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みんなで人生ゲーム 4

「まだタカくんと結婚出来ませーん」


 みんなで人生ゲームをしていると、姫乃が「うう……」と今にも泣き出しそうな顔をし出した。


 本当にゲームであっても結婚したいようだ。


「まだ三巡目だからね」

「んん……」


 全然序盤なのに結婚出来るわけがないため、隆史は悲しそうにしている姫乃の頭を撫でる。


 いつも思うが、頭を撫でられる度に甘い声を出すから他の人がいる時は身体に悪い。


 付き合う前はともかく、今は女性を抱く喜びを知っているから興奮してしまうのだ。


 二人きりならそのまま抱けばいいのだが、流石に今は何かするわけにはいかない。


「私はたっくんのお姉ちゃんになれないよおぉ」


 もう一人現実とゲームを同じにしたい人がいるようだ。


 いや、こっちは現実では幼馴染であって姉弟というわけではないため、麻里佳の思い通りにはならないだろう。


 ゲームくらいであれば姉弟の関係になってもいいのだが、言うと調子に乗りそうだから口にしないでおく。


「だからまだ三巡目だから」


 先ほど言った言葉を繰り返す。


 三巡目で自分の思い通りになる人生ゲームなどありはしない。


「この面子だと高橋くんがツッコミにまわるよね」


 にひひ、と笑みを浮かべたつかさは明らかに面白がっている。


「いつもボケなのにな……て、なんでやねん」

「ナイスノリツッコミ」


 思わずノリツッコミをしてしまった隆史に対し、つかさは笑みを浮かべて親指を立ててきた。


 ツッコミをしたいわけではないが、この面子相手だとしざるを得ないようだ。


「タカくんは私にしかツッコミませんから」


 ツッコミの意味が違うのは気のせいだろうか? いや、きっと気のせいではないだろう。


 確かに姫乃が思っている通りであればそうなのだが、今はその話をしているわけではない。


「私は一年の時も姫乃ちゃんと同じクラスだったけど、その時はこんなこと言う子ではなかったよね。高橋くんと出会って変わったね」

「はい。タカくんが私の人生に色を付けてくれました」


 つかさの言葉を肯定したから事実なのだろう。


 父親の浮気によって姫乃が生まれて家庭環境がよくなったのだし、隆史と出会って人生が変わったのは間違いなく事実だ。


 人生を変えるほどの相手でなければ、姫乃とは付き合えないのだろう。


「私は香苗ちゃんと結婚したいよ」

「嫌です」


 真奈の願望は香苗に否定された。


「お姉ちゃん、香苗ちゃんじゃなくて香奈さんでしょ」

「だからまだ三……ツッコミが追いつかない」


 あり得ないほどにみんなボケるからツッコミきれないでいる。


 序盤に結婚したいやら姉弟になりたいという顔はだけでも多いのに、さらには現実にもツッコミたくなるようなことを言ってくる人がいるから収集がつかない。


 そもそもツッコミキャラじないため、隆史に全てのボケをツッコミするなんて無理な話だ。


 今までそういった生活をしていなかったのだから。


「まだ私を高橋くんのお姉ちゃんと勘違いしてるのね」


 本当にこの姉妹は……と思っていそうな口ぶりだった。


 確かに式部姉妹は二人とも常軌を逸していると言っても過言ではない。


 姉の方は相変わらずひっつこうとしてくるし、妹は隆史の姉の霊だと勘違いしているため、香苗がため息をついても仕方ないだろう。


 何でずっと霊だと思っているのか不思議だが。


「私は麻里佳先輩と結婚したいです」

「だから本当ツッコミが追いつかないから」


 芸人の漫才でもここまでボケないんじゃないかと思いながら、隆史は美希のボケにツッコミを入れた。


 いや、ボケているつもりはないのだろうが、本当に言わずにいられない。


 そもそもツッコミと言っていいか分からないのだが。


「ボケ大会やってないで人生ゲームの続きやろうよ」


 まだ人生ゲームの序盤だというのにみんながボケまくるから全然進まない。


 ボケがなかったら後二巡くらい進んでいただろう。


「ボケ大会じゃないです。本当に思っていることを言ってるだけなので」


 そうだそうだ、と人生ゲームに結婚を求めている連中から姫乃への援護が入る。


 至極真っ当な意見のはずだが、みんなはボケと思っていないらしい。


「いやあぁ、高橋くんといると退屈しないですみますな」


 この状況を面白がれるのは、つかさへの被害がないからだ。


 にひひ、と笑っているつかさの破壊力に見惚れる男子は多いだろうが、この状況からしたら止めてほしい以外の感想がない。


 言うともっと引っ掻き回してきそうなので口には出さないが。


「そうだね。早く香苗ちゃんと結婚したいしやろうか」


 ようやく人生ゲームが再開した。

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