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第8話 亡霊の片腕 第2章

信子は支局に戻るとすぐに心に電話した。


「・・・と言うわけで、集落から100メートルほど離れた一軒家で見つかった片腕の持ち主の行方が分からなくて捜索が続いているの。そこで、心くんの能力を使えば誰なのか分かるかもしれないじゃない。急な話で申し訳ないんだけど明日、私と一緒に現場に行ってもらえない?」


「はい、ぼくは大丈夫です。それで明日は何時に出発ですか?」


「そうね・・・現場の作業が始まる前に着きたいから午前4時出発かな」


「4時は早いですね。信子さん寝る時間ありますか?」


「私は大丈夫。じゃあ明日よろしくね」


いつものことだが、取材となると全力を傾ける信子の健康を気遣う心だった。


信子との電話が終わり、心は自分の部屋の椅子に深々と座って、今回の災害について色々と考えを巡らせていた。


「今回の土石流の現場はこれまでと何かが違う」


心は先程の電話では信子に話さなかったが、今回の土石流災害については、信子から調査の依頼を受けるより早く、発生当初から犠牲者の最後の声などを感じ取っていた。


その中で一軒家からと思われる反応は、これまで感じた事がないぐらい強いものがあり、ひょっとしたら自分の親戚か知り合いではないかと心配していた。


しかし、ここから遺体でみつかった、山岡正吉73歳とミネ72歳の夫婦に心当たりはない。そうなると、強い反応の原因は「片腕」だけが見つかっている身元がわからない、もう一人の犠牲者の可能性がある。

その謎を解くには現地に行くしかないと思っていたところに、信子から電話があったのだ。


「2人で調べれば謎はきっと解けるはず・・・」


心と信子はこれまでも2人で力を合わせていろんな事件を解明に導いてきた。今回も2人で調べれば、うまくいくだろうと、心は期待した。



土石流災害の現場には日の出前の午前5時半ごろに着いた。


今日の作業開始は午前7時からだったので現場には信子たちの他は誰もおらず静まり返っていた。


「さあ、誰もいない今のうちに・・・」


信子は心を連れて片腕が見つかった現場に向かった。


ところが土石流災害の現場に入ったところで心が立ち止まり動かなくなった。


「心くん、どうしたの?」



「信子さん・・・あの、ここでは12人か、それ以上の人たちが亡くなったんですよね。それらの人達の声が一斉に聞こえるんです。無視するわけにはいかないから、その人たちの声も聞いてあげないと・・・」


それをするには時間が足りないと信子は思ったが、調べるのは心なので彼の判断に任せるしかない。


「分かった心くん。がんばって。私もメモを取って手伝うわ」


初夏の陽射しは強く最高気温も30度に迫る暑さ。心はタオルで汗を拭きながら災害の犠牲者一人ひとりの声を聞いていった。



 信子が危惧した通り、片腕だけがだけが見つかった一軒家に到達するのにはかなりの時間がかかり、今日の作業が始まってしまった。仕方がないので、心の能力を使った調査は今日の作業が終わってから行うことにした。


「信子さん、せっかく早く来たのに目的の一軒家までたどり着けなくてすみませんでした」


「心くん、そんなこと気にしなくていいよ!このような調査は、心くんがベストな状態の時にしないとダメだからね。帰りがちょっと遅くなるだろうけど頑張ろうね」 


「今日聞いた犠牲者の最後の声はどうしましょうか?亡くなった方の関係者に伝えたいこともいくつかあるんですが・・・」


「そうね、地元の人に突然、『亡くなった方のお声を伝えます』と言っても、なかなか信じてもらえないだろうから、誰か地元のことをよく知っている人に手伝ってもらえれば・・・」


・・・と、そこに聞き慣れた声が・・・


「ノブちゃんお疲れ様」


アナウンサーのみなみが声をかけてきた。



信子と心は顔を見合わせて


「みなみちゃん!お願いがあるんだけど・・・」


   (つづく)


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