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記憶喪失の薬師ですが、寡黙なはずの魔法師団長様が溺愛モードで離してくれません!!  作者: 柊 一葉


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芽はつむタイプだった

「っ!」


ずきんと一瞬だけ鋭い頭痛がした。

私が顔を顰めると、グランジェーク様がすぐに私の背に手を添えて心配そうに見つめる。


「大丈夫か?」


「あ……、はい」


こみかみに手を当て、深呼吸をする。

クラウディオは私の様子を見て、不思議そうに尋ねた。


「頭痛か?」


何も知らない彼は、私がこうなる理由を知らない。これもまた、「過労のせいで」と言ってどうにかごまかす。


「とにかく、俺はシュゼットに薬を依頼した。その代わり、亡者の森まで馬車を出して一緒に採取に付き合った。交換条件だったんだよ」


「なるほど。ねえ、森っていつ行ったんだっけ?」


「八日前だ。アウレアと俺と三人で行っただろう?」


「アウレアも?」


「あぁ、俺たちが採取に行くっていったら、ずるいって言ってついて来たんだよ。──そんなことも覚えていないのか?」


「あぁ~、今思い出してきた。そうだった」


あははと笑ってごまかすと、クラウディオはじとりとした目で私を見る。

怪しまれている。

それはもっともな反応で、これであえて突っ込まないのはクラウディオなりの優しさとか配慮なんだろうと感謝する。


「あなたに依頼された薬は、もう作ってあると思う。多分、保管庫にあるから後で確認して届けるわ」


わざわざ採りに行ったのなら、その翌日には作ってあるだろう。おそらく私が忘れたままでも、事務官のフィオリーがほかの依頼分と一緒に伯爵家に送ることにはなっていそうだ。


「助かる」


クラウディオは嬉しそうに言った。

よほど薬が欲しかったんだろうな。私は彼を待たせてしまったことを詫びた。


「ごめんね。倒れて、しかも結婚式と休暇でこんなに遅くなっちゃって」


「いや、そんなときにこっちこそすまない」


彼もまた、苦笑いで謝ってくれた。


けれどここで、グランジェーク様がクラウディオに尋ねる。


「なぜシュゼにそんな薬を作らせたんだ?ほかにも薬師はいるだろう」


確かに、宮廷薬師は三十人以上いる。あえて私に頼む理由はない。

クラウディオはそう指摘され、「えっ」と顔を顰めた。


「グランジェーク様みたいな人にはわからないですよ……。ずっと勉強ばかりやってきて、男としては何も自信がない俺の気持ちなんて……!」


とにかく真面目なクラウディオは、これまで恋愛なんてしてこなかったらしい。私の中では、おまもり代わりみたいなもので薬を手にしておきたかったのではと思っていた。


「自分で調合しなかったのはなぜだ?」


「え?規定でそれはできません」


クラウディオの答えに、私も頷いて同調する。

薬師や調合師は、自分や三親等以内の家族の薬は自分で作れない。

依頼する場合は、ほかのメンバーに頼むことになっている。


自分や家族の薬を調合すれば、情で加減を誤る可能性があるからだ。痛みに苦しむ家族を前にして、痛み止めを多く処方してしまうということが以前あったらしい。


どうしても自分で作りたい場合は、確認作業に自分以外を二人入れることが決まっている。


グランジェーク様はさらに質問する。


「同性の薬師に頼もうとは思わなかったのか?」


「いやいや、こんなこと相談したら何て言われるか!バカにされて、からかわれて、一生あれこれ言われます。シュゼットなら、真剣に相談すればバカにしないで手伝ってくれるって信頼してたから依頼したんです」


私って、信頼されてたんだ。そんな風に言われると、ちょっと嬉しい。


確かに宮廷薬師を頼る貴族の中には、人に言えない相談事を持ってくる人が多い。体裁やプライドもあれば、健康に関することは絶対に他者に知られたくないという思いが強いのだ。

追い詰められて、宮廷薬師を頼る貴族は多い。


彼の話を聞いたグランジェーク様は、しばらく黙っていた。

そして、納得した表情で言った。


「信頼か」


「ええ、そうです」


二人の間に、謎の沈黙が落ちる。

クラウディオの顔が、「審査待ち」みたいな緊張感を漂わせている。しかし、グランジェーク様のくだした判断は無情だった。


「やはり君にはここで消えてもらった方がよさそうだ」


「何でだよ!?」


いきなり不穏な結論を出すグランジェーク様に、クラウディオが叫んだ。

可哀そうに、彼は壁にぴたりとくっついて恐怖に襲われているのがわかる。


「シュゼのよさをそれだけ知っているということだろう?それが恋愛感情に育たないとは言い切れない」


「はぁ!?俺はキャロン嬢が好きって言いましたよね!?人の話を聞いて!?」


これには私も思わず呆れ顔になる。


「グランジェーク様、私たちがどうこうなるっていうのはあり得ません。落ち着いてください」


嫉妬の範囲が広すぎる!

婚約者が大好きなクラウディオまで警戒しないでもらいたい。


「シュゼ、俺は世界中を敵に回しても君を守りたい。むしろ全員敵に回ってくれた方が一気に殲滅できていいような気がしてきた」


「発想が攻撃的すぎます」


私の平穏はどこへ!?

記憶を失う前の私、どうやってグランジェーク様と恋人を二年もやっていたの!?

何だか別の意味で頭痛がしてきた……。


これは何としても早く記憶を取り戻さなければ。

私は一段と決意を固くした。

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[良い点] とてつもなく好戦的(笑)。その由個人的には嫌いじゃない。です。
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