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みんなで人生ゲーム 5

「俺だけ全然進まない……」


 人生ゲームも中盤に差し掛かった頃、何故か隆史だけ出遅れていた。


 サイコロを振って進むから運の要素が大きく絡むとはいえ、二とか三ばかりだから全然進まないのだ。


 だからみんなと大きく離されているし、所持金も他の人からしたら雀の涙ほど。


「やっぱり現実でSSR級美少女を彼女にしたからゲームでは運ないんだね」


 所持金だけは断トツの真奈からの嫌味だ。


 確かに姫乃というめちゃくちゃ可愛い彼女をゲットしたが、だからってゲームで運がなくなることにはならないだろう。


 そうだとしたら可愛い彼女がいる彼氏はみんなゲームで運が悪いことになる。


 嫌味を言ってきたのは香苗と仲良く出来てないからかもしれない。


「私はまだタカくんとの結婚を諦めてません。だから大丈夫です」


 何が大丈夫なのか意味不明だが、ペットがご主人様に匂いを付けているかのようにスリスリ、と頬擦りしている姫乃は結婚する気満々なようだ。


 あくまでゲームだから負けても問題はない。


「にしてもそろそろ誰か結婚してもいいと思うんだけど、まだ誰も出来てないね」


 面白がっているつかさは、まだ誰も結婚出来ていないことを不思議に思っているようだ。


 人生ゲームなんてそこまでやってきたわけじゃないから分からないが、中盤までいけば結婚してもおかしくないらしい。


「何で私は高橋くんのお姉さんになったのかしらね?」


 もう一人違うことで不思議に思っている人がいるようだ。


 サイコロの目も最悪だったが、両親に捨てられて孤児院行きになった隆史が高野家に拾われて姉弟になってしまった。


「たっくんのお姉ちゃんになりたいのは私なのにぃ……でも、香奈さん相手じゃ敵わないよ」


 うう、と不満そうな声を出した麻里佳は、姉になりたくてもなれないのだろう。


 ゲームくらいではなってもいいが、そのポジションを香苗に奪われてしまった。


 実際はそうなってしまった、というのが正しいだろう。


 隆史の姉になりたいなんて香苗が思っているはずもないのだから。


「てか、人生ゲームで両親に捨てられて孤児院行きとかあり得ないでしょ」


 そもそも他のプレイヤーときょうだいの関係になる人生ゲームなんて聞いたことがない、と思いながらこの人生ゲームを作った張本人の真奈を見る。


 恋人や夫婦の関係なら聞いたことあるが、きょうだいだったり孤児院行きだったりと、明らかにハードモード人生ゲームだ。


「そうなったのは隆史くんだけだけどね」


 お気楽そうにしている真奈は、早く香苗と結婚したいと思っているだろうが、その辺りは性格が関係しているのだろう。


「タカくんは私が幸せにするので大丈夫です」


 何でこんなにも姫乃が自信満々なのか分からないし、必ず結婚出来るわけではない。


 もちろん結婚出来るのに越したことはないが、あくまでもゲームだからそこまでこだわる必要はないだろう。


「姫乃には毎日幸せにしてもらってるよ」

「あ……」


 人前でイチャイチャより先のことは出来ないため、隆史はくっつきながら姫乃の背中を優しく撫でた。


 出会ってからは本当に幸せだし、付き合うようになってからはさらに幸せだ。


 今やほとんどの時間を一緒にいる姫乃を離すなんて考えられないのだから。


「私も毎日が幸せですよ」


 胸板にスリスリ、と頬擦りするのが本当に好きらしい。


「人生ゲーム中なのにイチャイチャとか凄いのね」

「噂では人がいる路上でキスしたらしいよ」


 香苗の言葉につかさが反応した。


 確かにファーストキスが人前という普通だったらあり得ないが、物凄く独占したくなったから仕方ない。


「てか全然進まないじゃないですか。早く麻里佳先輩と結婚したいのに」


 むう、と不満そうに頬を膨らました美希は、ぐだっている人生ゲームを早く進めたいようだ。


 人数が多いというものあるだろうが、確かに以前した時より進みが明らかに遅い気がする。


「思ったんだけど、麻里佳のどこに憧れる要素があるの?」


 隆史の姉になりたい、さらには香苗を香奈の幽霊だと未だに勘違いしている麻里佳に憧れる要素が見当たらない。


「確かに先輩といる時の麻里佳先輩は色々とおかしいですけど、それ以外は凄いんですよ。勉強だって運動だって出来るし、みんなを引っ張ってくれるリーダー的な存在なんです」

「たっくんも美希ちゃんも酷くない?」


 自信満々に隆史の問いに答えたものの、美希の台詞は麻里佳からしたら不満なようだ。


 おかしいとか聞こえたら機嫌は良くないだろう。


「一言で言うと式部姉妹は色々おかしいってことだね」

「たっくん、本当酷いよ」

「そうだそうだ」


 当の姉妹である二人からブーイングが入る。


 この二人を見て変だと思わない人は中々いないだろうし、恐らくは他の人も思っていることだ。


「私にたっくんのお姉ちゃんをさせろー」


 実質、勝手に姉っぽいことをしてるじゃないか、と思いながらも口にはしない。


 今の隆史は姫乃とばっか一緒にいるため、前みたいにお姉ちゃん出来なくて寂しいのだろう。


 人生ゲームでも姉になりたいと思っているようだが。


「己の欲望ばかりの人生ゲーム、さて勝者は誰だ?」

「真奈姉のナレーションとかいらないから」


 終始ぐだぐだな人生ゲームだった。

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