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価値観をブラッシュアップしないとやばい人間になるんだなと思った。

作者: 渡丹 藺生華


 ※100%愚痴。いやな話を読みたくないかたはスクロールしないでください











 ちょっと前から親戚の男性(以下おっさん)になやまされている。


 この数年没交渉だったのだが近しい親戚である。

 そのおっさんが入院することになった。

 かなりの高齢だしそろそろそういうことはあるだろうなと思ってはいたのだが、必要なものを揃えるとか入院手続きするとかの手伝いがいやだった。


 少し前に別の親戚が入院したときは微力ながら手伝った。ほとんどなにもできていないも同然だが、やれることはやった。

 このおっさんに対しては指一本動かすのもいやなのだ。


 わたしがおっさんを毛嫌いするようになったのには理由がある。


 まず彼の来歴を簡単に説明する。

 ぎりぎり戦前うまれ、兄弟は十人近く居て四男か五男だった。

 しかし戦時中に男きょうだいがすべて亡くなり、男ひとりになったので特別待遇で育てられる。この辺はわたしの推測もはいっているが、わたしが直に見てきた言動を下に書くので納得してもらえると思う。

 戦後、成績トップで学校を出、就職。結婚には一回失敗。

 母親から「あいつに敷居をまたがせるな」とまでいわれる失態をおかす(くわしい経緯は知らないが、わたし自身が幼い頃直に耳にし、敷居って?と誰かにきくか自分で調べるかしたのではっきり覚えている。実際彼は家に上げてもらえず、すごすご帰っていった)。

 子どもとは没交渉でどこに居るかもわからない。

 やばいおっさんだが、男の友達は多く、信じられないことにその間では評判がいいらしい。


 彼は「男尊女卑」を絵に描いたような人物で、基本的に女はあほだと考えているらしく、年老いてからも彼にとっての姉妹に対しては非常に乱暴、かつ失礼な言動をとった。更に、彼の姉妹に限らず彼の親戚の女は、最低一度は無礼な言動をくらっている。


 女にはたいした用事も予定もないと思っているので、約束を平気で破る。

 女にはたいしたことはできないと思っているので、行事のことをすべて自分の裁量で決める(そしてすりあわせができていないので失敗する)。

 女はばかだと思っているので、すぐにお説教をはじめる。当を得ていれば聴くけれど的外れも甚だしいやつなので誰も聴かず、きらわれる。




 「ただひとり生き残った男児」「学年トップの成績」が悪いほうに響いたんだろうなとしかいえない。




 彼は自分の子どもの頃の、男の子なら食べものが乏しいときでも優先的に食べさせてもらえる、男の子なら多少のわがままは容認される、何故なら男の子のほうが賢いから……という価値観をずっと捨てずに抱えているので、わたしにとっての地雷を思い切り踏んだ。

 わたしが親戚中で一番好きだった、なついていたおばさんに対し、暴言を吐いたのだ。そのおばさんが大きな病気を抱え、闘病中に。

 わたしはその時その場に居て、まだ子どもだったけれどおっさんに猛烈にくってかかり、おばさんと一緒になって病室を追い出した。

 それまでもいやなおっさんだなと思っていたが、反発したらしたで面倒なことになると思い、無視くらいで我慢していたのだ。けれどその時は限界だった。温厚なおばさんも流石に怒っていたし、わたしはおっさんに対して怒鳴り散らした。

 そのおばさんは彼の姉妹である。お互いもう高齢といわれる年齢になり、それまでの人生の積み重ねもあるのに、彼はまるで子どもを叱るみたいに頭ごなしに、それも的外れなことをいった。

 わたしはおばさんと相談し、おっさんを閉め出すと決めた。




 おばさん当人はその後、和解というのではないが、おっさんが見舞に来ても適当に対応するくらいにはなっていたが、わたしはおっさんをゆるすつもりはなかった。おっさんが居る場合は視野にはいらないように逃げ、挨拶も拒否した。自分がなにかいわれるよりも堪えたのだ。


 そのおっさんが、結局おばさんにまともに謝りもしなかったおっさんが、入院するから手続きを手伝えといってきたって、誰がするか。


 最終的に一番近い場所に住んでいる母が面倒を見ることになり、わたしはそれもいやだった。母も迷惑をかけられているので(おっさんは約束破りの常習犯である。特に女との約束はまもらない)、きっと断ると思っていたが、了承したらしいので驚いた。

 あのおっさんと関わるとろくなことはないから辞めろ、どうせお礼も云わないと説得を試みたが母の意思はかたく、おっさんのことで無駄に喧嘩し、わたしは年甲斐もなく泣きじゃくった。例の暴言を思い出したのだ。母が迷惑をかけられているのもいやだったし、母が動けなくなったらまたわたしに話が来るのでは……という懸念もあった。保身である。ついでにそのことでこっちが具合を悪くした。


 数日後、母から連絡があり、「やっぱりやめた」といわれた。

 「ほかに面倒見るひとが居ないから」といううすい理由でもあれだけ手伝いをしようとしていた母が何故、突然心変わりしたのか、教えてもらった。

 おっさんはまったく反省がなかった。性懲りもなく約束を破ったのだ。

 母がしっかり手続きし、病院の職員とも話して調整し(病状からいそがないとまずいのはわかっていたので優先してもらう為に頭を下げてまわったらしい)、それまでのかかりつけ医にも話を通し、おっさんの友人達にも経緯を説明し(そこまでするか?!と聴いたとき思った)、さあ入院するぞというときになって、おっさんがいったそうだ。「俺はここには入院したくない」と。

 流石の母もおっさんのその態度には呆れた。入院しないといけない状態だと説明したが、おっさんはいまいち自分の病状を理解していない。別の、自分が入院したい病院があり、そちらにいくといってきかない。じゃあもっとはやい段階でいえばいいのに、と母がいうと、おっさんはきょとんとしていたらしい。


 それで思い出したのは、おばさんへの暴言だ。おばさんが病気になったことについて、おっさんは的外れなことをいっていた。おっさんは男友達からは頭がいいといわれているらしいし、たしかに成績もよかったらしいのだが、医療関係は欠片も理解しておらず、理解しようともせず、医者から説明されたことも意味はまったくわかっていなかったのだ。


 母はその段でわたしの「おっさんに関わるとろくなことない」という助言を思い出した。

 病院のひとと相談し、あとはおっさんの今の奥さんに任せることにした。おっさんの奥さんは現在、入院するほどではないが体調を崩しており、母もそれで率先して手伝っていたのだが、そちらからもろくに感謝もなかったらしいのでやっぱり辞めてよかったと思う。




 それにしても何故ここまで女に対して無礼なおっさんが誕生したのか。

 子どもの頃に「女はばかだ」と教わっていたとしても、自分の経験でなんとなく補正はするだろう。実際彼は事業の失敗などで困窮した際、親戚の女から助けられている。それも何度も。

 自分が一番かがやいていた、自分のピークだった頃の価値観を捨てられなかったんだろうか。その為に看病してくれるひとまで失ったのだから、ばかな話である。




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― 新着の感想 ―
[一言] これ 立派な短編になっていると思います ☆5
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