転校生の悩み
「どうしたものかしらね……」
ビニールプールを楽しんだ? 後、自分の部屋のベッドに横たわった香苗はとある悩みがあった。
その悩みとはもちろん麻里佳と真奈の式部姉妹のことだ。
麻里佳は何故か隆史の姉の幽霊だとずっと勘違いしているし、真奈にいたっては隙あらばくっついてきて色々触ろうとしてくる。
仲良くしてた人が亡くなって瓜二つの人が現れれば驚くだろうが、あの二人は常軌を逸しているとしか思えない。
「高橋くんの方がまともよね。ずっと彼女とイチャイチャしているけれど」
香菜の弟である隆史の方が可愛い彼女がいるから香苗にちょっかいを出してこない。
男子高校生なのだし、彼女がいたらそっちに夢中になるだろう。
少しイチャイチャしすぎな感じはするが。
「式部さんを止められるとしたら高橋くんくらいだと思うけれど、式部さんの思い込みが凄すぎるのよね」
いくら言っても思い込みのせいで幽霊だと信じ込んでしまっている。
ここまで思い込みが激しい人は中々いない。
本当に不思議な人であり、今までこんな人に出会ったことがない。
ケーキやアイスなどを食べさせてくれるあらまだメリットはあるが、それがなかったら既に何としてでも距離を置いていただろう。
さらにヤバい姉がいるのだから。
亡くなってしまった憧れの人に似てるからって理由で過剰なスキンシップをしてくる。
単に仲良くなりたいであれば問題ないのだが、流石にあそこまで触ってくると気が引けるのだ。
同性は恋愛対象にならないのだし、せめて少し触れ合う程度にしてほしい。
「あの姉妹の幼馴染やってる高橋くんは本当凄いわ」
ふと風の噂を聞いただけで確証はないのだが、以前の隆史は麻里佳のことが好きだったとのことだ。
いや、麻里佳は隆史に対しては弟のように見てみるらしく、ただ甘なとこがあるから惚れてしまったのだろう。
見た目は整っているし、男子からしたら可愛い女の子に甘やかされたら好きになってもおかしくない。
「でも、今は白雪さんなのよね……」
今の隆史はまるでお人形、二次元のような美少女と付き合っている。
どんな理由があって麻里佳から姫乃を好きになったのかは分からないが、推測出来ることはある。
以前麻里佳に告白してフラれ、それから姫乃と仲良くなって付き合った。
流石にフラれたら少しの期間は距離を置くだろうし、その間に姫乃と仲良くなったのだろう。
「流石にあの二人が完全に暴走する前に止めてはくれるだろうけど……」
今は何とかなっているが、その内二人、もしくはどちらかがさらにおかしくなる可能性だってある。
そうなる前に隆史に助けを求めるしかない。
「でも、高橋くんの連絡先知らないのよね」
彼女がいる男子に連絡先を聞くのは気が引ける。
だから交換してなかったのだが、流石にこうもあの二人が変に絡んで来ると聞いた方がいいのかもしれない。
ただ、問題は連絡先を聞くなら高橋家に行かなければならないってことだ。
麻里佳に隆史の連絡先を教えてもらうことは出来るが、変に勘違いしそうだから止めておく。
そうなれば家に行くしかないため、そうなれば間違いなくあの二人がいる。
だから絡まれてしまうし、真奈には触られてもしまう。
そんなことを思っていると、スマホから通知音がした。
『明日も香菜さんと遊びたいけど、美希ちゃんと遊ぶ約束しちゃったよ』
そんなメッセージが届き、明日は少なくとも高橋家に麻里佳がいないことが分かる。
『お姉さんはいるのかしら?』
そう返信をすると、すぐに既読がついて返事が来た。
『お姉ちゃんは明日高校の友達と遊びに行くって』
ならば隆史の連絡先を聞いて二人について相談するのは明日しかない。
もしかするとデートでお出かけする可能性はあるものの、行ってみる価値はある。
明日のために香苗は早めに寝ることにした。