幼馴染みのブラコン度が増す
「たっくぅーーーん」
姫乃とのデートを終えて家に帰った隆史は、玄関で麻里佳に勢い良く抱きしめられた。
もちろん隣には姫乃がおり、嫉妬しかたのように「むう……」と頬を膨らましている。
それでも何も言ってこないのは、隆史と麻里佳の過去を聞いたからだろう。
そうでなければ「離れてください」と言うはずだ。
「たっくんは私を大切にしてくれてる。嬉しいな」
えへへ、と笑みを浮かべた麻里佳は、恐らく美希から隆史が気にかけているのを聞いたのだろう。
香苗のことは話していないはずだが、気にかけてくれているのが嬉しいようだ。
本当なら姫乃の家に言って抱きたいものの、実際に気にかけているから自分の家にした。
「取り敢えずリビングに行こう」
このまま抱きしめられてはよろしくないため、隆史は姫乃と麻里佳と共にリビングに向かった。
「私はいつまでもたっくんのお姉ちゃんでいれるよ」
ソファーに座っても先程から口元が緩んでいる麻里佳は、隆史に抱きつきながらそんなことを口にした。
隆史としては麻里佳が傷つかない形で兄妹を止めたいが、そんな都合の良い方法は今のところ思いつなかい。
もし、思いついていたとしたら既に実行しているだろう。
最愛の彼女が出来たのだから。
「式部さんは本当にタカくんにくっつきすぎですよ」
流石に我慢出来なくなったのか、姫乃が麻里佳から隆史を離そうとする。
周りからしたらハーレムで羨ましい状況なのかもだが、こちらからすれば面倒なだけだ。
姫乃に愛されていればいいと思っているのだから。
出来ることなら麻里佳に好きな人を作ってもらいたい。
どうしても好きな人が出来ない場合は、せめて弟離れさせて普通の幼馴染みだと思わせたい。
それが麻里佳にとって一番良い結果になるはずなのだから。
「私はたっくんのお姉ちゃんだからいいの」
「良くないですよ」
離れようとしない麻里佳に、姫乃は再び引き離そうとする。
一応協力すると約束してくれた姫乃だが、やはりくっつかれるのは嫌らしい。
「そういえばたっくんのクラスに美少女転校生が来たらしいね。何か誰かのお姉ちゃんに凄く似てるとか何とか」
転校生が来たというのを知ってしまったようだが、香苗が香菜に似ているというのは知らないのだろう。
知っていたとしたら今のような態度にはならないはずだ。
ただ、誰かがお姉ちゃんと言ってしまったのは知っているらしい。
でも、誰が言ったかまでは知らないようだ。
「あー……そうだね」
歯切れの悪い返事をしてしまったのは、転校生が香菜と瓜二つだから。
まだ麻里佳に転校生が香菜と瓜二つなのを知らせない方がいいだろう。
「もしかして彼女が出来たのに転校生が気になったのかな?」
うりうり、と指で頬をつついてくる。
気になるのは確かだが、もちろんそれは香菜に似てるからだ。
そうでなければ気にすることなんてない。
「違います」
「何で白雪さんが言うのかな?」
力強く否定した姫乃は、恋愛的な意味で隆史が気になっているわけではないと知っている。
そういった意味での否定だろう。
「タカくんは私一筋だからです」
ギュっと姫乃も抱きついてきた。
左右から柔らかな感触と甘い匂いを感じてよろしくない。
もう女性を抱く良さを知ってしまったからだ。
姫乃と二人きりの時ならいいが、他の人がいたら抱けないからしんどい。
「そっかそっか。私はたっくんのお姉ちゃんでいれればいいけどね。ずっと一緒」
どうやら一緒にいれなくなった寂しさもあってか、麻里佳のブラコンは増してしまったのだろう。
「何でタカくんの周りは可愛い人ばかりなんですか……?」
ボソっと何が呟く姫乃だった。




