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過去のこと 前半

「タカくん、んん……」


 昼休み、姫乃によって人気のない屋上前の階段に連れてこられた隆史は、彼女にキスをされた。


 恐らくは香苗をジッと見てしまったために嫉妬したのだろう。


 話を聞いていたみたいだから怒ってはいないようだが、嫉妬は理屈では通らない。


 怒りはしなくても嫉妬することはあるだろう。


「ずっと一緒、です」

「もちろんだよ」


 嫉妬してしまっている姫乃の頭を撫で、少しでも落ち着かせる。


 ずっと一緒にいるのなんて決めているし、別れるなんて選択肢はまずない。


 それは姫乃だって同じだろうというのは、今の発言で分かることだ。


「亡くなったタカくんのお姉さんと瓜二つの転校生……何でラブコメみたいな展開が起きるんですか……」


 ボソっと何かを呟いた姫乃にとっては、香苗が転校してきた展開はよろしくないらしい。


 亡くなった姉に似ている、という彼氏に気になる人が転校してくれば、彼女からしたら良い展開ではないだろう。


 ラブコメ、という言葉が聞こえたため、姫乃は少しだけ漫画かラノベを読んだのかもしれない。


 その時と同じ展開になっているのだろう。


「大丈夫。俺は姫乃一筋だから」


 いくら亡くなった姉と瓜二つの人が現れたからといえど、それで姫乃から興味が失くなるわけではない。


 むしろより一層彼女を愛すと誓ったほどだ。


「分かってますよ。私が気にしてるのはそのことではなく、式部さんのことです」

「麻里佳のこと?」

「はい。式部さんがお姉さんぶるのはその亡くなったお姉さんが関係あるのですよね?」


 学年で一番を取っているだけあって鋭いらしい。


「あるよ」


 ここで嘘をついても仕方ないし、隆史はコクリ、と首を縦に振る。


 もう恋人同士でなので、前に起こった出来事を話した方がいいのかもしれない。


「昔の俺はそりゃあ凄いシスコンでした」

「……はい?」


 いきなり話されて訳がわからなくなったのか、姫乃は首を傾げる。


「今から話すのは俺と麻里佳、そして姉である香菜の話ね。姫乃も知った方がいいと思う。麻里佳が何であそこまでお姉ちゃんぶるのかを」


 黙ってゆっくりと首を縦に振ったため、隆史は「ふう……」と深呼吸してから香菜が事故にあった日のこと、麻里佳が姉ぶるようになったことを話し始めた。



「お姉ちゃん、何か調子悪い」


 学校が休みの土曜日の朝、隆史は起きてから身体の怠さを感じていた。


「あらあら、熱があるね」


 ピタ、と姉である香菜は、隆史のおでこに自分の手を当てる。


 何か冷たくて気持ちいい、と思うも、やはり身体は怠い。


 小学三年生になって半年、季節の変わり目で体調を崩してしまったのだろう。


 高校生である香菜は体調管理をしっかりとしているからか、季節の変わり目でも元気そうだ。


「今日は薬飲んでしっかりと休むこと。いい?」

「ええ? せっかくお姉ちゃんと麻里佳と一緒に出かけられるのに」


 今日は三人で遊園地に行く約束をしているため、本当に楽しみにしていた。


 大好きな姉と一緒に出かけるのが一番の楽しみだ。


 ちなみに両親は仕事で疲れているようで、土曜日は大抵寝ている。


「ダメ。しっかり休んで体調戻さないとお姉ちゃんと結婚出来ないぞ」

「じゃあ休む。お姉ちゃんと結婚したいし」


 将来は香菜と結婚して楽しく暮らしたいため、結婚出来ないのは何としても避けなければならない。


「よしよし。いい子だね」


 香菜に頭を撫でられるのが一番好きだし、自分がプレゼントした指輪を付けてくれるのが嬉しくてたまらない。


「えへへ」


 頭を撫でられると自然と笑みが溢れる。


 もっとしていてほしいが、香菜は妹みたいに可愛がっている麻里佳と一緒にいくようなのでそうはいかない。


「風邪が治ったら一緒に出かけてくれる?」

「もちろんいいよ。ただし、ちゃんと治すんだぞ」

「うん。約束だよ」


 指切りげんまんをした後は、隆史は自分の部屋へ向かい、香菜は麻里佳と一緒に外に出た。

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[一言] 100話、おめでとうございます。
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