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吐露

話を片手に(スマホ手に)寝てしまってました!?




『勇者候補って、何なの?』



カルデラの口から出たその言葉に、驚いた表情を見せた神宿。

しかし、



「あ…そっか……ファーストから聞いたんだな」



その言葉が誰の口から出たものなのか……神宿は、容易に推測することが出来た。

それは、あの場にいた者の中で唯一その言葉を知っている人物。



ーーーー大賢者ファーストによるだ。



脳裏にあのニヤケ面を浮かび上がり、若干少し苛立つ気持ちもある。

だが、そんな事よりも…


「………」


じっとこちらを見つめる少女。

カルデラを一瞥した神宿は、短い沈黙を続けた後で…、




「……そう、だな。………どこから話そうか…」




誤魔化すことは…もう出来ないだろう。

そう察したからこそ、彼はその口を動かし始めた。





そうして、神宿は、……この世界に来た経緯。

ーーーーーー転生者であることを彼女に話し始めるのだった。












そして、ちょうどその頃。

男子寮の別室。


アーチェが寝かされている、その室内でカフォンは今、大賢者ファーストから神宿についてのーーーーーーいや、勇者候補についての話を聞かされていた…。



「つまり、死んでからこの世界飛ばされたのが、アイツってことなの?」

「うむ」



信じられない様子でそう言葉をつくカフォン。だが、そんな彼女の他にも、その部屋にはさらに二つの人影があった。



それは、もう一人の勇者候補であるシグサカと。

そして、疲労のため未だ眠りから覚めない少女、キャロットだ。

すでに彼女の体にはバケモノの姿はなく、封印素体としては解放された身でもある彼女なのだが、


「…………」


シグサカはそんな彼女の頭を撫で、まるであやすような仕草を見せる。

しかし、その手とは裏腹に、瞳はずっと大賢者ファーストの方に向けられていた。



そして、勇者の話が続けられているに関わらず、彼は未だ口を開く様子を見せなかった。





ファーストはそんな彼を横目で見つつ、気を取り直すようにカフォンに視線を戻し話を続ける。



「…じゃが、アヤツの場合は女神に勝手に落とされたようなものなのじゃ。しかも、この世界から出られないように…二つのスキルでもある自害阻止と自然治癒のスキルがその身につけられておる」

「……自害…阻止…って?」

「簡単に言えば、自ら死ぬ事が許されない状態にあるということじゃ。後、その二つのスキルのせいもあって、アヤツは上位の魔法を使うこともできない」


大賢者から聞かされたそれらの内容はあまりにもハンデが大きいものだった。


逃げることも、そして、魔法使いとして上へ昇りつめることもできない。

そのあまりに理不尽な彼の現状に対し、カフォン顔色を曇らせ、



「……そんなの…酷すぎるじゃない…」

「確かに……そうじゃな。ソヤツと違い、あの小僧は意志すら関係なくこの世界に落とされた。勇者となることが、どういうことかも知らされずに…」



大賢者ファーストは、そう言葉をつきながらーーー勇者であった者たちの事を思い出した。



それは、かつて昔から転生者としてやってくる勇者たちの姿を…。

そしてーーーーそんな彼らが辿る、最後の末路を…。



……だからこそ、ファーストはカフォンに答えた。




「……じゃからワシは…思っておるのじゃ。…例え、女神に選ばれたとしても………アヤツが勇者にならなくても良いのではないか、とな」





ーーーーそれが賢者の代表でもある、大賢者自らが出した意向だった。










だがーーーそんな時だった。




「だけど、勇者は必ずその宿命を担わされることになる」



沈黙が漂っていた室内。

その空気を切り裂くように、今まで口を閉ざしていたシグサカが、その言葉を口にしたのだ。


カフォンが険しい表情で振り返り、そんな彼を睨みつける。

しかし、シグサカは全く顔色一つすら変えることなく、大賢者ファーストを見据えた。




そして、シグサカはさらに加えて言葉を付け足す。



それは、大賢者ファーストがわざと言わなかったーーーその言葉を。







「それがーーー勇者としての運命だから」







勇者となったものは必ず、その使命と向き合わなくてはならなくなる。

そして、例え、離されたとしてもーーーーその運命からは、逃げることなど出来ない…。



「……っ、そんなの…」


シグサカの言葉に対し、顔色を歪ませるカフォンは直ぐ様ファーストに振り返り、その目で訴えた。



ーーーそんなの間違っている。

ーーーー望んでもない彼が、わざわざそんな運命を背負わなくてもいいはずだ、と。






しかし、


「…………」


大賢者ファーストはーーーーその訴えを、了承してはくれなかった。


「…ぇ」


彼女は静かに首を横に振り……。




そうしてーーーーーーシグサカの言葉は正しいものであると、裏付けられてしまうのであった…。




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