みんなで人生ゲーム 1
「みんなで人生ゲームをしよー。わーぱちぱちぱちぃ」
昼ご飯を食べ終わって少したった後、唐突に真奈が言い出した。
これだけ人数がいるのだから何か提案するのは良いが、わーぱちぱちぱちぃと言う必要はないだろう。
香奈そっくりな香苗がいるからか、本当に真奈のテンションが高い。
「隆史くんの家にまだ人生ゲームあるよね?」
「どうだったかな……」
捨てた記憶はないが、どこにあるこか分からない、と姫乃とイチャイチャしながら思う。
確かに小さい頃にみんなでやった記憶はあるものの、最近は全くやっていないから置いてある場所が分からないし、もしかしたら捨てたかもしれない。
そもそも高校生になって人生ゲームをする人はそんなにいないだろう。
皆無でないのは分かっているが。
「たっくんの家に人生ゲームまだあるよ」
「何で俺より麻里佳の方が俺の家のこと分かってるの?」
「お姉ちゃんだから」
えっへん、と自信満々に言われても困るものの、結構な頻度で来ているから詳しくなるようだ。
これも何が何でもお姉ちゃんでいたいためなのだろう。
ちょっと待っててね、と言った麻里佳は、人生ゲームを取りに部屋から出ていく。
「私のがタカくんの家について詳しくなりますからね」
変なとこで麻里佳に対抗心を燃やしてきた姫乃は、意気込みを込めてか手をグーにした。
これまで一緒にいる時間が長い麻里佳のが詳しいのは当たり前のことだが、これからは姫乃のが詳しくなるだろう。
将来結婚するのだから。
「可愛いなぁ」
「あ……」
嫉妬してしまったであろう姫乃を胸に埋めさせてから頭を撫でて安心させる。
むう、と頬を膨らまして嫉妬する姫乃は本当に可愛いが、安心させるのが最優先だ。
姫乃はヤンデレ気質なとこがあるため、ずっと一緒にいれると思わせなければならない。
「タカくん、タカくん」
胸板に頬擦りしてくるから本当に可愛く、一生離したくない気持ちに駆られる。
いっぱいイチャイチャ出来て嬉しい気持ちでいっぱいだし、姫乃もそう思っているだろう。
お互いにずっと一緒にいる約束をしたのだから。
「香苗ちゃん、私たちもああしたいわ」
「絶対に嫌です」
人差し指をこちらに向けてくっつこうとした真奈は、一瞬で香苗に拒否された。
憧れの人にそっくりだから仲良くしたいと思うのは分からなくはないが、だからって香苗からしたら迷惑以外の何物でもないだろう。
ただ、帰ろうとしないだけでも大したことだ。
普通の人だったら帰っているかもしれないし、金輪際関わろうとしないだろう。
「人生ゲームでタカくんと結婚……」
「人生ゲームで麻里佳先輩と結婚……」
「人生ゲームで香苗ちゃんと結婚……」
姫乃、美希、真奈の順で心の中がダダ漏れだった。
三人が人生ゲームをやりたい理由が分かるし、つかさは面白そう、香苗はやらない理由がないから拒否しなかったのだろう。
人生ゲームで結婚することになったとしてもゲームなのだから香苗に関しては割り切れるようだ。
でも、あの三人からしたら人生ゲームで結婚出来るだけでも嬉しいのだろう。
そうでもなければ嬉しそうにしない。
美希と真奈に関しては「ぐへへ……」と欲望がダダ漏れだし、姫乃は甘えながら「結婚、結婚……」と言っている。
「やはり高橋くんの周りには変な人ばかりね」
そんなことを深いため息をついて呟いた香苗に同意だが、そこに姫乃を入れないでほしい。
美希と真奈が変態なのはしょうがないものの、姫乃は本当に一途で可愛いのだ。
だから断じて変な人ではない。
「あ、ヨダレ垂れてます」
欲望がダダ漏れになっている真奈の口からヨダレが垂れそうになっており、汚いから嫌と思っていそうな香苗が離れようとしている。
ただ、しっかりと真奈がくっついているから中々離れることが出来ない。
このままでは真奈のヨダレの餌食になってしまうだろう。
「はいはい。ストップ」
流石に見ていられなくなったため、隆史は真奈を香苗から引き離す。
男性にしてはひ弱ではあるが、流石に女性のより力があるから離すことは結構簡単に出来た。
「隆史くん、何するのよ」
「それは高野の台詞だよ。いくら何でもくっつきすぎ」
むう、と頬を膨らませている真奈の気持ちは分からなくはないが、困っている香苗の気持ちを汲んであげるべきだ。
今日初めてあった人にくっつかれていい気はしないだろう。
「高橋くん、本当にありがとう」
物凄く感謝された。
この家に来てからずっと真奈にくっつかれていたのだから、本当に困っていたのだろう。
「持ってきたよ」
リビングに戻ってきた麻里佳の手には人生ゲームがある。
「後、たっくん、白雪さんと仲良くするのはいいけど、部屋の匂い何とかしてね。臭いよ」
どうやら人生ゲームは隆史の部屋にあったらしく、取るために入ったのだろう。
本当に臭かったようで、麻里佳が鼻を指で抑えている。
その匂いが何でするのか分かってはいるようで、少しばかり麻里佳の頬が赤い。
一応部屋を出る時に窓を開けて換気はしているのだが、朝にもしたからまだ匂いが残っているようだ。
「あう……すいません」
匂いを作った張本人の一人である姫乃の顔が真っ赤に染まる。
「まあまあ、人生ゲームしよ」
面倒な話は切り上げて人生ゲームをすることにした。




