白雪姫がメイド服を着てご奉仕と新たな気持ち
「あの……お待たせ、しました」
メイド喫茶から帰ってきてすぐさまメイド服を注文した隆史は、数日たって届いたメイド服を恥ずかしい気持ちを我慢して姫乃に着るように頼んだ。
そしたら頬を真っ赤にしながらも了承してくれ、他の部屋で着替えた姫乃が隆史の部屋に入ってきた。
メイド喫茶でメイドさんが着るような服だからか露出度が高く、姫乃は素肌が露出されている胸元と丈の短いスカートを抑えている。
着てみたいと思っていたとしても、実際に着ると恥ずかしいのだろう。
黒を基調にして白いフリルのついたメイド服はとても可愛いが、普段から露出度が高い服を着なそうな姫乃は、髪の隙間から見える耳まで真っ赤にさせている。
スカートの丈をしっかりと抑えているのは、メイド喫茶のメイドさんと違って中に見えてもいいようなものをはいていないからだろう。
制服のスカートよりも丈が短いし、ここまで短いスカートをはいたのは初めてなのかもしれない。
「どう、ですか?」
青い瞳がこちらを向く。
「その……めちゃめちゃ、似合っている」
メイド喫茶にいるメイドさんよりレベルが高い姫乃を、隆史は恥ずかしくて直視することが出来ない。
自分から着てほしいと言ったが、銀髪美少女が着ると何故か妖艶だ。
妖艶に感じる理由は、普段隠れている太ももが見えているからなのかもしれない。
白のニーハイソックスをはいているから全部見えている訳ではないが、スカートとソックスの間に出来る絶対領域が妙にエロさを醸し出している。
「ありがとう、ございます」
恥ずかしそうな声が聞こえた。
「こういった服は、タカくんと二人きりの時じゃないと、着ないです」
今度は甘い声が聞こえ、隆史の心臓の鼓動はさらに早くなる。
不整脈じゃないかと疑いたくなるレベルで。
「メイド服を着たので、今日はタカくんにご、ご奉仕をして、さしあげます」
胸に矢が刺さったかのような衝撃を受けた。
ご奉仕というのはメイド喫茶でメイドさんがしてくれたようなことをしてくれるのだろう。
メイド喫茶のメイドさんは仕事だからやっているが、姫乃は仕事ではない。
恐らくは家で真っ赤になりながらメイド喫茶についてネットで調べたのだろう。
「いや、ご、ご奉仕って……」
萌え萌えキュン、ですら物凄く恥ずかしそうにしていたし、メイド服をきた姫乃がご奉仕出来るか疑問だ。
「その……タカくんには特別ご奉仕で、膝枕をしてあげ、ます」
恥ずかしくて直視出来ない隆史に近づいてきた姫乃からの甘い囁き。
実際に姫乃はメイドさんではないため、他の人にはどんなご奉仕もしないだろう。
自分だけにご奉仕してくれる、と思ったら嬉しくなるが、他の気持ちが出てきてしまった。
――ここ最近一緒にいる時間が多すぎて姫乃を気になっているんじゃないか?
