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第2話 7人の白骨遺体 第6章

服役中の赤城研二の家には若い女性が住んでいた。


信子はドギマギしながら思わず

「どちら様ですか」と聞いてしまった。

出てきた女性は

「はあ? 何ですか? どちら様ですか?」と応えた。

「あっ済みません。名乗りもしないで変なことを言って・・・」

信子は名刺を渡しながら

「○〇新聞S支局にいます小田といいます。初めまして」

「4~5日前にS市C町の山の中で7人のご遺体が見つかったのはご存じですね」

女性は警戒の表情を示しながら黙っていた。

「その取材を今しているところなんです。赤城さんのご自宅は誰もいないだろうと思ってきたら、住んでいる人がいるようだったのでびっくりしたんです。もし差し支えなければ、あなたのお名前を教えて欲しいのですが・・・」


すると女性は

「赤城美知あかぎみちです」と答えた。

「えっ、赤城さんのご家族は子どもは2人じゃなかったんですか」

「ええ、私は長女で、妹と弟がいました」

「そうですね。警察発表によると赤城さんのお宅で亡くなった女の子は確か次女の方でしたね。そうですか、じゃあ長女のあなただけが助かったんですね。よかったですねですね」

そう言うと信子は、きのう心から山中の修羅場の模様を聞いたばかりだったので思わず涙が次々にこぼれてきた。


そんな信子の様子にびっくりしたのか、

美知は「玄関先では何ですのでどうぞ」と言って中に入れてくれた。


美知によると母親の赤城静香と妹と弟の妹が命を絶った8年前のその日には、美知は同じ市内に住む叔母のところに遊びに行っていた。父親の研二が殺人事件を引き起こした上に、その原因が自分の母親の不倫であることから当時12歳だった美知は家にいることがいやで、同じ市内に住む叔母のところに入り浸っていた。

美知が自宅に帰ると、テーブルの上に手紙が残されていた。


手紙は美知に宛てたものだった。

「きょう馬場さんから、お父さんの事件以来初めて電話がありました。馬場さんが外出から帰ったところ、奥さんの沙耶さんと2人の子どもが亡くなっていて、心中だったそうです。沙耶さんは、うちのお父さんから5歳の子どもを殺されて、その原因が夫の不倫だったことなどから非常に気落ちしていたそうです。あなたも知っているように、うちのお父さんはとても乱暴な人でした。私も何度殴られたことか、子どもたちにも暴力をふるっていましたよね。お父さんはお酒を飲むと別人のようになって暴力が出てしまう、本当は弱い人だったのかもしれないけど、私は耐えきれませんでした。その私を救ってくれた人が同じ職場で働いていた馬場さんでした。どのように釈明してもあなたは私を許してくれないでしょうが、本当にごめんなさい。馬場さんも非常に苦しんでおり死にたいと言っていますので、私も一緒に行きます。あなたの妹と弟はまだ小さいので一緒に連れていきます。ごめんなさい。あなたはもう12歳ですから置いていきます。辛いでしょうが頑張って生き抜いてください。勝手なお母さんをゆるしてください」


美知は母親の手紙を読み終えて言った。

「ねえ、小田さん。どう思います? ひどい話ですよね。妹と弟は何も知らないまま、短い命を消されてしまったんですよ。何も一緒に連れて行かなくてもいいじゃないですか。本当に身勝手な母親です。でもそのような心中という結論を出すしかなかったって、憐れで、なんてかわいそうな人生だったんでしょう。なんでこんなことになってしまったんだろう」

そういうと美知は泣き崩れた。 


信子がお礼を言って帰ろうとすると、美知は「お願いがあります」と言った。


それは心が見たという8年前の山中の様子を直接聞きたいということだった。

美知にとっては、母親と妹、弟が突然、お別れも言わずに自分の前から姿を消したことで、とても大きな喪失感を味わった。心が持つ特殊な能力を100パーセント信じてるわけではないが、心から話を聞くことで決着がつけられるような気がするというのだ。


信子が

「でもまるで地獄絵のように悲惨でむごたらしい地獄絵のようなものですよ。多分大きなショックを受けることになりますが、それでもいいですか」と言うと

美知は

「でも、もう一度、家族と会いたいんです。例え話だけでも・・・」


                     (つづく)



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