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第2話 7人の白骨遺体 第8章

記者による張り込みが行われることになった。


ターゲットは集団心中事件の生存者である赤城美知の周辺に、1週間ほど前から出没している中年の男性だ。


美知は1週間ほど前にこの男性から路上で声をかけられたが、危険を感じた美知はそのまま走って逃げた。その後、男性からの接触はないが、男性から自宅を監視されている気配が感じられ、警察に相談するかどうか迷っていたという。男性の顔に見覚えはなかったが、心の家で叔母の仁美が持ってきた写真に写っていた男性の顔を見て、美知は驚いた。1週間ほど前に美知に声をかけた男性は美知の母と心中したはずの馬場浩一郎にそっくりだった。


「えっ、この男性はお母さんと一緒に亡くなった人でしょう」

父親が殺人で服役中、他の家族は失踪し、馬場浩一郎の家族と一緒に無理心中したとされ、一人残された美知を引き取った叔母の仁美は、一連の悲惨な出来事には触れないようにして美知を育ててきた。従って、美知は馬場浩一郎の顔は全く知らなかった。


死んだはずの馬場浩一郎が生きていた。

では、白骨遺体の男性は誰なのか?


心が口を開いた。

「僕もびっくりしました。遺体発見現場で僕の前に展開された映像に、苦しそうな男性の姿もすこしではありますが見ることが出来たので、その男性が心中したとされる馬場浩一郎さんだと今の今まで思っていたんですが、写真の男性とあまりにもイメージが違うので不思議に思っていたんです。もし、白骨遺体で見つかった男性が別人だったら納得できます」


信子はしばらく考えた後、提案した。

「今までの話をまとめると、死んだはずの馬場浩一郎さんが生きていて、近くにいる可能性があります。これが事実だったら大変なことです。一般的には、これから先は警察に任せるべきだとなりますが、心さんの見た映像の話などをすると、警察では信じてもらえません。一笑に付されておしまいになります。でも、このままほっておくことはできません。それならば、馬場浩一郎さん本人を捕まえるしかありません」

信子の提案にはその場にいた人たちも賛同した。

心も協力を申し出た。赤城美知と叔母の仁美もできる限りの後方支援を約束した。


張り込みをするとなると人数が必要になってくる。

支局に帰った信子は山元支局長と浜田記者に相談した。

そういうことにはすぐに乗る山元支局長は

「面白そうだね。まるで刑事ドラマみたいだ。支局のみんなで協力しようよ」

協力については支局の了解が得られた。支局には支局長を除いて記者が7人いる。まずは3日間、赤城美知の自宅周辺の張り込みをすることになった。

美知の自宅には叔母の仁美も3日間泊まり込み、連絡用の記者が1人配置された。自宅近くの車の中に2人、そして浜田か小田のいずれか1人、これに心も参加し信子と一緒に行動した。

浜田は支局のみんなに注意を促した。

「この件については危険性があると思います。我々は警察官ではありません。記者です。危険を感じたらすぐに逃げてください。それと、最終的に警察が出ることになると思いますので、私の方から警察の幹部に事前に話を入れておきます」


まだ携帯電話も無い時代だが「ハンディトーキー」と呼んでいた携帯用小型無線機で連絡を取り合って男性が現れるのを待った。

1日目、2日目は全く動きはなく、一応の区切りとした3日目を迎えた。


夕方になって、きょうもダメかとあきらめかけたが、

張り込みに志願して参加していた心は信子に言った。

「信子さん、大丈夫です。今日は出てきますよ」

「えっ、心さん、どうして分かるの?」

「いや、単なる勘です」

心は笑ってごまかした。


突然、赤城美知の家にいた記者から連絡が入った。

「美知さんが今、家の前を通った男が彼だったようだと言ってます。あっ、また帰ってきます。どうぞ」

「了解、こちらで近づいでみます。車の無線どうそ」

「はい、車です。どうぞ」

「車の2人も降りて男を囲んで、どうぞ」

「車、了解」


男性は

丁度、美知の家のまえに来たところで4人の記者らに取り囲まれた。

信子が聞いた。

「馬場浩一郎さんですね」

「はい、そうです」

男性は答えた。

                   (つづく)

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