第7話〜取り引き〜
身体測定というのは名ばかりで内容はまるで何かしらの基準に達しているかを調べるためのものだった
血気盛んな囚人たちをよそに看守たちは落ち着いた、というよりは表情が読み取れない眼差しでこちらを見ていた
囚人たちは「さっさと始めろ」だの「早くしろ殺すぞ」だの騒いでいた
この矢次を聞くと、囚人たちの性格が元々こんな下劣な奴らに思えてくるが実はそうではない
いや、確かに最初から下劣で下品な奴らがいたのも確かではある
ただ、そいつらに流されて同調してしまったもの、とても刑務所とは言えない甘い刑務所暮らしで調子に乗っているもの、などが増殖していったのだ
その反面、真面目な囚人たちが居ないことも無い
慈郎やパルムは規則を破ってはいるが、まともな方ではある
そんなこんなで身体測定が始まった
第1種目!100メートル走!!!!
看守「位置について……ヨーイ…」パァン!!!!
次々と囚人たちが全力で走っていく
1回毎に5人が走れるようにレーンはセットされた
パルムの番である
パルム「本気出すか………」
ブサイク囚人「うわぁ、気持ちわるwwお前みたいなチビが走れるわけないやろ」
パルム(ぶん殴りてぇなぁ)
パァン!!!
銃の引き金が引かれた
囚人たちは全力で走る
刑期短縮がかかっているのだ、皆本気であろう
パルムはというとスタートダッシュからほかの囚人たちと比べ群を抜いていた
前にのめり込むかのような走りでかけていく
とてつもないスピードである
パルム「せりゃぁぁ!!!」
パルム!!!6.3秒!!!!!
囚人たち「うぉぉぉっっっー!!!!」
まるで体育大会のような熱気である
囚人たち「マジかよあのチビ!!!やりやがる!!」
囚人たち「俺も負けてらんねぇなぁぁぁ!!!!」
シティザム「次は俺たちだ、行くぞタウンザム」
タウンザム「兄ちゃんには負けんゾ」
シティザムとタウンザムの出身ケヴェレル星の住人は元より戦闘種族
この2人が遅い訳がなかった
シティザムは小股で、タウンザムは大股で走る
彼らの走りはとても美しく、その速さは恐怖を感じるものである
シティザム!!!6.9!!!
タウンザム!!!7.2!!!
タウンザム「あぁぁぁ〜、負けたぁ」
シティザム「ふん、もっと鍛えるだぞ弟よ!」
囚人たち「うぉぉぉぉぉっっっー!!!!!!」
囚人たち「ケヴェレルのくそエリート共が!!!死に晒せクソが!!!」
慈郎「化け物だらけや………俺地球人やしなぁ……」
慈郎(高校の時確か15秒後半やったな……)
慈郎の番である
異星人たちが化け物であるだけで、地球人である慈郎の走りはやはり迫力に劣る
しかし、何かを感じる
慈郎!!!12.9!!!
慈郎「は!!?俺そんなはよ走ったんか!!!??!」
困惑し、少しタイムを訝しんだが流れ作業なので次の種目へと移った
地球人囚人たち「あいつなんか早くねぇか……?そんなもんか?」
トラバサミ!!!21.8!!!
トラバサミ「ハァハァハァハァ………カラダガオモイカラキツイゼ…」
第2種目!!!握力!!!
パルム「フンっっっ!!!!」
パルム!!!568kg!!!
タウンザム!!!685kg!!!
シティザム!!!622kg!!!
慈郎!!!153kg!!!
慈郎「…………?なんでこんなにあるんや…?」
トラバサミ!!!3520kg!!!(推定)
第3種目!!!腹筋!!!!!……………………
次々と繰り広げられる測定をこなし、最後には落ち着いた身長と体重検査に移った
囚人たちはみな結果発表たるものを待ち遠しく思っていた
パルムは刑期が短くなったらそらゃ嬉しいが、反面少し複雑ではあった
シティザムたちも同じであろう………
パルム
身長148cm
体重49kg
慈郎
身長169.9
体重65kg
シティザム
身長195cm
体重258.2kg
タウンザム
身長194cm
体重223.5kg
トラバサミ
身長215.4cm
体重369.7kg
看守「今から10分程度休憩時間を取る
各々でゆっくりと休むように」
パルム「お疲れぇジロー」
慈郎「おっ!お疲れ様や
にしてもお前すごいの!!お前のことバカにしてたやつらの顔えらいことになってたぞ!!!」
パルム「いやぁ、んなことないよ
慈郎も地球人とはいえど、数値すごいんとちゃう?」
シティザム「確かに、地球人にしてはトップクラスだな
さすがだぞ」
慈郎・パルム「おっー!お疲れ様ぁ!サンキュー!」
タウンザム「いいと思うゼ!にしても兄ちゃんに何も勝ってねぇよぉぉぉ」
みんなは汗まみれでドリンクを片手に笑いあった
その後、しばし談笑することにした
慈郎「?トラバサミ兄貴は?」
パルム「どっか1人で行ったわ
兄貴は1人が好きやからなぁ」
シティザム「そうかそうか、いいんじゃないか?
