3人でカラオケ
「何で高野が俺たちのデートに混ざるの?」
夏休みを満喫している隆史と姫乃は、昼過ぎにカラオケまで来た。
箱根デートでお金を結構使ったから最近は節約していたが、お小遣いを貰えたからデートしたものの、何故か香苗と途中で会ってついてきたのだ。
せっかくのデートなのについて来られたため、隆史は不満を口にしてドリンクバーから持ってきたジュースを飲む。
まさか高橋家に向かっているとは思わなかった。
「ちょっと相談があるのよ。今日は式部姉妹があなた達と一緒にいないから丁度良いタイミングだし」
いつも以上に真面目な感じだ。
本当に迷惑そうな表情をしていたため、式部姉妹をどうにかしたいのだろう。
「あの二人の変態っぷりは今に始まったことじゃないからなぁ」
何でああなったのかは分かりきっているものの、少し言った程度では間違いなく変わらない。
その程度で変わるのであれば、既に何とかなっている。
いずれどうにかしなければいけないのは分かっているが、具体的で現実的な案がないから実行出来ないでいるのだ。
「そんな感じはするから分かるわ。せめて私に実害がないくらいにしたいの」
一つ確かなことは二人が香苗と知り合ってからさらに変になったのは事実だ。
その前までは重度のブラコン、美少女好きという変ではあったけど、まだ何とかなっていたが、香苗と知り合ってから二人は暴走気味になっている。
そのおかげで香苗に被害があるというわけだ。
「今は私たちが実害被ってますけどね。せっかくのデートなのに……」
むう……と頬を膨らませて不満を漏らした姫乃の頭を先程から撫でている。
箱根旅行以降一回もデートをしてなかったわけではないが、最近は少なかったのは事実なため、姫乃としては邪魔されたくないのだろう。
「それについては悪いと思っているわ。でも、私にとってはあの二人をどうにかするのは最優先事項だから」
今日は二人に会っていないはずなのに、香苗の口からため息が漏れた。
それほどまでに精神的にダメージを受けてしまっているということだ。
デートに混ざってまでしてお願いしているのだし、あの二人と仲が良い隆史に何としてでもどうにかしてほしいのだろう。
「まあ夏休みは始まったばかりですし、またタカくんがデートに連れてってくれるのならいいですけど」
すりすり、と姫乃は隆史の胸板に頬を擦りつけてきた。
「もちろんデートするよ」
姫乃とデートしないなんてありえない。
彼女を楽しませてこその彼氏なのだから。
「じゃあどうにかする案を考えようか」
その内どうにかしなければならないと考えていたため、香苗が相談してきたこのタイミングがベストだろう。
そうでもしないと、あの二人はいつまでたっても変わらない。
むしろ悪化する可能性だって考えられる。
「二人と仲が良い高橋くんがハッキリと言うべきだとは思うのよね」
早速香苗からの意見だ。
確かにそれが一番効果的かもしれないが、特に思い込みが激しい麻里佳には時間がかかるかもしれない。
真奈に関しては実際に試してみないと何とも言えないだろう。
「麻里佳は言っても駄目ではあったけどね」
実際に幽霊じゃなくてそっくりさんだと麻里佳には言っているが、何故か信じてくれないのだ。
恐らくは呪縛に囚われてしまっているからであり、それを解かないとどうにもならないだろう。
実際にそのせいで隆史の姉でいようとし続けているのだから。
「本当に難しい問題よね……」
再びため息を吐いた香苗は、相談して不満を吐き出すことした出来ないのだろう。
「でも、高野って二人と距離を置いたり嫌なこと言ったりはしないよね」
普通だったら間違いなく二人と距離を置くし、暴言を吐いたりしない。
「まあ美味しいスイーツを食べれるし、出来ることならお互いに傷つかないように問題を解決したいのよね。今後の高橋くんと白雪さんの観察のために……」
後半は何故か小声だったが、香苗の優しさが見えた瞬間だった。




