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第8話 亡霊の片腕 第6章


「これも何かの因縁だろう・・・・」


前屋敷県議は、そう言って心の姿を懐かしそうに眺めた。


思いがけない話に驚く心に、前屋敷県議は話し続けた。


「最初に会ったのは戦時中で、山岡英一郎くんが君のお父さんを仲のいい同期だと紹介してくれたんだよ。それから会うことはなかったんだが、終戦から1年ほど経った時に突然、私のところに来て『山岡がどこにいるのかご存知ですか?会って話をしたい』と言うので、本人に伝えたら、『今は会いたくない』という返事で結局、会えなかったんだ」


「父が山岡さんのことをずっと気にかけていたことは母からも聞いてます。会えなくて父はとても残念だったでしょうね・・・」


心がそう言うと、前屋敷県議は

「ああ、非常に落胆していたのを今でも覚えているよ。それで、いろいろ話をしていて、君のお父さんが職を探している事が分かったんで、私が『先日行われた衆議院議員選挙で当選した議員が秘書を探しているんだ。やってみないか?』と誘ったんだ」


「そうだったんですか。それで父は議員秘書になったんですね。父が亡くなったのは僕が10歳の頃でしたが・・・議員秘書をしていた事はなんとなく覚えています。いろいろお世話になったんですね」


「いや、私は西田センセイにお父さんを紹介しただけで、後はよく知らないんだけどね・・・国会議員の秘書という仕事は、いろいろあってストレスも強かったんだろうけど・・・紹介しなかった方がよかったのかも知れないと今でも悔やんでいるんだ」


前屋敷県議は心に向かって申し訳なさそうに頭を下げた。


心は県議に向かって言った。

「前屋敷さん、頭をあげてください。父の死は前屋敷さんの責任ではないでしょう」


その言葉を聞いて、前屋敷県議は長い間抱えていた重荷を下ろしたような表情に変わった。


最後に信子が県議に協力を求めた。

「前屋敷さん、いろいろお話ありがとうごさいました。お忙しいところ、誠に恐縮なんですが、もうひとつお願いがあるんです。みなみさんにもお話したんですが・・・」


依頼したのは、今回起きた土砂災害の犠牲者の声を家族らに伝える会への協力である。県議は快く了解してくれた。



帰りの車の中で、心は信子に言った。

「前屋敷県議って、本当にいい人ですね。みなみさんが羨ましいなあ」


信子も

「あんなお父さんだから、みなみちゃんも素直で性格良いものね。・・・もしかして、心くんってみなみちゃんみたいな人がタイプ?」


すると、心は慌てて

「そ、そんな・・・みなみさんは綺麗だし、素敵な方だと思いますが。僕は・・・」

そう言ったところで口篭ってしまった。

「あっ!心くん、好きな人がいるの?ねえ、誰?昔の同級生とか?」


「・・・そんなこと言えません!」


そう行ったっきり黙ってしまった。


『はあ・・・目の前にいるのに、まったく気づいてないんだな、この人・・・』


心は心の中でそう思っていた。


      (続く)


「これも何かの因縁だろう・・・・」


前屋敷県議は、そう言って心の姿を懐かしそうに眺めた。


思いがけない話に驚く心に、前屋敷県議は話し続けた。


「最初に会ったのは戦時中で、山岡英一郎くんが君のお父さんを仲のいい同期だと紹介してくれたんだよ。それから会うことはなかったんだが、終戦から1年ほど経った時に突然、私のところに来て『山岡がどこにいるのかご存知ですか?会って話をしたい』と言うので、本人に伝えたら、『今は会いたくない』という返事で結局、会えなかったんだ」


「父が山岡さんのことをずっと気にかけていたことは母からも聞いてます。会えなくて父はとても残念だったでしょうね・・・」


心がそう言うと、前屋敷県議は

「ああ、非常に落胆していたのを今でも覚えているよ。それで、いろいろ話をしていて、君のお父さんが職を探している事が分かったんで、私が『先日行われた衆議院議員選挙で当選した議員が秘書を探しているんだ。やってみないか?』と誘ったんだ」


「そうだったんですか。それで父は議員秘書になったんですね。父が亡くなったのは僕が10歳の頃でしたが・・・議員秘書をしていた事はなんとなく覚えています。いろいろお世話になったんですね」


「いや、私は西田センセイにお父さんを紹介しただけで、後はよく知らないんだけどね・・・国会議員の秘書という仕事は、いろいろあってストレスも強かったんだろうけど・・・紹介しなかった方がよかったのかも知れないと今でも悔やんでいるんだ」


前屋敷県議は心に向かって申し訳なさそうに頭を下げた。


心は県議に向かって言った。

「前屋敷さん、頭をあげてください。父の死は前屋敷さんの責任ではないでしょう」


その言葉を聞いて、前屋敷県議は長い間抱えていた重荷を下ろしたような表情に変わった。


最後に信子が県議に協力を求めた。

「前屋敷さん、いろいろお話ありがとうごさいました。お忙しいところ、誠に恐縮なんですが、もうひとつお願いがあるんです。みなみさんにもお話したんですが・・・」


依頼したのは、今回起きた土砂災害の犠牲者の声を家族らに伝える会への協力である。県議は快く了解してくれた。



帰りの車の中で、心は信子に言った。

「前屋敷県議って、本当にいい人ですね。みなみさんが羨ましいなあ」


信子も

「あんなお父さんだから、みなみちゃんも素直で性格良いものね。・・・もしかして、心くんってみなみちゃんみたいな人がタイプ?」


すると、心は慌てて

「そ、そんな・・・みなみさんは綺麗だし、素敵な方だと思いますが。僕は・・・」

そう言ったところで口篭ってしまった。

「あっ!心くん、好きな人がいるの?ねえ、誰?昔の同級生とか?」


「・・・そんなこと言えません!」


そう行ったっきり黙ってしまった。


『はあ・・・目の前にいるのに、まったく気づいてないんだな、この人・・・』


心は心の中でそう思っていた。


      (続く)


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