俺らも本来、団体行動は苦手だろう」
タウンザム「えっ!?兄ちゃんエリートなのに!!?」
シティザム「いやっっ!違うぞこれは!やろうと思えば出来るんだ!ただしんどいというだけだぞ!!!決して協調性がないとかそんなんじゃない!決してない!!!」
パルム「アッハッハッ!!エリートの皮が剥げてきたんとちゃうか?」
シティザム「なんだと!!!誰がハゲだ!!!」
慈郎「言うてへんわww」
一同「アーッハッハッ!!!」
シティザム「そう言えば、あのレプティリアン
様子がおかしかったな」
慈郎「ん?ガラコか?」
シティザム「あぁ、身体測定の時あいつの隣のグループに俺は居たんだがあいつを見てる限り測定結果がおかしかった」
パルム「おかしいって、どんな風に?」
シティザム「レプティリアンの身体能力を考えたらあまりにも低すぎるんだよ
わざと地球人レベルか、それ以下に抑えてる
結果が高ければ高いほどいいだろうに、何を企んでるのか…」
タウンザム「へ?結果高いほどいいのカ?そんなん言ってたっケ?」
慈郎「普通に考えたら高いほどいいよな………まさかそんなん言うてへんぞ〜とかあいつら言うんかな…」
アナウンス「休憩時間終了、直ちに集まるように」
アナウンスが響き渡った
慈郎「…やけに冷たい言い方やの」
パルム「ほな行こか」
4人は重い腰を持ち上げ、グラウンドに向かった
グラウンドに囚人たち全員が集まった
やはり、さっさとしろだのとうるさい始末である
看守「………よし、全員居ます猪狩看守長」
そう言うと持っていたマイクを猪狩に渡した
猪狩「わかった、ありがとう」
猪頭の口が開く
猪頭「身体測定ご苦労
いきなり朝早くから集合させたのは申し訳ない、が本来ならばどこの刑務所でもそれが当然なんだ
それにたかが300名程度、集合に18分もかけるなんざよっぽど」
猪頭「なぜ私がここの刑務所をこんなにも甘くしたか、わかるか?」
猪頭「君たちの自粛度を確かめていたのだ」
囚人たちはざわめいている
猪頭「朝は9時程度に起きる、頭髪制度無し、金はすぐに手に入る、甘いものはすぐに食べれる、独房の行き来、夜鍋……刑務所ではありえないよな?」
慈郎・パルム(やっべ、俺らやん)
シティザム・タウンザム(まずいかもしれん……)
囚人たち「舐めてんのかてめぇよぉぉ!!!!」
囚人たち「降りてこいやぁぁぁ!!!目ん玉潰して内蔵抉りとってやらぁぁぁぁ!!!」
囚人たち「くそぼけがぁぁぁ!!!!!」
囚人たち「ぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞぶっ殺すぞ!!!!!」
猪頭「黙れゴミ共
それと結果だが………………」
猪頭「308名中、290名が不合格だ
ちなみに言い忘れていたが不合格の者は刑期は重く、刑罰を厳しくする方針だ」
囚人たち「ざけんなぁぁぁぁっっっー!!!!!!」
囚人たちが暴動を起こし、猪狩の元へと走った
なぶり殺すために
パルム「うぉっ!!!押すなやなんやねん!!!」
シティザム「こうなる事はわかっていただろうに!!」
猪頭「はぁ………どうしようもないな
頼むぞお前ら」
???「御意」
どこからともなく猪頭の傍から黒いフードを被った人と思わしき者が現れ、手に持っている装置のボタンを押した
すると忽ち囚人たちが光出した
高圧電流が激しく作動したのだ
囚人たち「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
囚人たち「あがぁぁぁぁぁぁー!!!!」
囚人たちは喚きのたうち回り、次々とその場に倒れていく
その状況、まさに阿鼻叫喚である
慈郎「!?!なんや!」
シティザム「まさか!!これか!!!!」
そう言うと懐から黄色いボタンのような装置を取り出した
この装置は健康診断の時に全ての囚人に手渡されていたのだ
看守たちはこの装置の事を、最終結果で使うものだから肌身離さずに持っておくようにと伝えられていた
恐らく、この装置が高圧電流の正体であろう
タウンザム「でもよ……何人か無事だゼ……?俺ら含めてヨ…」
その場には慈郎らを含め、10数人が何事もなく突っ立っていた
猪頭「よし、その場にいる物は合格者だ
着いてこい、お前らに合わせなければならないお方がいる」
その瞬間待ってましたと言わんばかりに上空からヘリコプターが降りてきた
オスプレイを少し大きくしたようなサイズである
慈郎らはそのヘリコプターに乗せられ、看守長が言うままに刑務所を後にした
先程のフード達は囚人たちを回収し、刑務所の奥へと入っていった
猪頭って誰やねん
ややこしくてすみません
猪狩ではなく、猪頭でいきます
あと投稿少し遅れてすみません………許しチクリ〜