おはようございます
寝返りを打つと、ふかふかの枕が頬に当たる。
目を閉じたままその心地よさを満喫していると、首のところに硬い何かがあって、私はかすかに眉根を寄せる。
「んん……」
しかも、気のせいではなくベッドが狭い。
違和感からふと目を開けた。
「っ!?」
目の前に、息を呑むほど美しいグランジェーク様のお顔がある。
私は、彼の長い腕に絡めとられるようにして眠っていた。
え?
は?
どういうこと!?
夕べのことを思い出そうとするも、まったく思い出せない。
吐息がかかる距離にいることに心臓がバクバクと激しくなり、今すぐここから逃げたい。けれど、しっかりがっちり抱き込まれているから動けないし、脚が重だるくて筋肉痛みたいでどうにもならなかった。
私、一体……?
長距離走でもした?
え?ここで一緒に寝てるってことは、まさか……?
「…………」
グランジェーク様はきちんとシャツを着ているし、私もしっかり長袖の寝衣を着ている。
何もなかったよね?
困惑していると、グランジェーク様がゆっくりと目を開けた。
「──シュゼ?」
紫色の瞳が、私を捉える。
ぼんやりした表情が色っぽくて、どきんと大きく心臓が跳ねた。
「お、おはようございます」
「ん、おはよう」
朝が弱いグランジェーク様は、瞼を左手でこする。
同じベッドで、しかも腕枕で眠っていたというこの状況に、彼はまったく動じていないようだ。
何から尋ねていいものか、頬を染めて困惑している私を見て、彼はにこりと笑って額にキスを落とす。
「ひゃあっ!?」
慌てる私に対し、彼はようやく現状を理解して「あ」と呟いた。
「そうか、もう薬が……」
グランジェーク様はしばらく何か考えた後、私を抱き締めて頭を撫でる。
私はドキドキしっぱなしで、ただただおとなしくしていた。
昨日、何があったの?
薄っすら思い出せるのは、グランジェーク様に自分から抱き着いて、それで……
好きだって言ったこと。
前後の記憶があいまいに飛んでいて、なぜ私はあんなことを言ったのかよくわからない。
私は確かにグランジェーク様が好きで、それは間違いなんかじゃないけれど、でもなんであんな風に告白する必要があったの!?
わけがわからない。
う~ん、と悩む私に気づき、グランジェーク様は微笑んだ。
「昨日、シュゼは一時的に記憶を取り戻していたんだよ。ルウェスト薬師長が魔法薬を作ってくれたから」
グランジェーク様によると、記憶を取り戻した私は彼に気持ちを伝え、その後ルウェスト薬師長やマルリカさんの診察を受け、邸に帰ってきたらまた気を失ってしまったらしい。
「効果は6時間くらいかなって言ってたのに、結局8時間半もったんだ」
それは長いのか短いのか?
“応急処置”だそうなので、効果は長持ちした方かしら?
「あの~、ところでこの状態は一体なぜ……?」
「ん?だって離れがたくて。シュゼの気持ちも聞けたことだし、一緒に眠るのは当然だと思ったんだ」
グランジェーク様は幸せそうにそう言った。
あまりに嬉しそうに話すから、私はぼんやりとその笑顔に見とれてしまう。
「今日は休みをもらっているよ。シュゼはゆっくりしていて」
「グランジェーク様は……?」
わかってる。
魔法師団長様がそんなに暇なわけがない。
でも何となく寂しくて、つい不安げな顔になってしまった。
「用事を済ませて帰ってくるよ。待ってて」
「はい」
起き上がったグランジェーク様につられて、私もベッドの上に座る。ところが、ただそれだけの動作で足腰が痛むし腕も痛いし、筋肉痛がすごかった。
「うっ」
「シュゼ!?」
今日が休みで本当によかった。
この状態で城へ向かうなんて絶対に無理だ。
「すみません」
今起き上がったばかりなのに、私はもう一度ベッドに沈んだ。
すると、それを見たグランジェーク様が嬉しそうに笑った。
「食事はここまで運ばせよう。俺が帰ってくるまでいい子にしててね?帰ってきたら思いきり甘やかすから」
もうすでに甘やかされています。
ベッドで食事なんて、どんな重病人かという状態だ。
不甲斐ない……。
しゅんと落ち込む私に、グランジェーク様は「いってきます」と言って優しくキスをした。





