白雪姫の願望
「んん……んちゅ……」
アイスを食べ終わった後に自室に来た瞬間、姫乃にキスをされた。
もしかしたら香苗を見ていたことに嫉妬したからかもしれない。
彼女からしたら彼氏が他の女の子を見てたら嫌だし、背中に腕を回してきたから「私だけを見て」という合図だろう。
何があっても離す気はなさそうだ。
こちらとしても離す気はないため、隆史は姫乃の頭を手で抑えてキスを堪能していく。
しっかりと抑えられてキスをされて嬉しくなったようで、姫乃の表情が蕩け始めた。
何度見ても可愛いし、もっとしたくなる。
「高野さんがお姉さんに似てるから見てしまうのは分かりますけど、見すぎです」
どうやら本当に嫉妬してしまったらしく、姫乃は「むう……」と頬を膨らます。
「ごめんね」
「んん……んちゅ」
キスしながら優しく頭を撫でて姫乃を安心させていく。
もし、嫉妬させたとしても、キスをして自分が一番だと思わせれば姫乃の機嫌は大抵良くなる。
実際に機嫌が直ったらしく、姫乃は「えへへ」と笑みを浮かべた。
こちらとしても実際に一番だと思っているため、そう考えてくれるなら嬉しい限りだ。
「許してあげますけど、今日は一秒たりとも離れません」
「今まで通りだね」
姫乃はぐりぐり、と頭を隆史の胸に軽く押し付けてきた。
毎日のように一緒に過しているので、一秒たりとも離れないのは普段のままだし、一緒にいたいと思っているのは同じだ。
「今日はトイレも、です」
「まさかの?」
寝る時やお風呂ですら一緒ではあるが、流石にトイレも一緒にという言葉に、隆史は驚きを隠せない。
好きな人とならトイレに一緒に行けるとは思っているものの、実際に行くとなると躊躇いはある。
「ふふ、トイレは流石に冗談ですよ」
冗談だと分かって安心したが、恐らく隆史が「それでもいいよ」と言ったら本気でそうなっていただろう。
姫乃が離れるなんて考えられないくらいのヤンデレなのだから。
「今のタカくんは私以外の人に恋愛感情を持ってないと分かりますし」
他に好きな人が出来るとは思わないし、浮気をしたいと考えたことすらない。
「もし、タカくんに他に好きな人が出来てしまった場合、監禁して私だけを見るようにしないといけませんけど」
瞳から光が消えた姫乃からの監禁宣言だった。
ヤンデレは好きな人のためなら何でもしてくれるから凄く良いのだが、扱いを間違えると大変な目に合う。
恋愛感情が拗れて交際相手を殺してしまったというニュースが流れるくらいだし、扱いには気を付けなければならない。
「安心して。そんなことないから」
再び頭を撫でて安心させる。
監禁されたくはないが、姫乃以外の人などもう考えられない。
確かに少し前までは幼馴染みである麻里佳を好きだったものの、もう付き合いたいと思っていないのだ。
「はい。私もタカくん以外の人を好きになりませんから」
確かに姫乃が他の人を好きになることは金輪際ないだろう。
それこそそんなことがあるとすれば、こちらが監禁してしまいそうなほとに。
「タカくんは今後も私のことを大切にしてくれて、将来は結婚してくれるでしょう」
エッチな時は激しいですけど、と何故か頬を赤くして一言加えてきた。
激しくした方が気持ち良いため、エッチな時はついSっぽくなってしまう。
「するね」
まだ結婚出来ない歳だからしてないだけであり、出来る年齢になってたらとっくに役所に行って婚姻届を出している。
確か今年の四月から成人年齢が十八歳以上になったと同時に、男女共に十八歳以上じゃないと結婚出来なくなった。
「結婚はまだ出来ませんけど……その、妊娠は出来ます、から……」
「……は?」
あまりにも衝撃的な一言により、隆史の脳は頬を真っ赤にさせた姫乃の言葉を理解出来なかった。
「最近タカくんとの子供が欲しいって思っちゃいます。だってずっと一緒にいれるから……」
確かに子供がいれば繋がりが切れることはほとんどない。
「いや、だってまだ学生だよ」
以前に姫乃との幸せな家庭を想像したことはあるが、まだ学生だから妊娠させたいと思ったことはなかった。
もちろん将来は結婚して子供を産んでもらうつもりはあるけれど、収入がない今は無理だ。
「分かって、ます。でも、私はタカくんが望めば、いつでも、いいので」
姫乃からの妊娠願望を告白された瞬間だった。




