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スタンディング・アース  作者: 睾善 太郎丸
5/11

第4話〜呑もうとしたら邪魔者が〜

あれから月日は流れ、2年が経とうとしていた


慈郎とパルムの仲は時間が流れる度に深まっていった

いやあの意味深とかじゃなくて


慈郎の「俺の部屋(独房)こないか?」といういかにもワンナイトなカーニバルが始まりそうな一言により、パルムはよく慈郎の部屋に遊びに行った

無論、こんなことは許可されていない

ひっそりと夜中に抜け出したり、昼休憩にこっそりと行動していたのだ


中では、慈郎がよく聞く音楽、好きなゲームにドラマ、アニメなどを紹介していた

どれもこれも70年代付近のもので、慈郎の年齢を考えると多少ズレてはいるのだが慈郎にはピッタリと来るものがあるのだろう


受刑者定番の筋トレもしている

どうやらパルムはバーベル200kgを片手で震えながらではあるが持てるパワーを所持していた

ちなみに慈郎はせいぜい両手で160kg程度である


もちろん趣味などもパルムに伝えた

中でも非常にパルムが興味を惹かれたのは神仏系統だった


慈郎は幼少期の頃から良く家族と神社に連れていってもらった

車で10分も経たない所に氏神様が居る神社があったのだ


パルム「はぇ………地球って元々綺麗やけど、こんなんもあるんやね…行ってみたい」


慈郎「なんやったら出所したら行くか?」


パルム「え??ええんか!?」


慈郎「そらぁもちのろんよ」


パルムは内心物凄く喜んだが、1つの問題に気づいた


パルム「嬉しいんやけども、慈郎は3年やから今年の夏に出るんやろ?俺はもう1年あるからさ………」


慈郎「そん時ゃ迎えに行くさ」


パルムは素直に喜べなかった

そりゃ嬉しかったのは言うまではなかったのだが、不安要素も同時にあった


何故自分にここまでしてくれるのか、というものだった

それと、今はこういう状況だから付き合ってくれているだけで出所したら他人になるのではないか、と

要するにシャバに出るまでの暇つぶし要員である

慈郎の事はここ数年でどんな人間かというのは理解出来た

理解出来たつもりなだけかもしれないが


しかし、パルムの捕まる前の環境が環境なので不安な気持ちになり信用が薄くなるのは当然のことであった


パルムはへへっ、と軽く返事をして場を過ごした


すると慈郎の部屋の扉をノックする音が聞こえた


???「あぁ…ここでいいん…よな?慈郎の部屋は」


パルム「ハーティスやんけ

どないしたんや?」


ハーティスと名乗る男は身長198cm体重150kgの大柄な黒人男性である

以前、クリスマスの日に受刑者たちで腕相撲大会をした時にケディと勝負したあと負傷してしまい、慈郎とパルムが心配して手当をしたのがキッカケで仲良くなったのである


ここ、大阪府生野にある刑務所「チンパースザッチン」は8割が異星人なのに対し、地球人は2割というあまりにもアンバランスな比率なので同じ地球人同士は繋がりやすいのかもしれない


