幼馴染みの姉は美少女が好き
制服姿の白雪姫
「麻里佳ちゃーん、可愛い可愛いお姉ちゃんが帰ってきたよ」
姫乃が猫耳コスをした土曜日の夜、ご飯を食べていると騒がしい人が家にやってきた。
幼馴染みである麻里佳の姉の真奈だ。
大学入学と同時に上京したから一人暮らしをしているが、どうやら実家に帰ってきたらしい。
今は大学三年生で講義に余裕が出来たから実家に帰ってきたのだろう。
妹である麻里佳がこの家でご飯を食べているから来たようだ。
「面倒な人が来たな」
隣に座っている姫乃の肩を抱いて自身に引き寄せた隆史は、心底面倒な顔をした。
女性にしては短めのボブに亜麻色のサラサラは髪、キャラメル色の大きな瞳に透き通るような白い肌、スレンダー美少女で隆史とっては年上幼馴染みなのだが、真奈には一つだけ欠点というか面倒なことがある。
「隆史くんの隣にいる美少女は一体何者? 可愛過ぎるんだけど」
隆史の面倒発言をあえてスルーしたであろう真奈は、キョトンとしている姫乃を見て早速欠点を出してきた。
胸は壊滅的といえるほどに小さいものの美少女だからかなりモテるだろうが、真奈は男に一切の興味がなくて美少女が好き。
単に美少女が好きならともかく、見たら見境なくナンパしてしまうほどだ。
美少女が好きだからって男っぽい格好をしているわけではなく、きちんと化粧もしていてフリルのついた水色のブラウスにチェックのミニスカートを着ている。
「お嬢さん、今日は私と一緒に寝ない?」
早速姫乃に近寄ってきてナンパしてきた真奈は、彼女が隆史とくっついていてもどうでもいいらしい。
この光景を見れば姫乃が隆史と付き合っているのは誰だって分かるはずだが、それでもナンパしてしまうほど真奈にとって彼女は美少女なのだろう。
「あの、私はタカくんと付き合っているので……遠慮します」
ギュっと隆史に抱きついてきた姫乃は、どうやら真奈に戸惑っているようだ。
初対面の女性にナンパされれば戸惑うものだろう。
「いやいや、隆史くんがこんな美少女と付き合えるわけがないでしょ。幼馴染みの麻里佳ちゃんにも告れないヘタレなんだから」
手を顔の前に出して左右に降った真奈は、隆史と姫乃が付き合っていると思ってもいないらしい。
確かになかなか告白出来なかったヘタレではあるが、今ではこんな可愛い彼女がいるから失礼だ。
麻里佳から隆史に彼女が出来たと聞いていないらしい。
「この人誰なんですか? タカくんに対して失礼すぎません?」
むう、と少し頬を膨らました姫乃は、隆史の方を向いて尋ねた。
どうやら彼氏である隆史をヘタレと言われて少し怒ったようだ。
「麻里佳の姉の真奈だね。美少女大好きだから姫乃の天敵。通称真奈姉」
「天敵でもないし真奈姉って呼ぶの隆史くんだけだから通称じゃないでしょ」
全く失礼な、と口にした真奈は、再び目を輝かして姫乃を見た。
「姫乃ちゃんって言うんだね。私は麻里佳ちゃんのお姉ちゃんの真奈だよ」
手を握りたそうにウズウズしているのは、相当姫乃を気に入っているからだろう。
銀髪に青い髪と異色情緒溢れているのに童顔であるからまるでアニメの世界から飛び出したような容姿をしている姫乃を好きになるのは分かるが、だからって彼氏がいる女の子をナンパするものではない。
「姫乃は俺の彼女だから近寄らないで」
「本当に隆史くんの彼女なの? お金とか要求されてない?」
「されてないわ」
本当に失礼すぎると呟いた隆史は、さらに姫乃とくっつく面積を多くする。
きっかけはお互いの傷の舐め合いめはあるが、今はきちんと愛し合っているのだ。
「きちんと俺の彼女だから」
「え? だって隆史くんは麻里佳ちゃんを好きだったよね?」
「麻里佳にはフラれたよ」
簡単に麻里佳にフラれたことと姫乃と付き合った経緯を真奈に説明した。
何も聞いていなかったようなのだし、簡単にでも言っといた方がいいだろう。
「麻里佳ちゃんが隆史くんを弟として見てるのは知ってるけど、まさか告白を断るとは思ってなかったよ」
驚いたような表情になった真奈は、黙ってご飯を食べている麻里佳を見た。
「だってたっくんは私の弟だもん」
ようやく口を開いた麻里佳は、機嫌の悪そうな表情になっている。
自分のことは名前で呼ぶのに真奈のことは姉って付けるから嫉妬したのかもしれない。
「麻里佳ちゃんの隆史くんに対する執着心は本当に凄いね」
確かに麻里佳の隆史に対する執着心はありえないほどに強いだろう。
自分のせいで香菜を死なせてしまった呪縛により、隆史から離れることが出来ないでいる。
「たっくんは私のことも麻里姉とかお姉ちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「呼ばないよ」
以前はそう呼んでもいいかと思ったが、恋愛感情が湧いてからは呼びたくなくなった。
姉弟ではなくて異性として見てほしいからだ。
「にしても隆史くんがこんなに可愛い彼女を作るなんてびっくりだよ。可愛過ぎる」
確かに可愛いが、そんなにジロジロと見ては姫乃が恥ずかしがってしまうだろう。
姫乃はかなりの恥ずかしがり屋なのだから。
「でも、隆史くんが姫乃ちゃんと付き合ってくれたから私は知り合えたんだよね。ナイス」
グッチョブ、と親指を立ててこちらに向けてきた真奈は、本気で姫乃と仲良くしたいようだ。
「俺がずっと一緒にいるから真奈姉は姫乃と仲良くなれないよ」
「そんなぁ。独占禁止法違反だ」
「知るか」
彼女を独占して何が悪い? と思いながらご飯を食べた。




