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それは意外に簡単で




カフォンに対し、そう決め台詞を口にする大賢者ファースト。


そんな彼女らの隣にて、



「やっぱり…私だけ酷くないですか?」

「あ、ああ。…うん、まぁ」



とカルデラの弱々しい言葉に神宿は苦い表情を浮かばせていた。

確かに、彼女の父親は剣豪とまで呼ばれた男なのかもしれない。



だが、だからといって、娘である彼女もまた剣の腕がいいとは決まっていないのだから……。











昼食は、軽く炒めた肉じゃが擬きだった。


厳密に、野菜たっぷりのヘルシー炒めに近いのだが、それでも他三名の彼女たちは口々に高評価を呟きながら、数分もせずして完食してしまうのであった。




そして、リビングにて、大賢者ファーストは再び作業に戻り、それを興味津々で見つめるカフォン。


後、残されたカルデラはというと、




「あれ以上、訓練場を破壊されるのは流石に不味いから、当分は外で訓練するからな?」

「ぅぅぅ……私のせいじゃ、ないのに…」



涙目な彼女を引きずりながら、神宿たちは今、玄関前の敷地にやって来ていた。



「まぁ、カフォンについては、あっちに任せておくとして、こっちはこっちで何とか突破口でも見つけてみるか」

「ぅぅ」

「はぁ、いつまで拗ねてんだよ。ほら、さっさと剣出せ」



そう急かす神宿に、カルデラは頰を膨らませながら小さな紙切れを出す。

そして、微弱な魔力を流しながら、


「ぅ、ウェイポン・オープン」


そう唱えた直後。

眩い光と同時に紙は変質しーーーー



グザッ!! という音と共に、地面に突き刺さった藍色の剣がその場に君臨するのであった。







「ぬっ、ぬ〜んっ!! ダメっ、抜けないっ!!」



地面に突き刺さった剣を必死に抜こうと頑張るカルデラだったが、一向に抜けない。


どうやら、今回の出現のさせ方が不味かったらしく、剣先から刀身の半分ほどまでちゃっかりと地面に突き刺さっている状態なのだ。



「…………」



その一方、神宿はというと、そんな彼女の後ろ姿を眺めながら、ふとある事を考え込んでいた。


(それにしても、師匠のやつ……よくあんなの持ち上げられたよな)


剣を復元させて、あの日。

賢者アーチェは軽々と剣を持ち上げていた。


最初は単に力持ちなだけだと、そう思っていたのだが…。





『トオルくん〜! これ、持って〜』




二人で一緒に住んでいた頃、よくアーチェに荷物持ちを頼まれていたことを神宿は思い出していた。


しかも、それは二、三キロぐらいしかない荷物であって……、



(……まさか、だよな)



神宿は、ある一つの可能性を思いつきながら、ゆっくりと剣の元へと歩いていく。




「っはぁ〜、ダメ、無理〜っ!」




そして、早々に諦め、地面に座り込むカルデラの横を通り過ぎ、



「って、トオル?」



神宿は、その手に魔力を纏わせながらーーーーーー剣の柄を掴んで持ち上げた。









ーーーーーースポン、と。







「「え?」」







神宿は当初、もっと重たい物を持ち上げる気持ちで力を込めていた。


しかし、剣の柄を掴み持ち上げた時。




「………」




あの重さが嘘なほどに、藍色の剣は紙切れ同様の軽々さで地面から抜くことができてしまったのである。



そして、そんな光景を目の当たりにしたカルデラはーーーーー


「なんで…」


プルプル、と体を震わせながら、





「何で先にトオルが使いこなしてるのーーーーーっ!?!?」





泣き叫ぶように、その胸の内にあった思いを叫ぶのであった。






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