白雪姫と誕生日デート カフェでカップル専用ドリンクを飲む
「お待たせいたしました。こちらカップル専用ドリンクになっております」
指輪を買ってからウインドウショッピングを楽しんだ後は休憩がてらカフェに入り、注文した飲み物を女子大生らしき店員が持ってきた。
「お客様のように熱々ではありませんが、甘々なお飲み物になっております」
ごゆっくりどうぞ、と店員はその場から離れた。
手を繋ぎながらカフェに入ったら店員が勧めてきたから頼んだ飲み物だ。
ペアリングを付けているのを見てお勧めしてきたのだろう。
大きめのグラスに入っているのはメロンソーダで、一つのストローは飲み口が二つに分かれており、何故かさくらんぼが乗っていた。
一つのストローで二人して飲むのだろう。
このカフェは若い男女に有名で、カップル専用ドリンクがある。
カフェについては友達が多い美希が教えてきたから入ったのだが、勧めてきた意味が分かった。
もっと姫乃のことを好きになって麻里佳の弟を止めてほしいのだろう。
隆史の告白を断っても麻里佳は姉であり続けるし、さっさと姉離れしてほしい、という勧めてきた理由に込められていそうだ。
どちらかというと麻里佳が弟離れするべきなのだが。
ただ、このカフェに入ったのはもう一つ理由がある。
カップル専用ドリンクは店員が勧めてきたものの、元から頼むつもりでいた。
今日が姫乃の誕生日だということは知らなかったが、駅前に遊びに来たら行く気でいたからだ。
こういったカップル専用ドリンクを飲むことにより、少しでも意識してほしいから頼んだ。
周りから恋人同士だと思われているものの、今の正確な関係はあくまで慰め合うために一緒にいるだけ。
少しでも意識してもらって惚れてくれたら嬉しい。
「その、飲みましょうか」
「う、うん」
頬が赤くなっている姫乃の言葉に頷くが、実際目の前にカップル専用ドリンクがあると恥ずかしくなる。
一つのグラスに入っているドリンクを飲むなんて初めてだからだ。
でも、飲まないわけにはいかず、二人揃ってストローに口を付けて飲んでいく。
実際には間接キスではないものの、間接キスしているかのような気分になる。
それは姫乃も同じらしく、髪の隙間から見える耳まで真っ赤になっていた。
「美味しい、ですね」
「う、うん」
頷きはするが、恥ずかしくてそこまで味が分からない。
好きな人と同じドリンクを一つのストローで飲むと、こんなにも恥ずかしくなるのか? と思うと同時に、幸せな気持ちになる。
(ずっとこうしていたい)
チューチュー、とメロンソーダを飲みながらそんなことを考えた隆史は、同じく恥ずかしそうに飲んでいる姫乃を見た。
本当に幸せであり、ずっと一緒に飲んでいるのは無理だと分かっているが、このまま幸せを感じでいたい。
姫乃もそう思っていたら嬉しいものの、流石にずっと一緒に飲み続けたいわけではないだろう。
「あの……あんまり見られると、恥ずかしいです」
見られていることに気付いたのか、姫乃は恥ずかしそうにストローから口を離した。
ストローがほんのりと赤くなっているのは口紅なのだろう。
スッピンでも物凄く可愛いが、薄化粧をしている姫乃はこの世の誰よりも可愛いし美しい。
実際にカップルで来ているのに姫乃に見られている彼氏もおり、彼女に頬をつねられたりしている。
「ご、ごめん」
可愛すぎて見惚れていた、と言うわけにもいかず、隆史は謝るだけしか出来なかった。
「いえ、タカくんに見られるのは嫌じゃないです。ただ恥ずかしいだけで……」
ジロジロ、と見られるのは確かによろしくないが、どうしても好きな人である姫乃のことは見てしまう。
少し前だったら恥ずかしさでまともに見れなかったはずなのに、今は見惚れ過ぎて目を離せない。
見られすぎて「あう……」と恥ずかしそうにした姫乃は、恥ずかしさから逃れるためは再びストローに口を付けてメロンソーダを飲み始めた。
「ごめんね。ほら」
見るのを止めることなど出来はしないが、少しでも安心させるために姫乃の前に手を差し出す。
一番信頼していると以前言ってくれたし、手を繋げば少しは恥ずかしさが和らぐかもしれない。
「はい」
えへへ、と笑みを浮かべながら手を繋いでくれた。
笑顔がアニメのヒロイン以上に可愛く、最早姫乃より可愛い人などどの次元にも存在しないだろう。
手を繋ぎながら一緒にドリンクを飲んだ。
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