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遺体は語る 第6話 廃校に幽霊が出た 第1章

「母校」・・・自分が学んで卒業した学校のことである。

その言葉の響きは、優しく、懐かしく、学んだ頃の思い出が蘇る。

しかし、子供の数が減って、「母校」が消えてしまった人たちもいる。


心の中に残る「母校」・・・いつまでも懐かしい



「僕は、いま向かっているM町の柿之木かきのき分校には、5年前の廃校式の時に、取材に行ったことがあるんだけど、その時、面白いエピソードがあるんだ」


 ○○新聞S支局のベテラン記者、浜田公平はまだこうへいは支局の取材車を運転しながら、そう話し始めた。


取材車には記者歴3年目に入った小田信子おだのぶこと、信子に協力する不思議な能力を持つ二十歳の青年,|児玉心(こだましん)が乗っている。


浜田は話を続けた。


「5年前の柿之木分校の廃校式の取材には、4歳の長女と1歳の長男を連れて家族4人で行ったんだ。車を駐車場に入れて家族で歩いてきたら、校庭にいたスーツ姿の恰幅のいい男性が、われわれを見るなり笑顔で駆け寄ってきたんだ。

そして、僕の両手を握りしめ『子供がいる!これでよかった、よかった』と大喜びしているんだ。僕は意味が分からず突っ立っていると、今度は子供に向かって『お嬢ちゃんはいくつ?』『4つか・・・するとあと2年だな、あっ!男の子もいる!』

それで僕もようやくわかったんだ・・・僕たちの子供を地域の子と勘違いして、分校再開ができるかもしれないと喜んでいたのだと。その男性はM町の町長だったんだけど, 僕が説明したらひどく落胆してね・・・その表情を今でも覚えているよ」


「それほど地域にとって、小学校の存在は大事なんですね」

信子が相槌を打った。


「ところが、その分校跡に幽霊が出たと騒ぎになったんですね」

心が言った。


「そうなんだ」

浜田はうんざりしたような表情を見せて言った。今回の取材にはあまり乗り気ではないようだ。


「今回の取材を提案したのは山元支局長なんだ。普通、幽霊話というのは新聞の記事としては扱うことは無いんだけど、みんなも知っているように支局長は『かなりのオカルト好き』だろう。我々は反対したんだけど支社長は『”廃校から5年 分校跡は今”というテーマで記事にするんだ。その中でなぜ今”幽霊話が?’という切り口を加えれば、面白い記事になる』と言って取材を決めたんだ」


心が言った。

「幽霊対応と言うことで僕が呼ばれた訳なんですね。でもどれだけできるかわかりませんよ」

「うん、そこは支局長に確認取っているから。心くん大丈夫だよ」

信子は心を幽霊話に巻き込んでしまったことを申し訳ないと思ったが、彼なしでは成り立たない取材でもあった。


およそ4キロの細い林道を抜けたところに、廃校となった柿之木分校跡がある開拓地が広がっていた。



取材班はまず、町役場の担当者や住民から、廃校後5年間についての基本的な取材をした。

この集落はかつて中国大陸の旧満州に日本から移住した人達が戦後帰国して山地を開拓した場所で、土地に対する愛着が特に強いということだ。


多い時には300人ぐらいいて、小学校の分校もできたのだが、過疎化が進み、今は43人。小学生の数も5年前にはゼロとなり、分校の廃止には住民もしぶしぶ同意した。


廃校のあとも校舎はそのままとなっている。

現在は集会所として使われていて、地域の絆を示す場所でもある。


町では何か観光開発できないか検討していると話していた。

地元でも天体観測施設などを希望する声もある。しかし、予算面で難しいと町の担当者は語る。

いっそのこと「幽霊話」で売り出したらとの声も出る始末。


さて一通り話を聞いて、いよいよ「幽霊話」取材のスタートである。


「死者」の声が聞こえるという不思議な能力を持つ心の大活躍となった。


       (つづく)


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