白雪姫の下着を選ぶ
「タカくんとデートです」
麻里佳の誕生日の翌日、隆史は「えへへ」と笑みを浮かべている姫乃とデートすることになった。
清楚なワンピースを着ている姫乃は、デートが出来てかなり嬉しいようだ。
しっかりと指を絡めて手を繋ぎ、姫乃を見ている男から彼女を守る。
「ショッピングモールに行くの?」
「はい」
今日の行く場所は姫乃のリクエストで駅前にあるショッピングモールまで来た。
買い物はもちろんのこと、映画館などもある複合施設だ。
とりあえずここに来れば困ることはない。
「買うのは私ですけど、タカくんの好きなのを選んでくださいね」
耳元で甘く囁かれた。
少し身長差があるから姫乃は背伸びをしており、何故かその姿も可愛く思える。
選んで欲しいということは、恐らくは服を買うのだろう。
ただ、頬が赤く染まっているため、露出度が高い服を選ぶのかもと思っているかもしれない。
「好きなのでいいの?」
「はい。彼氏のリクエストに答えるのが彼女なので」
姫乃と共にショッピングモールの中へと入った。
☆ ☆ ☆
「なん……だと……?」
ショッピングモールの中へ入って姫乃に誘導された場所は女性物の下着売り場だった。
もちろん客は女性ばかりであり、男は隆史しかいない。
たまに彼女に連れられて彼氏も来るだろうが、今日はいなかった。
「普段見えなくても、その……エッチの時は見られるので……タカくん好みの下着を……穿きたい、です」
これ以上ないくらいに顔全体を赤くした姫乃は、もっと興奮してほしいと思っているのだろう。
見た目も性格もパーフェクトなのだが、下着に拘りたいのかもしれない。
興奮しないより興奮した方が嬉しいのだろうが、まさか下着を選んでほしいとは思ってもいなかった。
(どうすればいい?)
自問するも解決策など思い浮かぶわけがなく、隆史は呆然としている。
女の子の下着など選んだことがないからだ。
幼い頃は姉である香菜と麻里佳、最近では姫乃の下着を見ているが、彼女に似合う下着を選べる自信がない。
(それに視線が気になる)
女性客ばかりのコーナーに男一人となれば、自然と視線はこちらに集まる。
彼女と一緒だから店員に声をかけられたりはしないが、客からしたら自分が下着を選んでいる時に同じコーナーに男がいたら嫌だろう。
いや、美少女過ぎる姫乃を見ているだけかもしれない。
あからさまに嫌な顔ではないのだから。
銀髪美少女が近くにいれば自然と視線はそちらへ向く。
「見られるのはタカくんだけ、ですし、セクシーなのでもいい、ですよ?」
耳元で誘惑してくるかのような声のため、隆史の心臓は高鳴っている。
女性を抱く喜びを知ってしまったのだし、高鳴ってしまってもおかしくない。
姫乃自身は白や水色、ピンクなどの淡い色々が好きみたいだが、これからは隆史好みの下着を穿きたいのだろう。
絶対に今日も抱くことになるが、姫乃は「あう……」と恥ずかしそうな声を出した。
興奮してほしいが、言っていて恥ずかしくはなるらしい。
「本当に、いいの?」
未だにどの下着を選んでいいのか分からないものの、選んでみたいとは思っている。
「はい。私の幸せはタカくんの欲求を満たせること、です。私の下着姿で喜んでもらえるなら、タカくん好みのを穿きます」
全ては隆史に喜んでもらいたい、の一心なのだろう。
どんなに恥ずかしくても、欲求を満たせるならするのが姫乃らしい。
「迷うね……」
隆史は顎に指を当てて考える。
自分の下着すら適当に選んでいるのに、姫乃の下着となるとどれにすればいいのか分からない。
淡い色が一番似合いそうだが、セクシーなのももちろん似合うだろう。
今の姫乃は清楚さとセクシーの両方を兼ね備えているのだから。
「てか高い……」
値札を見てみると、男性物より女性物の下着の方が何倍も高い。
「女性は下着にも気を遣いますからね」
女性からしたら下着もお洒落の一部に入るのだろう。
見られたくないはずなのに気を遣うというのは、男の隆史からしからよく分からない。
だけど彼女である姫乃が選んでほしいというのであらば、恥ずかしくても選ぶ。
最愛の人が望んでいるのだから。
「じゃあ、これで……」
隆史は気になった下着を指す。
「あう……」
少し予想外だったようで、姫乃の顔がさらに赤く染まった。
選んだのは清楚ながらにセクシーさもあるフリルのついて一部分が透けている紐パンといわれるものだから、恥ずかしくても仕方ないかもしれない。
「買ってきます、ね」
選んでくれた下着を必ず買うと決めていたようで、姫乃は下着を手に取ってレジに向かった。
今日の夜が楽しみだと思ったのは言うまでもない。




