表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/83

第65話 狩人のおっさんから恋愛について聞く

 レーナに連れられて、旅をすること三日間。

 女子達は宿の同じ部屋に泊まるのだが、俺は大部屋で他の旅人と雑魚寝である。


 うーむ!

 一人部屋は経済的ではないから分かるとして、なぜ俺だけが一人で……。

 いやいや、男だからだ。


「ドルマさんは、うちの孫とまだまだ清い関係でしょう? だったら同じ部屋なんてだめよ」


「それを言われてしまうと納得する他ない」


 俺は一瞬でレーナに論破された。

 では、エリカとただならぬ関係になればいいのか。

 いやいや状況はそんなに簡単ではない。


 まず、俺とエリカのそこら辺りの感覚は、思春期入りたての若者レベルだ。

 戦いの中ではよく抱きかかえたり、くっついたりはしている。


 だが日常でそういうことはあまりしない。

 お互いの距離感を測っている感じがする。


 そのうち、距離を詰めていかねばならんのかも知れないな……!

 俺は大部屋に寝転びながら、うむむむ、と唸るのだった。


「おい兄ちゃん、うるせえぞ」


「おっ、すまんすまん。男女関係について考えてたんだ」


「なんだなんだ。兄ちゃん、昼間の女連れのやつか。羨ましい野郎だと思ってたら、どうして一人だけ大部屋で雑魚寝してるんだ」


「実は仲のいい女子とまだまだ関係が発展して無くてな……」


「そうかそうか」


 俺の近くに寝ていたおっさんは興味津々になったようで、近寄ってきた。

 酒瓶を握りしめている。

 寝酒か。


「兄ちゃんも飲め。こいつはな、地酒でなかなかいけるぞ」


「器が無いが」


「回し飲みだ」


「よし」


 そういうことになった。

 このおっさん、話を聞いていると、どうやら凄腕の狩人らしい。

 だが、ゴブリン戦争で職を失い、こうして放浪しているとのことだ。


 せっかくなので、旅の同行者に誘った。

 名前をゴメスと言う。


「兄ちゃん、男と女っつーのは、スピード勝負よ。狩りと同じだ。目星をつけた獲物を、それと気付かれないように追っていって……相手を知ったら、罠を仕掛けて一撃!」


 矢を射る仕草。


「それで俺は嫁さんと結婚した。ちなみに別れた。娘は取られた」


「人に歴史ありだな」


「兄ちゃん優しいなあ。ほら、飲め飲め」


「おうおう」


 ゴメスと語らいながら酒を飲んでいたら、二人とも前後不覚になってぶっ倒れて寝た。

 そして朝。

 酒臭い俺をエリカが迎えに来た。


「うわーっ、ドルマ、酒を飲みすぎだ! やっぱり一人で寂しかったのか?」


 心配してくる。

 やはりエリカは最高である。


「それもあるが、このおっさんと意気投合したんだ」


「ゴメスだ。よろしくな」


「仲間になるのか! よろしく、ゴメス!」


 エリカがスッと受け入れたので、狩人のゴメスが仲間になったぞ!

 武器が飛び道具なので、どうもホムラと戦い方が被るのではないかと思ったが。


「見てろよ。ふっ」


 ゴメスは弓に矢をつがえるなり、前方へ射った。

 すると、茂みの中の何かに当たったらしく、「ウグワーッ」と声がした。


 山賊っぽいのが、頭から矢を生やしてぶっ倒れてくる。

 慌てて飛び出す山賊の仲間たち。


「おおーっ、よく気付いたでござるなー!? だけどあの距離は、拙者の投擲だとちょっと遠いでござるな」


「おう。弓矢はな、射程距離よ。麦粒ほどにしか見えない遠くにも、俺は当てるぜ。獣よりは、人間の方がよっぽど楽だわな」


 ゴメスは笑いながら、矢を連射した。

 山賊たちがクロスボウなどを構える前に、全員が射殺(いころ)される。


 やるなあ。


「チェック! ふむふむ。魔弓ゲンジだね、それは? 本当に選ばれた射手にしか扱えないという伝説の弓だ。それをどこで手に入れたの?」


「おう御婦人。こいつはな、嫁さんの嫁入り道具だ。離婚して出て行っちまったが、俺が酒瓶と一緒にこいつを抱きかかえてたんで、持ってくのを諦めたんだよ。ま、手切れ金みたいなもんだろう」


「ふうん、君のお嫁さんの一族は、その弓を扱えたのかしら」


「ここ何十年も使える人間は出てきてねえって話だぜ? そもそも俺が嫁とくっついたのは、このゲンジを扱えるからみたいなところもあってな」


「なんだと、話が違うぞ」


 俺が反応した。


「目当ての女子を追いかけて、罠をかけて一撃で落とすんじゃなかったのか」


「そんなもんは理想論だ。酔ってる俺は適当しか言わねえぞ」


「なんということだ」


 ショック!


「むっ、ドルマ、それは一体何の話だ!」


「なんでもないぞ……」


「なんでもなくはない! 目当ての女子ってなんだ! 私に教えるんだ!」


「うおー、エリカ、近い近い!」


 俺達がぎゅうぎゅうやり合っている様子を、レーナとホムラとゴメスがニヤニヤしながら眺めているのだった。


「このいつまでも詰まらない距離感が絶妙でござるなあ……。拙者がこのパーティにいる理由でござるよー」


「嬢ちゃんいい趣味してんなあ」


 こうして俺達は、さらに賑やかになりながら旅を続けて……。

 ついに、ドワーフの都市……の入り口に当たる場所にたどり着いたのだ。


 そこは、鉱山に見える。

 なるほど、あちこちで働く人達がおり、山の周囲には街が広がっている。


「ここがドワーフ王国の入り口なのか。人間の鉱山都市にしか見えない」


「そう言うふうに見せかけてるのよ」


 レーナが説明をしてくれた。


「この鉱山都市全てが、ドワーフ達に雇われた人間によって作られているの。鉱山の持ち主はドワーフ。だって、あの鉱山を作ったのがドワーフなんだもの。あれそのものが、王国への入り口よ」


 なるほど、これはスケールが大きいのだった。


突然の新しい登場人物……!


気に入っていただけましたら、下にある星をツツツーッと増やしますと作者が喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 狩人のおっさん、伝説っぽい武器は持ってるけど伝説の職業ではなさそうだしやはり一発屋か? [一言] ドルマが口説き方をラーニングするのはいつになることか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