キス出来る幸せ
「タカくん。んん……」
明後日からテストだというのにも関わらず、隆史は学校から帰ってきて着替えずにリビングで姫乃とキスをした。
好きな人とイチャイチャしたい、という衝動が抑えきれなくなってしまったため、キスをしてしまったのだ。
キスをするのに恥ずかしい気持ちはあるが、それ以上にイチャイチャしたいという想いが強い。
(キスが一番好きかもしれない)
愛情表現は色々とある中で、キスをしている時が一番幸せだ。
「もう……いきなりキスは反則ですよ」
頬を赤くしているどころか、若干うっとりした表情になっている。
つまりキスが気持ち良いと思ってくれているということだ。
「本当に、駄目になってしまいますよ」
「駄目になればいい」
人は駄目になればなるほど誰かに頼らないといけない。
姫乃が駄目になってくれれば、ずっと側にいることが出来る。
白雪姫と言われるくらいの美少女である姫乃とずっと一緒にいるためには、もっと惚れさせないといけない。
テストの後に告白して付き合えたとしても、この後ずっと一緒にいれる保証はどこにもないのだ。
でも、もっと好きになってもらえれば話は別で、結婚出来る可能性がある。
だから姫乃には是非駄目になってほしい。
「これ以上駄目になったら、離れられなくなります……あ……」
大歓迎と言わんばかりの勢いで抱きしめる。
将来は絶対に結婚したいから離れないで欲しい。
「タカくんのバカ……タカくんは式部さんが好きなのに私をこんなにさせてどうするんですか……」
物凄く小声で何を言っているか分からなかった。
「でも、私のことを好きになってきているのであれば、嬉しいです……」
ボソっと何かを呟いた姫乃に抱き返される。
あくまでカンでしかないが、恐らく姫乃は隆史の想いに気付き始めているようだ。
キスまでしているのだし、気付いていても不思議ではないだろう。
でも、確信は持てていない感じだ。
今の姫乃の積極さであれば、確信を持っていたら告白してきそうなのだから。
ただ、告白するならこちらからしたいので、姫乃に告白はさせない。
なので、まだ麻里佳のことを好きだと勘違いしているのなら、このまま勘違いさせておく。
「今日も勉強しますか?」
「するよ。でも、もう少しこのままでいる」
再びキスで姫乃の唇と塞ぐと、「んん……」と可愛らしい声を出す。
甘い声を出されて軽いキスで終わるわけもなく、甘噛みしたりして姫乃の唇を味わう。
可愛い、と思いながらも、永遠にこの時間が続けばいいなと感じる。
キスをするのが一番の幸せであり、その時間が続いてほしいと思うのは当たり前のことだ。
きっと姫乃だって思っているだろう。
「やっぱり私はタカくんといると駄目になっちゃいそうです。勉強しないといけないのに、止められないです」
隆史が息継ぎするのに唇を離すと、姫乃はそんなことを呟いた。
確かに明後日からテストなのだし、あまりイチャイチャしないで勉強するべきだ。
頭では勉強しないと分かっていても、本能がイチャイチャするのを止められないのだろう。
「もっと駄目にさせたい」
「もう……」
呆れたような声に出した姫乃だが、嬉しそうな表情だった。
他の人にではなく、自分だけの前で駄目になるのであれば大歓迎だ。
「そんなに言うと、もっと駄目になっちゃいますよ?」
「いいよ」
コツン、と軽くおでこをくっつけて見つめ合う。
青い瞳からは熱を帯びているようだ。
「見つめ合うとまたしたくなりますよ」
「いっぱいしよ」
「んん……」
再びキスをして勉強する時間が遅くなった。




