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熱いので一緒にアイスを食べる

明日から1日1話更新とさせていただきます。

仕事が本格的に忙しくなってこのまま1日3話投稿だと来月にはストックが切れてしまいますので……

1日1話投稿だと充分にストックがありますのでご安心ください。

なお、更新時間は12時過ぎになります。

「身体が熱い……」


 姫乃の寝室で座りながら、隆史はそんなことを呟く。


 つい三十分前にお風呂に入った影響があるかもしれないが、一番の原因は同じ部屋で一緒に姫乃と泊まるからだろう。


 先ほどから身体に熱が籠もるも、流石に家主の許可なく勝手にエアコンを使うわけにはいかない。


 恐らくは省エネだろう、電気代がかかってしまうのだから。


「タカ、くん……」


 バタン、とドアを開けて部屋に入ってきた姫乃にいきなり抱きしめられた。


 丈の長い白のネグリジェにはワンポイントとして胸元に黒いリボンがついており、お風呂上がりだからか彼女の身体が少し紅潮している。


 ただ、何でいきなり抱きついてきたのか分からなかった。


「ごめんなさい。お風呂は少し怖くて……」


 青い瞳には大粒の涙が貯まっており、今にも溢れ出しそうだ。


 そうか、と頷いた隆史は、何で彼女が泣きそうなのか分かった。


 お風呂で一人、さらには水をかけられたことによる恐怖からだろう。


 お風呂には水があるし、湯船に浸かっていると何かと過去のことを思い出したりするものだ。


 お風呂に入っている時に水をかけられたことを思い出してしまったのだろう。


 それでも三十分も入れたのは、きちんと臭いを取りたかったからなのかもしれない。


 今日はお互いに身体が熱くなったのだし、汗とか気になったのだろう。


 隆史自身も臭いを気にして、いつもより念入りに身体を洗ったのだから。


「よしよし。大丈夫だよ」


 辛い思いをしている姫乃を慰めるのは隆史の役目であり、しっかりと彼女を受け止める。


 少しでも落ち着いてもらおうと頭を撫でると、「ん……」と姫乃は甘い声を出す。


 本当に頭を撫でられるのが好きらしい。


「ありがとう、ございます」


 慰められて安心したのか、青い瞳からは涙がなくなっていた。


 ただ、頬は紅潮しており、お風呂上がりで普段の姫乃より身体が熱い。


「熱い」

「そう、ですね」


 お風呂上がりで抱きついたら熱くもなるだろう。


「その……アイスがあるので、一緒に食べますか?」

「食べる」


 上目遣いで青い瞳をこちらに向けている姫乃からの提案に、隆史はすぐさま了承した。


 身体の中が熱くなっている気がするし、アイスで中から冷やすのもいいだろう。


 食べ過ぎてお腹を壊すのだけは気を付けないといけないが。


「じゃあ取ってきますね」


 嬉しそうに笑みを浮かべて離れた姫乃は、小走りで部屋から出ていった。


☆ ☆ ☆


「すいません。一つしかなかったです」


 戻ってきた姫乃が持ってきたアイスは一つだけで、どうやら冷蔵庫には他になかったらしい。


「なら一つのアイスを分け合うか姫乃一人で食べるかだね」


 このアイスを買ったのは姫乃のはずだし、本来であれば彼女が一人で食べるべきだろう。


 でも、隆史もアイスを食べたい欲求があり、分け合う提案をしてしまった。


「じゃあ、分け合うで……」


 一つのアイスを一緒に食べるのが恥ずかしいのか、頬を赤くしながらも姫乃は頷く。


(マジで?)


 提案した手前聞き返すわけにはいかず、隆史は心の中でそう思う。


 カップタイプのバニラアイスだからスプーンがニつあれば足りるが、それでも恥ずかしい気持ちは変わりない。


 慣れている人以外は恥ずかしいだろう。


「その……タカくんに全部あげようと思っていたので、スプーンは一つしかありません」


 確かに姫乃の手にはスプーンが一つしかない。


「だから、あーんってして、食べさせて、あげます」


 耳元で聞こえる甘い声はさらに隆史の身体を熱くなる。


 不意打ちが一番心臓に悪く、心臓の鼓動が自然と早くなってしまう。


「スプーンをもう一つ持ってくればいいのでは?」


 カラオケと違ってスプーンをすぐ持ってくることが出来る。


「今日はもう……離れたくないです」


 アイスとスプーンを持っていない左手でギュっと隆史の手を握ってきた姫乃は、本当に悲しそうだった。


 一人じゃ寂しいから離れたくないのだろう。


「一緒に行けばいいじゃん」

「ダメ、です。今日も沢山慰めてもらいましたし、お礼がしたいです」


 あーんってされるのは好きですよね? と聞いてきたため、隆史はコクリ、と頷く。


 どんなに恥ずかしい気持ちがあろうとも、美少女にあーんってして食べさせてもらうのは好きだ。


 むしろ嫌いな人などいないだろう。


 えへへ、と笑みを浮かべた姫乃は、カップの蓋を開けた。


 真っ白なバニラアイスはすぐにスプーンによってすくわれる。


「あ、あーん……」

「あーん」


 身体がさらに熱くなっているのを感じながらも、隆史は目の前にあるアイスを食べた。


 冷たいアイスは口の中ですぐに溶け、熱くなった身体には心地良い。


「その……私も食べますね」


 自分でアイスをすくった姫乃は、自分の口に運ぶ。


 カラオケと同じように間接キスになり、せっかくアイスで少し冷えた身体は再び熱くなる。


「あーん」


 再びあーんってして食べさせてもらった隆史は、アイスによって冷えたり、恥ずかしさで身体が熱くなっての繰り返しだった。

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