第1話…今日はきっといい日になる
(俺…猫になってる…!?)
…自分が猫になってることに気付いた…が、寒さでそれどころでは無い。
(ここは…何処だ…?)
辺りは一面雪が積もっている。向こうには木も見える。
(何があったんだっけ…?)
…必死に何があったか思い出そうとするが、何も思い出せない。というか、寒さで思考が上手く回らない
(早く移動しないと…じっとしていても凍えるだけだ…)
…動かなければ。…この体では火を起こして助けを待つことも出来ない。…自分から助けを求めるしか無い。
(…どっちに行けば良いんだろう…)
…それからどのくらい経っただろうか。
どれほど歩いても、雪道が続いている。
(…寒い…)
もう、足の感覚もほとんど無い。
冷たい空気が胸の奥まで入り込み、呼吸もままならない。
(…誰も…居ないのか…?ここは…どこなんだ…?…雪山なのか…?)
(…誰か…)
どこまで歩いても木と雪しか無い。
(寒い…苦しい…もう…やめようかな…もう……諦めようかな…)
(…いや、ダメだ…進まなきゃ…行かなきゃ…)
彼は進み続けた。…この先に何かがあると信じて…
(…あれは…)
光が見えた。
人が居るかもしれない。
そう、思った時だった。
「魔物だー!」
(…え。)
誰かの叫び声が聞こえた。
(まも…の…?)
その直後に、何者かが自分の周りを包囲しているのを感じた。
(え、ちょっと…待って…や、やめ…)
既に体力は限界を迎えていた。身体は雪で凍え、立っているのもやっとだ。そんな状態では逃げる事も、抵抗する事も出来ない。
(…死ぬのか…俺…)
彼は死を覚悟し、そっと目を閉じた。
(あぁ…嫌だな…死にたくないな…もっと生きたかったな…)
「やめて!」
誰かの叫び声が聞こえた。
先ほどとは違う、幼い子供の声だった。
その子は周りの人達を掻き分け、アマの元へ駆け寄った。
「辛かったよね。苦しかったよね。寂しかったよね。もう大丈夫だよ。」
そう、涙を流しながら言ってくれた。
とても落ち着く声だった。
その子のぬくもりを感じながら、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。