ちなみにこの腕相撲大会でケディは仕込針をした事がバレ、他の受刑者たちに問答無用でボコボコにされた

ハーティスは呆れた顔で、関わりたくなさそうであった


慈郎「どないしたんやハーティス?こんな時間にクソ漏らしたんか?」


時計は22時をさしていた


ハーティス「2度ある事は3度無いぞ、大丈夫や

そうやなくてな………その俺明日出るからさ」


慈郎「あっ!!!そっかぁ!!!出所やの!おめでとうの!!!!」


パルム「模倣犯やから刑期短なったんよな!!!おめでとう!」


ハーティス「それを言うなら模範囚やろ………

そやから挨拶しに来たって感じやな」


慈郎「俺ら地球人は少ないからなぁ〜

彼女さんと仲良くするんやで

戻って来んなよ?」


ハーティス「あぁ、わかってるよ

パルムは地球人じゃないよな?どこの惑星出身なんや?」


パルム「わかんね

目冷めたら城東区でこのアクセサリーと変な機械があっただけやからさ」


パルムはいつも首からアクセサリーをかけていた

どうやらここ地球で目が覚めた時に壊れた宇宙船の傍に落ちていたという


慈郎「ほな今日は飲み明かすか!!!」


ハーティス「大丈夫か?看守にバレたらまずいやろ」


パルム「へーきへーき、へーきだから

バレて注意されたらその時よ

それに向こうももしかしたら知ってんとちゃう?」


ハーティス「そうか…………そうやな!!!飲もうか!!!そうしよう!!!」


ケディ「あれぇ?いいもんやってんじぁ〜ん?俺も混ぜてくれよ〜」


ケディが軽快な音楽を発しているラジカセを肩に担ぎながら勝手にドアを開けてきた


慈郎「…………」


パルム「…………」


ハーティス「…………」


ケディ「おいおい!!!んなシラケた顔すんなよ!!!!誰がお前らの元気とハッピーを奪ったってんだ!!!!出て来やがれ!!」


一同「お前じゃい!!!!」



今日も夜が老けていく…………………































看守長「これが今の囚人たちのデータになります」


男はファイルのサイズに似合わない量の資料を封筒から出し、目の前の椅子に座る綺麗な顔立ちと長髪が似合う男に渡した


長髪の男「ほぅ…………中々悪そうなヤツらばかり集まってるね………地球人2割、異星人が大半…と行ったところか」


看守長「はい、そうなっております」


長髪の男「しかし噂によると君の刑務所、他のところと比べ随分と楽園だそうだね?ほかの囚人たちがどうやら入りたがってるみたいだよ?」


看守長「………すみません、私自身、はじめて看守長を担当するという事もありまして………面目ない事この上無いです」


長髪の男「いや、別に怒ってる訳じゃない

君のとこの囚人たちの仕事ぶりはかなり社会に貢献してくれてるからね………一部は」 ピラッ


そう言いながら看守長から渡された囚人データを捲っていた男であったが、とある囚人データを見て手が止まった


長髪の男「……………コード・258?ほぼデータがない…?この少年は?」


看守長「はっ!彼は2年ほど前に来た者で、事情はどうあれ暴力沙汰を起こし私の担当する刑務所に来ました

確かに………データはほとんどありませんね………」


長髪の男「そんな子も入れちゃうのか………かなり杜撰だね、上の者も」


長髪の男「なんか可哀想だね、名前すら分からないなんて

こんな子をみるのは初めてじゃないけどもそれにしては随分と綺麗な出で立ちだ…」


看守長「彼が言うには宇宙船がそばにあったと言っていますが、それも定かではありません

何せ見つかって無いものですから

ですが、最近自分のことをパルム、と言っていますね」


長髪の男「パルム?猪頭(いがしら)君が付けたのかい?」


看守長猪頭「いえ、彼がここに来て数日たってから鈴木慈郎という男と良く接していまして恐らく、彼が付けたものかと」


猪頭は長髪の男が持っている資料を丁重に借り、この人物ですと長髪の男に手渡し、残りの資料は机に置いた


長髪の男「………………ふぅん…この人が、か」


猪頭「何か思うことでも?」


長髪の男「いや、面白いなって思っただけだよ

この2人の出所は何時なの?」


猪頭「鈴木慈郎は今年いっぱいです

コード25………パルムは後1年になっております

2人は他の囚人たちと比べ、模範囚です」


長髪の男「そっか、色々とありがとね

また何かあったら頼むよ」


猪頭「はっ!!」

強く返事をした後右手で敬礼のポーズを取り、部屋を後にしようとした猪頭に長髪の男はゴメンゴメンと声をかけてきた


長髪の男「最後にもうひとつ、君の刑務所にいる囚人たち

模範囚と呼べなくてもいいから比較的マシなヤツらとどうしようもないクズと分けてまた教えてくれないかな?」


資料を置き、紅茶を(すす)っているこの男が何を考えているのかは分からないが猪頭は少し(いぶか)しみながら了承した


猪頭「?わかりましたやっておきます

それでは失礼します」 バタンっ


猪頭が部屋を出た後にもう一度資料を手に取り、紅茶を男は啜った





長髪の男「これは面白い事になりそうだ」


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