白雪姫との昼休みはイチャイチャしながら
「ごめんなさい。目立ってしまって」
昼休み、教室で一緒にいるとどうしても目立ってしまうため、隆史と姫乃は二人きりになれる屋上に繋がるドアの前にいる。
これからご飯を食べようというのに悲しそうな顔をしている姫乃、本当に申し訳なく思っているのだろう。
だけど目立たないと意味がないことをしているため、目立ったのは成功と言える。
ただ、目立ち過ぎてお昼をゆっくりと食べれなそうだったので、昼休みは二人きりになれる場所まで来た。
「大丈夫だよ。ご飯食べよう」
「はい」
スカートのポケットから桃色のハンカチを取り出した姫乃は、ハンカチをひいてから座る。
いかにも女の子らしい、と思った隆史も姫乃の隣に座り、鞄から一つのお弁当箱を取り出す彼女を見た。
ロシアの血が混ざっているからか髪だけでなくまつ毛も白く、肌も透き通っていて綺麗だ。
異国情緒溢れる容姿ではあるもののきちんと日本人の血があるから少し童顔で、まるで二次元から飛び出してきたんじゃないかと思わせる容姿をしている。
「どうしました?」
お弁当箱の包みを解いた姫乃は、頬を少し赤くして不思議そうな顔で首を傾げた。
「いや、何でもないよ」
あまりにも美しいから見惚れていた、と言えるわけもなく、隆史は恥ずかしくなって頬をかきながらそっぽを向く。
「そうですか。では食べましょう」
「分かっ……何で?」
お弁当箱の蓋を開けた姫乃は何故か隆史の肩に頭を乗せてきた。
まるで彼女が彼氏に甘えてくるかのようで、そんなことをされては隆史の心臓に悪い。
それに今は何故か姫乃のことを意識してしまっているため、緊張や恥ずかしさとは別の意味で心臓が激しく鼓動している。
「その、誰かが来る可能性がありますので……」
この辺りは人通りが少ないとはいえ、確かに誰も来ない保証はない。
教室では一緒にいてイチャイチャしていたのに、二人きりになるとイチャイチャしないのは変に思われるだろうし、くっつきながら食べたいようだ。
「くっつきながらじゃ食べにくくない?」
「私がまたあーんってして食べさせてあげますので、タカくんは私の肩を、抱いてください」
イチャイチャしながら食べるのは恥ずかしいようで、自分で言っておきながら姫乃の頬は赤い。
もちろん隆史も恥ずかしく、まるで運動後のように身体が凄く熱くなっている。
「わ、分かった」
誰も来ない保証はないし、隆史は恥ずかしがらも姫乃の肩に手を置いて自身へと引き寄せた。
華奢な体躯なのに柔らかな感触と女性特有の甘い匂いが脳を直接刺激し、これからご飯だというのに理性がゴリゴリ、と削られていく。
心臓がバクバク、と激しく動いているのは姫乃にも伝わっているだろう。
こちらにも激しい姫乃の心臓の鼓動が伝わってくるのだから。
「その、あーん」
箸で卵焼きを摘んだ姫乃は、隆史の口元へと持ってくる。
お弁当に使う卵焼きだからきちんと火が通っているものの、凄いプルプルとした食感をしていそうだ。
「あむ……」
凄い密着しながらのあーんだから恥ずかしいが、隆史は我慢しつつ卵焼きを食べる。
ふんわりとしてとても美味しく、何個でも食べられそうな味だ。
ただ、塩で味付けされてしょっぱいはずなのに、何故かこの卵焼きは甘く感じた。
イチャイチャしながらあーんとされた影響で、脳が勝手に甘さを感じたのかもしれない。
「その、美味しい」
恥ずかしさでまともに姫乃の顔を見られないながらも、隆史はきちんと感想を伝える。
せっかく作ってきてくれたのだし、感想を言うのが筋だろう。
「ありがとう、ございます」
えへへ、と笑みをこぼした姫乃は、本当に嬉しそうだった。
自分の作った料理を美味しいと言われれば嬉しくもなるだろう。
ただ、声から恥ずかしさを感じた。
ここまで密着してあーんは初めてだろうし、恥ずかしくてもおかしくないだろう。
「次はこれです。あーん」
今朝のご飯にもあったタコさんウインナーだ。
朝と同じで本当に美味しく、むしろ男性向けに味を濃くしているのかもしれない。
味付けなどを男性の好みにしてくれたのだろう。
交際経験などはないと言っていたし、ネットなどで情報を集めて研究をしたのかもしれない。
思春期男子である隆史はガツン、と濃い味付けが好きで、そういったものを好んで食べる。
ただ、味が濃いのは栄養面を考えて麻里佳に調整されたりしたが。
気になる男子の胃袋を掴んでしまおう、みたいなことを感じつつも、実際は違うよね、とも思ってしまった。
あくまで慰め合うだけの共存関係であり、姫乃に恋愛感情はないだろう。
慰めてもらっているからお礼としてご飯を作ってくれるだけのはずだから。
「あーん」
再びあーんとされて食べた隆史は、姫乃とイチャイチャ出来て嬉しいと思う反面、共存関係でいることに少しだけ胸の奥に痛みが走った。
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