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遺体は語る 第3話 まるで戦場のよう 第2章

犯行に使われた車はすぐに見つかった。

近くの河川敷に乗り捨てられていた。


心が言ったとおりで、多くの目撃証言とも一致する大型のダンプカーだった。

市内の建設会社が使っていたリース車で、現場に置いていたところを盗まれていた。


警察の発表によると、死亡した4人の内、タクシーの中で死亡していたのは田上浩二たのうえこうじ運転手50歳で、なんと高田運転手と同じ会社の同僚だった。近くに倒れていた犠牲者は男性で、上半身が押しつぶされて損傷が激しく、身元は分かっていない。また、車の中で焼死した2人のうち1人は車の所有者で近くに住む45歳の男性とみられるが断定できず、もう1人は女性で身元は分かっていない。


警察の必死の捜査にもかかわらず、逃走中の容疑者の手掛かりは得られていなかった。


その日の夕方、心が支局に来た。


信子と一緒にベテラン記者の浜田も心の話を聞いた。


「今回はちょっと変なんです。あの後も次から次に映像が出てくるんですが、関係ないようなものも混ざっていて混乱しているんです」


浜田が質問した。

「心さん、君が見た映像をすべて教えてくれないかすべて。関係なさそうなものも含めて」

「はい。まずはダンプカーに追われているのか、怖いという感情と、必死に運転する映像です。この後、燃え上がる火が…。誰か分かりませんが男性の悲鳴のような声も聞こえました。それと走って逃げるような様子も…。本当に怖かったです。で、それらの映像の途中に断片的に室内で数人の人が倒れている映像が見えるんです」

「他に気になるものがあった?」信子が聞いた。

「男性の顔もところどころで入ってくるんです。誰なのか分からないんですが…」

「心さん、君がこれまで他のいろんな事件の時に見た映像はすべて関係があるものだったよね。だから、今回もまずはすべて何らかの関係があると考えたほうがいいと思うんだ。特に数人が屋内で倒れているという映像は気になるので、もう少し詳しく説明して」

浜田は時折、心に質問しながら、映像の内容を詳細に書きとめていた。


最初は心の話を「常識ではありえない」として疑ってかかっていた浜田だが、いまでは心の話をちゃんと聞いてから判断しようという姿勢に変わってきている。

信子は浜田の対応力が高いことに感心して2人の様子を見ていた。


心と信子が最初に「女性変死事案」で出会ってからから1年以上たち、心は19歳になっていた。高校はなんとか卒業したが大学は受験しなかった。

「もう少し時間をかけて自分の進むべき道を探りたい」として

進学しないことを母親に告げた時、母親の岬は

「いくらでも自分の納得がいくまで時間をかけていいよ」と答えたそうだ。


最初に出会ったころと比べて、今の心は「死の瞬間を見る」という不思議な能力はそのままだが、暗い表情を見せることは少なくなり、支局にもよく顔を出すようになっていた。


「浜田さん、心さんの話を聞くの、終わった? もういいね。じゃあ心さん、そこまで送るよ」


信子は心を近くのバス停まで送ることにした。


支局のドアから外に出たとき、心が急に立ち止まり

「信子さん!ちょっと待って!」と叫んだ。

「何?心さん」

「何か危険を感じるんだ」

「危険って何?」

心が道路を見渡すと50メートルほど先に停車していた白い乗用車が急発進するのが見えた。乗用車は2人に向かって猛スピードで突進してくる。

「信子さん!危ない!」


          (つづく)


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