お互いの独占欲
「今日で帰らないといけないなんて名残り惜しいね」
朝ご飯を食べた後、隆史は姫乃とイチャイチャしながら客室でのんびりとしていた。
本当の恋人同士になれたり、美味しいご飯を食べたり、名所を色々と周ったりと楽しめたが、帰る当日になれば名残り惜しさはある。
「そうですね」
どうやら姫乃も同じ気持ちらしい。
だからって後悔は一切なく、箱根に来れて本当に良かったと思う。
行かなくともなれただろうが、旅行で本当の恋人同士になれたのだから。
「でも、この旅行は一生忘れることが出来ません。本当に幸せな旅行です」
こてん、と肩に頭を乗せてきた姫乃は、本当に幸せだと思っていそうだ。
付き合うことが出来たのだし当然だろう。
「もう俺から離れることは出来ないよ」
逃さないように姫乃の頭をギュっと手で抑える。
「離れませんよ。むしろ離したら許しませんから」
どうやら永遠に一緒らしいが、どの道離さないから問題ない。
好きな人のために何でもやろうとする姫乃は、間違いなくヤンデレの素質もあるだろう。
でも、ヤンデレに関してはあまり度が過ぎなければ大したことではない。
歪ませなければいいだけなのだから。
「んん……」
離さないという想いを込めてキスをし、姫乃を安心させる。
恐らく姫乃は一日でもキスをしなければ心配するかもしれない。
それくらい姫乃には脆さがある。
ただ、そんなことは離れなければ問題ない。
お互いに離れたくないのだし、その辺りは些細なことだ。
「キス、凄いです」
蕩けたような表情になった姫乃は、キスの虜になったのかもしれない。
あくまで隆史との時だけだろうが。
「いっぱいしてあげるよ」
「あ……」
頬を優しく手の平で触ってあげると、姫乃は嬉しそうに笑みを浮かべた。
恋人とキスをするのが嫌いな人はそういないだろう。
実際に隆史だって好きなのだから。
「タカくんは私をこれ以上駄目人間にさせてどうするんですか?」
「ずっと一緒にいたい」
ずっと一緒にいれるのが何よりも幸せだ。
「タカくんは独占欲強いですね。私もですけど」
お互いに独占欲が強いと離れるなんてあり得なくなるらしい。
この後家に帰ったら麻里佳が寂しがってくっついてくる可能性があるが、姫乃のためにくっつくのを止めさせなくてはならないだろう。
絶対に嫉妬してしまうはずだから。
「私としては独占欲強いのは大歓迎ですよ」
一秒たりとも離れたくなさそうな姫乃は、隆史の手に自分の手を重ねた。
これも独占欲の現れだろう。
「俺も大歓迎だよ」
むしろ独占してくれないと嫌だし、ずっと一緒にいてくれないと喪失感に襲われそうだ。
それほどまでに姫乃と一緒にいるのが日常的になっている。
時間でいうと麻里佳の方が圧倒的に多くて日常的になっているはずだが、姫乃とは本当に離れたくない。
離れてしまった時には姫乃と同じく喪失感を感じてしまいそうだ。
それくらい愛しているのだから。
「じゃあその証拠を見せてください」
青い瞳が閉じられたため、キスをしてほしいのだろう。
「んん……」
姫乃の唇をたっぷりと楽しんだ。




