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白雪姫と猫カフェへ

『猫カフェに行きたいです』


 四月も終わりに近づいた日曜日の午前十時過ぎ、姫乃の提案で猫カフェに行くことになった。


 動物は嫌いではないし、好きな人が好きなとこなら楽しんでくれるなら喜んで行く。


 どうやら姫乃は猫が好きらしく、以前から行ってみたかったようだ。


「今日はいつもと雰囲気違うよね」

「猫カフェに行きますから」


 普段の私服はワンピースが多いが、今日は白いブラウスに七分丈のパンツ、くるぶしソックスにパンプスといつもと違う。


 これから猫と戯れるためか長い髪をポニーテール調にしており、普段見えないうなじが少し妖艶だ。


「着いたね」

「はい」


 手を繋ぎながら歩いていると、家を出る前にスマホで調べた店舗が目に入る。


 五階建てのビルの一階に猫カフェがあり、デカデカとした看板が目立つ。


 初めて行く猫カフェに少し緊張しつつも、姫乃と共にお店に入った。


「いらっしゃいませ」


 中に入ると女性店員が笑顔で出迎えてくれた。


 既に数人の客がいるようで、奥で猫と戯れている。


 可愛い猫が多く、これから戯れることが出来ると思うとワクワクが止まらない。


 それは姫乃も同じらしく、青い瞳を輝かせていた。


「当店はワンオーダー制となっており、三十分単位で料金がかかります」

「烏龍茶で」

「私はオレンジジュースでお願いします」


 飲み物を注文した後、手洗いとアルコール消毒を済ませて店員に猫がいる場所に案内された。


 早速猫が姫乃の方に近寄ってきて足にスリスリ、と頬ずりする。


 猫カフェにいる猫は人に慣れているだろうし、こうやって媚びてエサを貰おうとしているのかもしれない。


 このお店はおやつを購入して猫にあげることが出来るようだ。


「か、可愛いです」


 今までにないほどに目を輝かしている姫乃は猫に心を掴まれたらしく、早速店員を呼んでおやつを頼んでいた。


 これこそ猫の思うツボなのだろうが、本人が楽しんでいるならいいのだろう。


「おやつですよ」


 店員からおやつを受け取った姫乃は、手のひらにおやつを乗せて猫の口元に持っていく。


 にゃあ、と可愛らしく鳴いた猫は早速おやつを食べ始める。


「わっ……猫が沢山。凄いです」


 おやつを貰いに姫乃の周りには猫が沢山集まってきた。


 きちんとエサを貰えているのだろうが、やはりおやつは欲しいのだろう。


「俺も頼もう」


 おやつを食べている猫が可愛く、隆史も頼むことにした。


 一番安いおやつだが、これでも問題ないだろう。


「俺には来ない……」


 おやつをもっているのにも関わらず、隆史の元に猫はやってこない。


 そういえば野良猫も寄ってこないな、と思った隆史は、動物に好かれない体質だったことを思い出す。


 野良猫だから人を怖がってやってこないだけかと考えていたが、どうやら人に慣れている猫でも無理なようだ。


 自分の匂いを嗅いでも変な匂いはしないが、もしかしたら猫にとってあまりよろしくない匂いがしているのかもしれない。


 いや、手を繋いで来たのだし、猫が沢山集まっている姫乃にも隆史の匂いはついているから関係ないだろう。


「店員さん、どうやったら猫寄ってきますか?」

「あまり猫の目を見ないのがコツですよ」


 涙目で助けを求めると、店員が苦笑いで答えてくれた。


 あの反応を見る限りでは、おやつを持っていて猫が寄ってこないのは珍しい。


 食欲は猫にもある欲求なのだし、普通は寄ってくるのだろう。


 猫やライオンなどの肉食動物はあまりお腹が空いてなくても目の前にエサがあれば食べようとするらしい。


 野生ではいつご飯にありつけるか分からないから、本能がそうさせるようだ。


 以前に動画で見たのだが、動物園の職員がハイエナに骨を見せると凄い食いつきだった。


 エサをほとんど与えていないからではなく、本能がそうさせると説明していた。


 猫も一応は肉食動物なのだし、目の前にあったら普通は来るはずだ。


 完全に人に飼いならされた猫はその限りではないかもしれないが。


「来ないよぉ……」


 店員のアドバイス通りに目を見ないようにしても、猫が隆史の元に寄ってくることはない。


 しかもおやつを与え終えた姫乃の元に集まっていく始末だ。


「姫乃、あげる」


 おやつを持っていても意味がないと察したため、隆史は姫乃におやつをあげて店員が持ってきた烏龍茶を指でのの字を書きながら飲む。


「どうせ俺は猫に好かれませんよ……」 


 おやつを姫乃にあげに行った途端、彼女の周りにいた猫たちがさあー、と散って行ったのだし、そう呟かずにはいられない。


「あ、あははは……」


 むくれてしまった隆史を見て、姫乃は苦笑いしか出来ないようだった。


「せめて、モフモフしたかった……ツーン……」


 再び姫乃の元に寄ってきた猫たちはおやつを美味しそうに食べていた。

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