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転校生を幽霊だと信じ切っている幼馴染み

「え? 何で……香菜さんが?」


 学校での昼休み、ついに麻里佳と香苗が遭遇する事態が訪れた。


 むしろ今まで鉢合わせしなかった方が珍しいかもしれない。


 たった数日とはいえ同じ校舎の同じ階で授業を受けていたのだし、会っても不思議ではないだろう。


 香菜と瓜二つの容姿の香苗を見た麻里佳は相当驚いている様子だ。


「香菜、さん?」


 いきなり言われたからか、香苗はキョトンとしたような顔をしている。


 見知らぬ人に違う名前で呼ばれれば戸惑うだろう。


「何で香菜さんが学校にいるの? え? 幽霊?」


 戸惑っているのは麻里佳ものようだ。


 自分のせいで死なせてしまったと思いこんでいる人と瓜二つの人が目の前に現れたら戸惑うだろう。


「違う。あの人はお姉ちゃんじゃない。似てるけど別人だよ」


 遭遇したタイミングで偶然居合わせたために、隆史は麻里佳に近づいて違うと説明する。


「え? だって香菜さんにしか見えないよ」


 隆史自身も初めて見た時は驚いてしまったし、麻里佳が間違うのも無理はない。


「違うから落ち着いて」

「香菜さんが私の前に……」


 麻里佳を見て落ち着かせようとするも、力が抜けたかのように彼女は隆史にもたれかかってきた。


 どうやら香苗を香菜だと信じきってしまっているらしい。


「なるほど……この子も高橋くんのお姉さんを知っているということね」


 なるほどじゃねい、と言いたいが、今は麻里佳を落ち着かせるのが先だ。


「香菜さん、ごめんなさい。私のせいで香菜さんが……」


 目の前にいる人は香菜じゃないから何を言ってもしょうがないものの、信じ切っている今は落ち着かせるのも難しいかもしれない。


 隆史の静止を無視しているのだから。


「推測するにこの子の不注意で高橋くんのお姉さんが庇って死んでしまった……ということかしら?」


 この状況で冷静に分析出来る香苗の肝は相当座っている、としか言いようがない。


 そもそも分析力が大分高いのだろう。


「香菜さんは何を言っているの? たっくんのことを高橋くんって呼んでるし。もしかして事故で記憶を無くしたまま幽霊に?」


 どうやら香菜が亡くなったというのは認識出来てるみたいだが、幽霊だと思いこんでいるようだ。


「いや、この場合は麻里佳が何を言っているの? だよ。この子はお姉ちゃんじゃない。そっくりさん」

「いやいやいや、近くで見ても香菜さんにしか見えないよ。そっくりさんじゃこんなに似ないでしょ」


 何を言っても信じてくれないのは、やはり呪縛で縛られているからだろう。


 凄く似てるのもあるだろうが。


「記憶喪失でもたっくんが心配過ぎて成仏出来ないんだね」


 もちろん確実ではないが、きっと成仏して天国で見守っているはずだ。


 そうでなければ報われない。


「私が香菜さんの代わりにお姉ちゃんやってるから大丈夫だよ」


 何が大丈夫なのか分からないが、確かにお姉ちゃんをやってはくれている。


 呪縛が根深いため、大丈夫だとは言えない。


「私はどう反応すればいいのかしら?」

「どう反応しても変わらないよ」


 目の前にいる香苗が記憶を無くした香菜の幽霊だと信じ切っているので、今の麻里佳に何を言っても無駄だろう。


「たっくんは今や立派に育って彼女までいるんだよ。しかも凄く可愛い子」


 以前教えたから香苗は隆史に彼女がいるのを知っている。


 どうやったら幽霊じゃなくて香苗だということを信じてもらえるのだろうか? と思うも、こればかりは時間がたたないと無理かもしれない。


「タカくんが式部さんとくっついてます……」


 うう、と寂しそうな声が聞こえたため、姫乃が嫉妬しているのだろう。


 出来ることなら目の前にいる香苗が香菜じゃないと言ってほしいが。


 そもそもまさか麻里佳が香苗を香菜の幽霊だと思うとは完全に予想外だった。


「何だかな……」


 どうすればいいのか分からず、隆史は「はあ……」とため息をつくしか出来なかった。

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