白雪姫専用の駄目人間製造機
「んん……」
カーテンの隙間から漏れ出る朝日、鳥の鳴き声で隆史は目を覚ました。
「おはようございます」
既に姫乃は目を覚ましていたようで、笑みを浮かべて挨拶してくれた。
「おはよう。先に起きてたなら起こしてくれて良かったのに」
「タカくんの寝顔を堪能してました」
好きな人の寝顔でも見たかったのだろう。
笑顔の姫乃は本当に可愛い、と思いつつも、寝顔を見られて恥ずかしい気持ちもある。
自分の寝顔なんて確認出来ないため、どんな顔になっているかわからない。
「ずっと抱きしめてたっぽいけど大丈夫?」
「はい。タカくんの温もりは安心しますので」
起きた時に抱きしめていたのだし、寝てる時も抱きしめていただろう。
実際は寝返りなどで少し離れた時もあったかもしれないが、どうやら本能的に姫乃を抱きしめていたいらしい。
今も離れたいという気持ちが全く湧いてこないのだから。
「抱きしめられるのが気持ち良くて駄目人間になっちゃいそうです」
駄目になってくれてもいいのにな、と思いつつも、そんなことは口にしない。
「タカくんは駄目人間製造機かもしれません」
「それはないだろ」
ただ、実際には駄目人間製造機なのかもしれない、と思ってしまった。
麻里佳を姉としての呪縛で駄目にしてしまったからだ。
何も食べれないほどのショックがなければ、麻里佳はあそこまで酷くならなかったかもしれない。
「なら私専用の駄目人間製造機、ですね」
頬を赤くしている姫乃は、間違いなくアタックしにきているだろう。
専用の駄目人間製造機なんて意味不明だが、特別感を持たせたいらしい。
「私しか駄目にしちゃ、ダメですよ」
こちらが駄目になってしまいそうなほどの甘い囁きだった。
「うん」
普通に頷くも、内心ドキドキしっぱなしだ。
美少女にあんなにも甘い囁きをされて何も感じない男はいないだろう。
いるとすればゲイのみだと断言出来る。
「そして私が唯一心を許してるタカくんの側に限り、私は駄目になります」
あくまで母親を除くとだろう。
胸に頬ずりしてきた姫乃は、隆史の前では駄目になりたいらしい。
駄目になってもいいもだが、こちらまで駄目になってしまいそうだ。
それほどまでに姫乃の甘い囁きは破壊力抜群なのだから。
「もし、タカくんが寂しくなったら駄目になってもいいのですよ? 私が慰めて差し上げますから」
朝から姫乃は凄い飛ばしているらしい。
これまでの彼女からは考えられないくらいに積極的なのは、完全にひなたが関係しているのだろう。
いくら恥ずかしかろうとも、好きな人を取られるくらいなら積極的にアピールしたいようだ。
(本当にヤバい)
日に日に、いや、秒単位でさらに好きになっていくのを感じる。
この感覚は麻里佳を好きな時にはなかった。
もう姫乃と一緒にいるために産まれてきたんじゃないかと思うほどだ。
(永遠に離れたくない)
姫乃と一緒じゃないと嫌なほどに、こちらも駄目にされてしまったらしい。
「駄目になるといっても自堕落な生活をするわけではないですよ」
「そうだね」
真面目な性格の姫乃が自堕落な生活を望むなんて有り得ないだろう。
「でも、タカくんが自堕落になったとしても、私はちゃんと側にいてあげますからね」
駄目になる未来しか見えなかった。
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