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退魔の郷〜神と人間の間の者たち〜  作者: 朝顔


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共闘の感想と兄呼びの行方

「「「「は? ……え?」」」」

 ジュエンの言葉を聞いて、シアと兄たちは絶句してしまった。

「……え? ちょ……、ジュエン?」

 シアが恐る恐る尋ねる。

「? 何?」

「あ、あんた……この前の討伐って……オーキシスでのアレよね?」

「うん。そうだよ?」

「あんた……、あの時何人で討伐に臨んだの?」

「最初はルオ爺と二人だったんだけど、斬っても斬っても化け物が増える一方だったから途中でルオ爺が兄様とジャン兄兄を呼んだの。そんで、兄様とジャン兄兄が化け物が増える原因を潰してくれたから、ルオ爺と二人で残りを倒したの」 

「……」

 これを聞いた4人は呆然となった。



「つ、つまり……化け物を屠ったのは、あくまでジュエンとルオ様の二人だって事か……?」

 余りにも次元の違い過ぎる内容に皆、理解が追い付かないが……リンガは何とかそれだけ口に出す事が出来た。

「うん。兄様もジャン兄兄も私とルオ爺の方に手は出して無いよ」

「……」

 あっけらかんと答えられ、4人は何も言葉が出て来ない。



「こ、こんなの…こんなのに追い付ける訳無いわ……」

 図らずも見せ付けられたジュエンと自分の格の違いにシアは愕然とし、嘆く。

「何で?」

 それにしても対してジュエンは首を傾げる。

「シアだって私と同じくらい討伐をこなせば、これくらい出来るようになるよ」

「……」

 シアは今この時ほど、この天然ポヤヤン天才娘が憎たらしいと思った事は無い。

 “何か……叔父様の気持ちが分かった気がするわ……”

 叔父で師匠のクリスは何かと自分とジュエンを比べ、発破を掛けてくるが……恐らく叔父も彼女の兄ジェスに、今シアがジュエンに抱いているような思いを抱いて来たのだろう。

 “叔父様。レンファーラに戻ったら私、死ぬ気で修行を頑張ります!”

 シアは心の中でクリスに誓うのだった。



 そして、リンガたち3人の兄はと言えば……

 “……なあ。いっその事、森に修行に行ったほうが良くないか?”

 “あ! 俺もそう思った! 賛成!!”

 “ですが、森はかなり危険です。私も森へ修行に、というのは賛成ですが……学長やご両親の許可が下りるでしょうか?”

 “そこは何としても説得するんだ!”

 “ですが、どういう風に話しを持っていくつもりなんですか?”

 “それは今から考える!!”

 “……”

 と、森へ修行に行く算段をヒソヒソと話し合っていた。



「それでね。君たちに相談したい事があるんだ」

 今回の討伐における報告と今後の対策の話し合いの最中、ファビアンはジェスとジャンに切り出した。

「? 何ですか?」

 ひとまず相談される事柄に心当たりが無いジェスとジャンは首を傾げつつ先を促す。

「実はね。私はジュエンに(にい)、と呼んで欲しいと思っているんだ」

「……」

 ファビアンはニコニコとこちらを見ているが……それ……今、話し合う事か?



「あ……、そうなんですか?」

 ジェスはだから何だ? と思いながら返す。

「で、先程ジュエンにそう申し出たんだが……」

 もう打診してたのかよ? と、ジェスは呆れ顔になる。

「それで……ジュエンは何と?」

 あからさまにどうでも良いという顔で尋ねる。

「それがね……驚かれてしまって、まだ返事を貰ってないんだ」

 実に悲しげに訴えてくるファビアン。

「……」

 何やってんだこの人? 藪から棒にそんな事を言われりゃ、ジュエンもそりゃ驚いただろう。ジェスはこっそり溜め息を吐いた。

 


「それでシアにまずは君たちに相談しては? と提案されてね。で、どうだろう? あの子に兄と呼んで貰ってもいいかな?」

 なるほど。シアがそう言ったのか。

「まあ、ジュエンが良いと言うなら……」

「駄目です!!」

 ジェスはジュエンが良いなら構わないと思ったが、ジャンは断固拒否のようだ。

「ジャン……何故だい?」

 非常に悲しそうに弟にそう言うが……そもそも何でこの人、ジュエンにそう呼ばせたいんだ?



「兄上。そもそも何故ジュエンに兄などと呼ばせたいのです? 兄上はジュエンの兄では無いのですよ?」

 ジャンもそれは疑問に思ったらしい。実にジャンらしくド直球に問う。

「何故って……お前はあの子に兄兄と呼ばれているんだろう? だったら私も兄と呼ばれたっていいじゃないか?」

「……」

 訳の分からない理屈に二の句が継げない。



「兄上、意味が分かりません」

 ジャンはキッパリと言い切る。

「ジャン……」

 ファビアンは最早泣きそうな顔だ。

「私があの子に兄兄と呼ばれているのは、私はあの子が赤ん坊の頃から世話をして来ましたし、今はジェスと共に暮らしているからです。兄上はあの子の面倒を見てきましたか?」

「……」

 にべもないジャンの主張にファビアンは押し黙る。



「ま、まあ。取り敢えず俺たちからジュエンに聞いてみますよ。それで良いと言えば呼んで貰えばいいし、嫌と言われたらスッパリ諦める。それでどうですか?」

 状況を見かねたジェスがそう提案し、インディオールの堅物兄弟は実に渋々といった風情で了承した。



 後日、改めてジェスが妹に尋ねた所、別に構わないという返事を貰ったファビアンは飛び上がって大喜びしたという。 




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