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 木のこのめです。

 にっこりと無邪気に笑った少女、木の芽はゆっくりと歩き出しては、三日月に照らされて銀色に染まる時計台を背にして、両腕を天高く上げたかと思えば、マジシャンのように大袈裟に、一斉に、銀色に発光する薄っぺらい何かをばら撒いた。


 瞬間、都人と由枝は木の芽に詰め寄り、メンチ切り。

 仏様だろうが少女だろうが関係ない。

 ポイ捨てする輩は許すまじ。


 瞬殺冷凍化してもおかしくない殺気に、けれど木の芽は目を丸くしたかと思えば、小さく吹き出して面白そうに笑うだけ。


「「おいこら笑ってないでさっさと拾え」」

「あら、ごめんなさい」


 笑いすぎて目尻に溜まった涙を指の背で拭った木の芽。あなたたちが拾いなさいと、今の季節に似つかわしい爽やかな風のように告げた。


 ててって、ててって、ててって、てーん。


 目を点にした都人と由枝は停止した頭を無理くり動かしては、首を傾げて、目をかっぴらき、口をひん曲げた。


「「ああん?」」

「私はこの手紙をばら撒くことはできるけど、拾えないの。だからあなたたちが拾って」


 木の芽は膝を曲げて、ばら撒いた銀色に発光する薄っぺらい何か、封筒を拾おうとしたが、手はすり抜けるだけ。次も、次も、同じく。

 ぱちくり。都人と由枝はゆっくりと瞬いてのち、充血した瞳を癒さんと素早く、何度も何度も瞼を上下させること、百八回。

 この不思議現象を飲み込み、木の芽に視線を合わせてから、ばら撒くんじゃないと注意をして。

 封筒を拾うべくしゃがんだのであった。










(2021.10.31)



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