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白雪姫の甘さに溺れそうになる

「あの……お待たせ、しました」


 ショッピングが終わった後に彼女の家に案内された隆史の目の前には、先ほど自分が選んだ服を着ている姫乃がいる。


 上下で違う色のガーリー系のワンピースも思っていた通り似合ってるものの、肩や鎖骨、太もも部分の素肌が見えているから想像以上に刺激が強い。


 たまにコンビニで読む漫画雑誌でグラビアの水着の女の子の方が確実に露出度は高いが、普段隠れている姫乃の素肌を見た方が圧倒的に心臓に悪かった。


「似合い、ませんか?」


 とても不安そうな声で、刺激が強い今の姫乃を見られない隆史の方には悲しそうに青い瞳が向いているだろう。


「似合ってるからこそ見れない。タイツくらいははくかと思ってた」


 普段はタイツや丈の長いワンピースなどで太ももは覆われているのに、今日はしっかりと見えているからこそ見られないだけだ。


 幼馴染みである麻里佳が夏にショーパンとか着て太ももは見ているはずなのに、何故か姫乃の太ももを直視するのは無理だった。


 せめてタイツくらいははいて欲しい、と思うものの、恐らく今日ははかないだろう。


 直視しなければ問題ないかもしれないが、着てもらうとしてももう少し慣れてからの方が良かったのかもしれない。


「その、ありがとう、ございます」


 照れてる隆史を見て急に自分も恥ずかしくなったようで、姫乃の口から「あう……」という声が漏れた。


 恥ずかしいのであれば着なければいいのだが、せっかく選んでもらったから着たかったのだろう。


「恥ずかしいですけど、身体が熱くなってますけど……タカくんに見せれて、良かったです」

「あがががが……」


 不意打ちに耳元で聞こえた甘い声に、隆史は思わず奇声を上げてしまった。


 ただでさえ慣れていないのに、突然甘い囁きを耳元でされたら誰だって驚くだろう。


「驚いたような顔をしてどうしました?」

「不意打ちは卑怯だ……」


 普段より露出度の高い服で不意打ちの甘い囁きに、隆史は身体全体から火が出そうなくらいに熱くなっている。


 恐らく麻里佳に言われてもここまで恥ずかしい想いはしなかっただろう。


 それくらい姫乃の甘い囁きは破壊力抜群だった。


「不意打ちはタカくんも一緒、です。私が酷いことを言われて悲しんでたところにいきなり抱きしめてきたんですし」

「あれは悪かったと思ってる。俺も傷ついてたから人肌を求めちゃったのかもしれない」


 あの時はいきなり抱きしめるなんて常識外れなことをしたな、と次の日になって凄い恥ずかしくなったのだ。


 慰めた後に抱きしめて寝てしまうという、さらに恥ずかしいこともしたのだが。


「いえ、タカくんがいなかったら、私は不登校になったかもしれません」


 近寄ってきた姫乃は、ギュっと隆史の服の袖を強めに掴む。


 確かにあることないことを複数の女子から言われ、さらには水をかけられるという、本来あってはならないことをされたため、不登校になってもおかしくない。


 でも、初日はたまたま、次の日は何とか探して慰めてくれた隆史によって姫乃は救われたのだろう。


 後、姫乃が虐められた理由の一つに髪や瞳の色が関係しているのかもしれない。


 サラサラな銀髪に宝石のような青い瞳に女子は嫉妬しているのだろう。


 大抵の日本人の髪は黒、瞳の色は茶色だ。


 どんなに髪を染めてもカラーコンタクトを使っても出せないであろう姫乃の髪や瞳の色に、同性からすれば嫌悪の対象になってしまうのだろう。


 それもあくまで一部の女子だけであり、大抵の女子はまるで彼女を美術品でも見るかのように遠目から見ているだけだ。


 ショーケースの向こう側にいるような存在の姫乃とは決して関われないのだろう。


「だから私を慰めてくれたタカくんには、非常に感謝していますよ」

「俺も同じだから。あの時姫乃と出会ってなかったら引きこもりになってたかも」


 フラれたショックが大きく、もし、あの時姫乃と慰め合っていなかったら、何もする気が起きなったはずだ。


 もしかしたら不登校になってたかもしれないし、部屋に引きこもって麻里佳と会うこともなかっただろう。


「俺も感謝してるから。ありがとう」


 姫乃の袖を掴んでいる手をはがした隆史は、出かけてた時と同じように指を絡めるようにして手を繋ぐ。


 恥ずかしいがしっかりと彼女を見て、これ以上ないくらいに姫乃に感謝の想いを伝えた。


「なら良かった、です。私もタカくんの役に立てたのですね」

「うん。しっかりと役に立ったよ」


 感謝の想いを伝えた隆史は、手を繋いでいない左手で姫乃の頭をなでなでと撫でる。


「んん……」


 頬を赤らめて甘い声を出したため、姫乃は頭を撫でられるのが好きなのかもしれない。


 これからお礼にまた頭を撫でるのもいいだろうが、あまり頻繁だと恥ずかしくて死ぬ。


「感謝していますが、多分私には、まだタカくんが必要、です。これからも一緒にいて、くれますか?」


 再び耳元で聞こえる甘い言葉に、身体に稲妻が走ったかのような衝撃を覚えた。


「その、一緒にはいるよ……」


 これから女子たちに特定の男がいると思わせて嫉妬の対象から外させないといけないため、なるべく一緒にいるつもりだ。


 一緒にいるつもりだが、これからもこういった甘い囁きや触れ合いが多くなっていまえば、隆史は精神的に死ぬだろう。


 今までも麻里佳に甘やかされて育ったのに、姫乃にも甘やかされたらダメになる未来しか見えない。


(溺れたらどうしよう)


 ありがとうございます、とお礼を言ってきた姫乃を見ながらそう思った。

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