表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

少女か、カブか、




 象徴として淡い空色の時計台が建てられている、山の麓にある大きな公園。

 遊具はなくとも、だだっ広い草原を悠々と歩いたり走ったり、自分たちで色々と持ち込んでは遊んだりと朝昼は老若男女問わず訪れるのだが、なぜか夜だけは誰も足を踏み入れなかった。

 ライトアップされた時計台はロマンチックな雰囲気を演出するのに格好の的にもかかわらず。である。

 駅から徒歩一時間半。バスも通らないので、観光客が行くとしたら不便は不便ではあるが、自転車は貸し出しているし朝昼には足を運ぶ者もいるし、何より地元民はそうではない。身近な場所である。夜になって急に治安が悪くなるわけでもない。



 ではなぜ地元民さえ夜には近づかないのか。

 地元民曰く。行く気が起こらない。のだそうだ。









 ポニーテールの少年は都人とひとといい、くせっけの少年を由枝ゆえという。


「竜巻だ。由枝」

「噴火だっての。都人」


 ハロウィンの時計台での噂を聞きつけた二人。

 ザッザッザっと勇ましい足音をアスファルトの道路に立てながら、草原へ、そして、時計台へと並んで速足で向かう。


「だから、ハロウィン特有の気象現象で発生した竜巻が道路に落ちているゴミを巻き上げて、ここにピンポイントに落としてくんだって」

「ちっげーだろ。ハロウィン特有の気象現象で発生した噴火が海中に落ちているゴミを飛び上がらせて、ピンポイントにここに落としてくんだっての」

「竜巻」

「噴火」

「竜巻」

「噴火」

「どっちでもないわよ莫迦ねえ」

「「んだこら」」


 二人して目を三角にして振り返った先。

 ポニーテール、涼し気な目元、淡い空の下地に小さな白いカーネーションがちりばめられた着物を身に包み、歯の高い闇夜の下駄を履く少女はなぜか、銀色に発光しており。

 笑う土偶の如く、目と口ができるように切り抜かれたカブがなぜか、少女の肩の上をふわりふわりと浮いていた。

 この摩訶不思議な少女とカブを目の当たりにした瞬間、二人の目は色めき立った。


「「仏様!」」


 都人は少女に視線を固定させて。

 由枝はカブに視線を固定させて。

 そう叫んだのであった。










(2021.10.30)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