白雪姫の友達は楽しむ
「高橋くんっていつハーレム主人公になったの?」
美希が来て少したった後、何故かさらにつかさまで家に訪れた。
リビングに来てからの第一声がそんなことで、隆史の周りにいる女の子を見て言ったのだろう。
男一人に美少女だらけなのだから分からなくはないが、白い目を向けないでほしい。
「俺は姫乃一筋だからハーレムを作る予定はない」
全く失礼な、と思いながらつかさに告げる。
少し前までは麻里佳のことが好きだったが、今は本当に姫乃だけが好きだ。
周りに女の子ばかりで一人に決められないラブコメ主人公とは違うし、これからも姫乃と一緒にいる予定しかない。
「初めて私服見たけど麻里佳っぽいな」
オフショルダーの白いシャツにショーパンという格好は麻里佳の私服と似ている。
学校での雰囲気は活発な女の子、という感じなため、スカートよりはパンツの方が良いのだろう。
学校の外で会うのは初めてだったので、隆史はつかさの私服姿に抱いた率直な感想を述べた。
「その、タカくんはワンピースより、ショートパンツやミニスカートの方がいい、ですか?」
丈の長い水色のワンピースを着ている姫乃は、隆史がつかさを見ているから太ももが見える服が好きなのかもしれない、と思ったのだろう。
若干涙目でこちらを見ている。
「そりゃあ好きだけど、姫乃は俺と二人きりの時しか足が見える服は着ちゃダメだよ」
「あ……はい」
単に独占欲ではあるが、少しでも安心させるために抱きしめながら言う。
そんなことを言われて安心したかのような表情になった姫乃は、嬉しそうにおでこを隆史の胸にさすりつけてきた。
周りにいる女の子を危険人物と思っている節があるし、他の人は手を出さないで、と牽制をかけているのかもしれない。
「俺はずっとずっと姫乃だけだよ」
「はい」
えへへ、と笑みを浮かべた姫乃は、少し独占欲を現すように隆史の首筋に唇を付けて吸い付いてくる。
昨日の夜にもお互いに付けてまだ首にキスマークが残っているのだが、また付けたくなったようだ。
愛する彼女がキスマークを付けたいのだし、周りに人がいようが抵抗しないで頭を撫でる。
「ひゅー、ラブラブー」
「んん、ちゅーーーー」
つかさから野次が入ろうとも姫乃はキスマークを付けるのを止めようとしない。
人前でキスマークを付けるのはしたことないから恥ずかしいだろうが、彼女からしたら彼氏の周りに女の子がいっぱいいるのは嫌な状況だろう。
それでも姫乃はあまり強く言ってこないのは、隆史のことを信用しているのが大きいのかもしれない。
ヤンデレ気質があるから好きな人至上主義というのもあるだろう。
でも、先程隆史がつかさのことを見てしまったため、キスマークを付けたくてしょうがなくなったようだ。
「あむあむ……」
何故か姫乃が甘噛みしている間に、面識ない人同士で自己紹介をしている。
真奈なんかは今日が初対面の人が多いため、自己紹介しないと分からないだろう。
自己紹介しながらも香苗に抱きつこうとしている真奈は流石だが。
「みんなー、料理出来たから運ぶの手伝って」
キッチンで料理を作っていた麻里佳から声がかかった。
「麻里佳先輩の手料理……」
じゅるり、とよだれを垂らした美希は、いの一番にキッチンへと向かっていく。
憧れの先輩の手料理を食べれるのだし、美希からしたら嬉しいことだろう。
前はある程度変態なのを抑えていたが、ここ最近は全面に出してきている。
「あむあむ……」
料理を運びに行きたいのと関わらず、姫乃が甘噛みを止めてくれないから動くことが出来ない。
恐らくは麻里佳の声が聞こえないことはないだろうが、まだ止めたくないようだ。
「こんなに美少女ばっかなんだから、少しは姫乃ちゃんに独占させてあげなよ」
にひひ、と笑みを浮かべてきたつかさに心を読まれた気分になった。
確かにここまで美少女ばかりの空間に彼氏がいたら彼女は少しなりとも独占したくなるだろう。
こちらが独占しているのだし、相手にも独占させてあげなければならない。
もし、姫乃が二人きりになりたいと言えばすぐになる。
「ちなみに私は高橋くんと姫乃ちゃんのイチャイチャを見に遊びに来たけど、それ以上に今日は楽しめそうだね」
再び笑みを浮かべたつかさは、家に来た理由を言ってキッチンへと向かって行った。




