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第48話 思い出したカイナギオ

 元の時代に戻ってきたら、ポータルで沢山の人々が補給をしているところだった。

 ここは商業都市ポータルとしては稼ぎ時。


 しっかり、何もかも有料でお金や交換品を巻き上げている。

 それもないなら、労働で返させるわけだ。


 この沢山の人々。

 彼らはみんな、思い思いの武装をしている。

 つまり、これからゴブリン王国との戦争に行くということだろう。


 その中に見覚えがある一団がいた。


「おーい」


 俺が手を振ると、向こうはハッとした。

 ローブを纏った、骸骨のような風貌の男……。

 カイナギオである。


「師匠! 青魔道士様!! わしは思い出しましたぞーっ!!」


「カイナギオもトニーと一緒で、一人称わしにしたのか」


「はあ。いい年なもので」


 以前とは打って変わってフレンドリーになったカイナギオがやって来た。

 そしてエリカがいるのを見て、ちょっと警戒する。


「大丈夫、エリカは友好的な相手の頭は割らないから」


「そ、そうですか。半モンスター化したとは言え、頭を割られると下手をすると死ぬので……!」


 カイナギオは俺の影に隠れるように移動してきた。


「ところで、どういう風の吹き回しだ? 完全に敵対してたと思ったが」


「それが……。以前までのわしは、頭の中にモヤがかかったような状態だったのです。怒りとか憎しみとかが無限に湧き上がってきて……。師匠との出会いも忘れておりました」


「ははあ。俺がタイムリープで過去に戻り、若いカイナギオにランドシャークを教えたことで縁ができたんだな」


「ああ、そうでした! ランドシャークも師匠から教わったのでした」


 カイナギオ、もう完全に弟子モードになっている。


「ドルマ、誰だこれは?」


「誰だって、隣村を支配していたカイナギオだろう」


「えっ、そうなのか!? 雰囲気がぜんぜん変わったから気付かなかった」


 驚くエリカ。

 確かに、以前のカイナギオとは表情の柔らかさが違う。


「ふむふむ。これはあれでござるな? カイナギオ殿の心を、何者かが縛り付けていたのでござろう! 拙者は創作に詳しいでござるよー」


 ホムラの意見はあてになるの、ならないのか。


「つまり、ドルマ殿の愛の力がこっちの時代のカイナギオ殿の心を救ったでござるよ」


「なんてキモチワルイ事を言うのだ」


「キモチワルイ!?」


 おっと、カイナギオがショックを受けている。


「悪い悪い。で、村人を連れて義勇軍になりに来たのか」


「はい。青春を思い出しましてな……」


 俺たちがカイナギオやトニーとともに冒険をしたのは、時代とすると五十年ちょっと前だろう。

 確かに、彼にとっては懐かしい思い出なのだろうなあ。


 そしてカイナギオの他に見知った顔がもう一つ。


 他人のふりをして素通りしようとしたが、その竜騎士の鎧はすごく目立つぞ。


「アベル! アベルじゃないか!」


 エリカが声を掛けたら、露骨な舌打ちが聞こえた。

 嫌そうに振り返るアベル。


「あっ、これはツンデレでござるな! 拙者こういうのにとても詳しいでござるよ!」


 ホムラが嬉しそうにアベルを指さした。


「人を指差すな! おいドルマ、エリカ、なんだこいつは」


「新しい仲間、忍者のホムラだぞ! 物を投げるととっても強いんだ!」


 エリカは嬉々としてホムラを紹介した。

 ホムラのドヤ顔。

 これを見て、アベルは心底嫌そうな顔をした。


 この男、常に俺たちと同行している時はやる気がない。

 そして自ら受けた依頼は、大体不本意な結果に終わるし、恨みがない相手を手に掛けることになる。

 なんか呪われてるのか?


「ドルマ、可哀想なものを見るような目を向けるな。補給が済んだらさっさと出立するぞ。お前らも来い」


「よし、行こう!」


 どん!と立ち上がるエリカ。


「行くでござる!」


「エリカが決めたなら行くか」


「おほー、ドルマ殿とエリカ殿は通じ合ってござるなあー」


 ホムラはあれか。

 他人の関係性大好きっ娘か。


「そうだぞ?」


「まあそうだな」


「こいつらは同類なんだよ。おい、グズグズするな。補給だぞ補給」


 他人に興味がないアベル、急かす急かす。

 こうして、休む間もなく物資を補給し、俺たちは義勇軍に加わったのだった。


 ちなみに俺とエリカはそろそろ金が無いので、あっちで拾ったゴブリンジェネラルの装備を換金することにした。


「タイムリープは楽しいが、金が稼げないのが弱点だな」


「そうだな! こっちでまた仕事を引き受けて、活動資金を作っておかないとな!」


 今後の計画について話し合いつつ、エリカは食料。

 俺は安物の投擲武器を大量に買い込んだ。


 ミサイルは石を使ってもいいが、大きさがまちまちだし、そうすると威力も安定しない。

 やっぱり投擲武器を爆発させるのが一番だ。


「師匠、ちなみにゴブリンジェネラル以上の相手の耳を持ってくると、賞金が出ますよ」


「なんだって!!」


 カイナギオから耳寄りな情報。

 どうやら、各国政府はゴブリン王国による大侵攻を問題視していて、今回で決着をつけるつもりらしい。

 ポータルは金を使って義勇兵を援助し、他の国々は軍隊を送り込んでいるとか。


 ゴブリン王国幹部を倒すと、各国から賞金が出るというわけだ。


「これはいいな! 英雄的戦いとお金稼ぎが一緒にできる! よしドルマ、大儲けするぞ!」


「おう、稼ぎまくろう」


 エリカと二人、モチベーションを高める俺なのだった。

ここからゴブリン王国現代編!


気に入っていただけましたら、下にある星をツツツーッと増やしますと作者が喜びます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり投擲武器を爆発させるのが一番だ。 こーゆー、境界線の向こう側の思考は大好物なのでもっとおなしゃす!
[一言] 耳狩り狂戦士ですね、わかります!
[一言] なんか、タイムスリップで歴史を修正するRPGがあったけど、そんな感じですかね。 なんか、おもしろいなあ。
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