俺が俺じゃなくなった日
眩しくて目が覚める。どうやら、俺は眠っていたようだ。
「お目覚めかぃ?僕の可愛いお嫁さん?」
「は!?」
意味が分からないことを初対面の人に言われて咄嗟に呟いた一言だったが、それは俺にとって一大事な事だった。結論から言うと、明らかに声が可笑しい。男の方でもかなりの低い声だったのに、俺の口から出る言葉は何故か、可愛らしい女の子の声。恐る恐る下半身を見てみる。俺の立派なリトルボーイが……あれが………ない?ついてたものがないぃ?
色々と理解できないことが多すぎる。
しかし、確かなことがある。ついていたものがなくなり、変わりに胸の方に膨らみが、、、むにむにっ。感触がある…。
これは、俗に言う貧乳と言われる類いのサイズか……。まぁ、個人的に貧乳派なのでそれは良くはないけどいいのだが。後、いつも聞こえないはずの遠くの声が聞こえる?女の子になって聴力が良くなったのだろうか?
「ハニーさっきから、ぼーっとしてるけど大丈夫かぃ?」
お嫁さん呼びがハニーに昇格している…。
初対面の男にここまで馴れ馴れしくされると腹が立ってくる。
「全然大丈夫じゃないです!!何これ?俺?理解不能なんですが??」
やけくそに大声で言ってやった。
「マロン?あのねぇ?」
「誰がマロンや!!」
「いや、栗田だから…」
「あぁ、なるほど!!!……なるほど…なるほど…
じゃないよ!!!!!!!!!!!」
「あっ、僕が誰か分からないから困ってる?自己紹介遅れたねぇ…。俺の名前は、バルト・ロズ。ここの世界では、魔王って呼ばれたりするねぇ。気軽に、ダーリンって呼んでね??」
「魔王……?なに?おとぎ話みたいな事言ってるの?てか、やだ。絶対呼ばない。」
女の子になったからか、口調が自然に女になってしまう…。
けれども、この時は目の前の事にいっぱいいっぱいでそんな事なんか気にしてもいなかった。
「ハニーが、住んでた国では、ここの事を異世界と言うらしいねぇ。でもさぁ、ハニー自分の体見たらこの状況さすがに夢じゃないって分かってんじゃない?さっき、胸揉んでたし……。」
異世界?ラノベとかの設定じゃないの?それ?ほんとに実在していたの?冗談でもいいから、夢だと言って欲しかった。
てか、誰だって目の前に胸あったら揉みたくならない?いかにも、変態だ…って目で見てくんな!!!
「いや、自分の体見たらって言うけどちゃんと見れてないから」
「あっ、なら、((パチン」
華麗に指を鳴らす魔王。
凄い大きい鏡が突然目の前に現れた。
そこには可愛らしい美少女が立っていた。
つい何時間前まで男だったと思えないとても愛らしい顔立ちだった。
目は、赤と紫のオッドアイ
髪の毛は綺麗な銀色でふわふわした絹のような髪が腰の方まで伸びている
髪の毛の間から見える綺麗な狼みたいな耳
胸は…先程の通り
身長は、見たところ150センチ代だろうか?
自分で言うのもあれだが俺可愛いとは思う。
「ってことだから、ハニー宜しくね?」
「全然理解出来てないんですけど!!」
魔王は優しい笑みを浮かべ、颯爽と何処かへ向かっている。
「聞こえない~!!じゃあ、後は頼んだよ、メイド長」
「かしこまりました。ご主人様」
「マロン様、行きますよ」
「やだ!帰る!!!」
「全裸のままここにいるつもりですか?話は後で沢山聞いてあげますから、早く着替えに行きますよ」
「いやいや、元の世界に帰してください!!」
駄々をこねる俺を見てため息をつき、無理矢理手を引っ張って行こうとする。
「えっと、ステラさん?帰してくれますよね」
「ステラでいいです。その要件は無理です。ずっと、文句言うようでしたら、監禁していいとご主人様から許可を得ているので遠慮なく監禁しますよ?」
「いや、まだ2、3言しか言ってないような」
「カンキンシマスヨ?」
「…………」
異世界に連れてこられた挙げ句、ハニーにさせられ、メイドに脅迫されました。