々な書物が勢揃いしている。



 そしてその蔵書はどんどん増えていく。それは各個人の持ち込みに加え、定期的にこの森に訪れる商人として世を渡り歩く退魔師がこれは! という書物を売りに来るからだ。

 ジェスもジャンも何ならホーリーも珍しい書物には目がない方なので、現在学問の最高峰にも引けを取らない規模を誇る。

 そんな訳で、ジュエンの学習環境は実はそんじょそこらの学校などより遥かに充実していたりする。



 因みに今ジュエンが受けている講義は史学である。

 丁度、市井と退魔師が反目し合う要因になった事件があった辺りの内容である。

 元々ジュエンは歴史が好きな方だ。暇が出来たらそういった書物を読むし、兄やジャンに話をせがむ事もある。そして今は兄やジャン、その配下などジュエンが直接知る人物たちが、どう考えてどう行動して来たのかという箇所である。聞く方も真剣になるというものだ。



 真剣にジャンの話を聞くジュエンを眺めている内に、ファビアンは自分もジュエンに講義をしたくなってきた。

 ジュエンの受講態度は非常に良く、理解も早い。講師にとって大変教え甲斐のある生徒である。

 次の算術は自分に講義をさせて貰えないか、弟に直談判してみよう。



 そう思って史学の講義を終えた弟を捕まえ、自分に次の講義を受け持たせてくれと直談判したが、にべもなく断られた。



 ジャンや配下衆にジュエンに纏わりつく凶悪で厄介な害虫認定されている事に、ファビアンが気づくのはまだまだ先の話のようである……

 

 

 こんな感じで森の修行3日目は過ぎて行くのだった

 

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