もう失恋してから一週間以上たっているものの、流石にもう好きな人が出来るのは早すぎるだろう。
恐らくまだ麻里佳を好きな気持ちはあるが、今は姫乃に傾いてしまっている。
麻里佳が相変わらずベタベタしてくるので、辛い気持ちになった時に未だに姫乃の胸で慰めてもらう。
でも、未だに慰めてもらっている隆史と違い、姫乃に対する虐めは無くなった。
虐められなくなった途端に一緒にいなくなったら意味がないため、しばらくは一緒にいてくれるだろう。
ただ、あくまで共存関係なので、虐めが完全になくなれば姫乃が隆史と一緒にいる理由が無くなる。
そうなれば今の関係が終わりになってしまうので、もし、好きになってもフラれて終わるだけだ。
学校一の美少女で白雪姫と呼ばれるほどに人気がある姫乃が、どこにでもいるような普通の隆史を好きになるわけがないのだから。
慰め合ってイチャイチャしているとはいえ、やはり好きになってくれるとは思えなかった。
「どうしました? 悲しそうな顔をしていますけど?」
心配そうにこちらを見つめる青い瞳が目に入る。
無意識の内に悲しい顔をしてしまったようだ。
「大丈夫」
せっかくメイド服を着てくれた姫乃を不安にさせてはいけないため、隆史はパシーン、と自分の手で頬を強く叩く。
ジンジンして痛みはあるものの、これで余計なことを考えなくて済む。
「な、何してるんですか?」
心配そうにしている姫乃の手が隆史の頬に優しく触れた。
それだけで心臓が高鳴るのを感じ、さらに鼓動が早くなるし身体も熱い。
「大丈夫だから」
「何で叩いたのは分かりませんが、タカくんがそう言うのであれば」
そっと頬から手を離した姫乃はベッドに腰掛け、自分の太ももをポンポン、と軽く叩く。
「ど、どうぞ」
「う、うん……」
頷いた隆史は恥ずかしくなりながらも、同じく頬が赤い姫乃の太ももに頭を乗せる。
以前にしてもらったときはタイツで生足が覆われていたが、今回はニーハイソックスといえど太ももが直接触れている状態だ。
恥ずかしくないわけがない。
「タカくんは、太もも好き、ですか?」
「好き、だね」
恥ずかしそうな声が聞こえたため、隆史は姫乃を見られないながら正直に答える。
たまに麻里佳の太ももも見てしまうし、好きだと言っても過言ではないだろう。
脚フェチとは違うと思うが。
「なら、その……太ももに、キスしても、いいですよ?」
「……え?」
予想外の言葉に聞き返してしまう。
若干小声だったとしても聞き間違いではなく、間違いなく姫乃は太ももにキスしてもいいと言った。
「タカくんは先ほど悲しそうな顔をしていました。私の太ももに、キスをして少しでも慰められるのであれば……」
温かな手で頭を撫でられる。
悲しい顔をしていたのは姫乃のことを考えていたからだが、今はそのことを言わない方がいいだろう。
言うだけでも恥ずかしいし、もし言えたとしても、「失恋して一週間くらいしかたってないのにもう好きな人が出来たんですか?」と軽蔑される可能性がある。
姫乃のことを気になっているため、嫌われることだけは何としても避けなければならないことだ。
「本当にいいの?」
「はい。でも、恥ずかしいので、あまり頻繁は困りますけど」
声からは嫌そうには感じない。
「わ、分かった」
頷いた隆史は身体ごと回転させると、白くて綺麗な太ももが目に入る。
近くで見ても少しのシミすら見えないのは、きちんと手入れしているからだろう。
「じゃあ、いくよ」
「はい。お手柔らかにお願い、します」
ゆっくりと太ももに顔を近づけていき、隆史は姫乃の太ももにキスをした。
「あ……」
脳に響くような甘い声と柔らかな感触、そして甘い匂いは、本当に理性がゴリゴリ削られていく。
「その、キスマークを付けても、構いませんよ」
軽く触れただけで理性がヤバいのに、キスマークが付くほど強く吸い付いたら恥ずかしくて気絶してしまいそうだ。
でも、声からして本当に付けられても問題ないみたいだし、今の隆史は少しながらも姫乃を独占したい気持ちがある。
「ひゃ……」
だから姫乃の口から甘い声が漏れるくらいに強く吸い付いてしまった。
なるべく長い時間キスマークが残るように強く吸い付く。
これは一種の独占欲であり、絶対に姫乃を他の人に渡したくないという気持ち。
「キスマークが付いた」
唇を太ももから離すと、しっかりと赤くなっている。
白い肌だから赤くなっていると目立つ。
このまま一緒にいたら、近いうちに姫乃を好きになってしまう、と考えながら再び膝枕を堪能した。




