ジョーと火焔の力の修行4
「う〜ん、こんなもんかぁ?」
防御の技の練習を始めて数日経ったある日、大体カード大の大きさに力を纏められるようになったジョー。
『ふうむ。中々良い感じに纏まっているな』
ヴォルクも何処か嬉しげにそう答える。
「じゃあ、この大きさは合格! って事でいいのか?」
ジョーは期待を込めた眼差しでヴォルクを見つめてくる。
『そうだな。そこまで綺麗に纏める事が出来るのなら、次の段階に進んでも良かろうな』
「本当か!?」
ジョーは前のめりになって問う。
『うむ。良いだろう』
ヴォルクは頷く。
「っゃやったぜーーー!!」
ジョーは心の底から雄叫びを上げた。
「なら、次はどうするんだ?」
ジョーが問いかける。
『次はもう少し的を大きくしよう。そうだな……これくらいにしようか』
と、取り出したのは一冊の書物だった。
「書物?」
ジョーは首を傾げる。
『ああ。次の的はこの大きさだ。頑張ろう』
「……おう!」
その書物は縦横30×20cm程の大きさの、中々立派な装丁の書物である。
ジョーは怯む事無く、次の目標に挑む。
「うへぇ〜、中々難しいな……ほんのちょっと大きくなっただけなのに」
見た目には然程大きさが異ならないが、力をその大きさに纏めるのが中々上手くいかない。
「も〜! 何でだよぉ……? さっきまでちゃ~んと出来たのにぃ……?」
少し的が大きくなっただけで、またもや四苦八苦する羽目になってしまった。
『的が大きくなったからだ。ほんの少しでも力を展開する範囲が広がったら、難易度は格段に上がる』
ヴォルクは冷静に解説してくれた。
「ううう……ヴォルクが言ってた意味がようやく分かったぜ……」
少々げんなりしつつもジョーは練習の手を止めない。
“ほう……愚痴の1つも出るかと思ったが……”
ヴォルクは感心した。
普段は勝ち気で余計な一言も多いジョーだが、退魔師としての修行の際には何一つ文句も愚痴も言わず、ただひたすら目標に向かって努力する。
故に、15歳という若さでかなりの実力を誇る退魔師に育ったのだ。
“やはり“死霊の王”や“雷光の鬼神”の教育が良かったのだろうな”
ヴォルクはそう思った。
「行っくぜーーーー!!」
ジョーは先程よりも密度の高い力を込めて構える。
「おりゃあーーー!!」
ジョーは力を放ち、それは僅かに30×20cmの大きさを形取るも一瞬で霧散した。
「ううう、ちきしょー!」
ジョーは非常に悔しがり地団駄を踏んでいる。
しかしヴォルクは……
“何とも……こんな短期間でここまでこなすのか……?”
呆然とジョーを見つめていた。
“ジュエンにしろジョーにしろ……とんでもない器だな”
心底、そう思った。
一瞬とはいえ、練習を始めて間もなく30×20の大きさに力を纏めるなんて、そうそう出来る事ではないのだ。
ヴォルクはよりジョーの成長が楽しみになった。
本作をお読み頂きありがとうございました。