変態姉妹は止まらない
「タカくんと結婚出来なかったです」
うう……と人生ゲームの結果で不満そうな姫乃は悲しそうな顔をした。
絶対に結婚したいと息巻いてたのだからしょうがないだろう。
「現実では結婚出来るんだから」
よしよし、と頭を撫でられた姫乃は嬉しそうな顔をした。
あくまで人生ゲームで結婚出来なかっただけであり、将来は絶対結婚するんだから問題ない。
問題があるとすれば彼女の父親についてだが、恐らくあまり関わっていなそうなので大丈夫だろう。
「結局誰も結婚出来なかったね」
こんなに人数がいるのに誰も結婚出来なかった状況に真奈も不満そうだ。
でも、確かに何人もいて人生ゲームで最後まで結婚出来ないのは珍しい。
「このゲームさ、女同士のワンナイトラブは多いけど、結婚のマスが少ないよね」
改めてゲーム盤を見てみると、どこからどう見ても結婚のマスが少なすぎる。
代わりに一日で終わる身体の関係が多く、明らかに子供向けではない。
「そういえばそうだったね。忘れてたわ」
てへへ、と舌を出して可愛こぶる真奈は、自分で作ったゲームなのにすっかりと忘れていたようだ。
一人暮らし始める前に作ってみたいだから忘れていても仕方ないかもしれない。
「真奈姉がぶりっ子とかキャラ合わねぇ。歳考えて」
「失礼な。私だってまだまだ若いんだからね」
「この中では一番歳上だけどね」
むう……と頬を膨らました真奈のキャラではないと言える。
美少女大好きで可愛い子がいたら声をかけまくるという、ある意味ビッチに近い性格をしているのだから。
そんな性格ゆえに、せっかくの容姿なのに男性経験は皆無のようだが。
ただ、このメンバーの中では一番歳上なのは事実だ。
「タカくんは式部さんのお姉さんと、凄く仲が良いんです、ね」
嫉妬したかのように隆史を見つめる姫乃は、心配はしていないようだが、どうしても嫉妬はしてしまうらしい。
女の子がいっぱいいる中で彼氏がいるという環境は、彼女からしたら嫌だろう。
彼女がいる男の家にこうも来るメンバーが変なだけだが。
「まあ、真奈姉には昔世話になったからね」
香奈という大切な姉を失って傷ついていた隆史を癒したのが式部姉妹だ。
あの日の真奈は他に予定があったからいなかったが、もし自分が一緒にいれば最悪のことにはならなかったかも……と思ったかもしれない。
だからあの時の式部姉妹には本当に全力で感謝している。
今ではどちらも変態に成り下がってしまったが。
「そうだぞ。隆史くんはもっと私を敬うといい」
えっへん、と全然ない胸を張る真奈がまともな性格をしていたら尊敬したかもしれない。
「お姉ちゃんが羨ましい。私を呼ぶ時も麻里姉とかお姉ちゃんがいいよぉ」
うう……と本当に真奈を羨ましそうに見る麻里佳の姉になりたいという気持ちは常軌を逸している。
麻里佳自身も香奈に憧れて隆史の姉的存在に前からなりたいと思っていたようだし、さらには目の前でその憧れの存在の人が亡くなるところを見てしまっているのだから、こんな風になってもおかしくはないのかもしれない。
「二人の幼馴染は強敵ですなぁ姫乃さん」
手をマイクを持つような形にして姫乃に向けたつかさの表情がニヤニヤとした笑みを浮かべているから面白がっているのだろう。
「私はタカくんを信じています、から」
信じていても嫉妬はしてしまっているらしく、さらに力を入れてぎゅ、と抱きしめてきた。
嫉妬は理屈ではない。
「さあ、たっくん、私をお姉ちゃんって呼んで沢山甘えて」
「甘えないよ」
何で彼女がいるのに他の人に甘えないといけないの? と思いながらため息を吐く。
だから断られたからってプルプル、と涙を目尻に溜めて両手を広げながら身体を震えさせるの止めてほしい。
姫乃と出会ってなかったら甘えてたかもしれないが。
「香苗ちゃんも私にたっぷりと甘えていいよ」
「甘えません」
再びくっつかれそうになった香苗が速攻で拒否した。
真面目な性格をしていそうな香苗には、出会った初日に馴れ馴れしくされるのが嫌なのだろう。
「私が言うのもなんですが、この空間はカオスですね」
あまり会話に参加してこなかった美希が明らかにドン引きしている。
変態の一角である美希がこうもドン引きしているのだし、カオス以外の何物でもないと言っても過言ではない。
このカオスな空間を作り出しているのは変態過ぎる式部姉妹で間違いないだろう。
「高橋くんたちといると本当飽きないね」
にひひ、と笑っているつかさもカオスを作っている原因の一人だった。




