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弟子として





戦乙女と大賢者。

二つの力が激しい攻防を繰り広げ、破壊の音が館内に鳴り響く中、


「…………」


神宿はカルデラから事に至った事情を聴き終え、短い沈黙を続けていた。

そして、その場にいる者達の視線が集まる中で、神宿は未だ回復仕切っていない体を動かし、



「…ト、トオル?」



カルデラの声に反応することなく、その部屋の出口となる扉へと、歩き出そうとしていた。






「っ、トオル! ちょっと待って!」



だが、そんな彼の腕をカルデラは必死な思いで掴み止めた。

未だこちらに振り返ってくれない神宿に対し、カルデラは弱々しい声で尋ねる。




「もしかして……アーチェさんを助けに行く……つもりなんですか?」

「……………」

「今さっきまで死にかけてたのに、そんなボロボロの体で……トオルに何ができるっていうの? 賢者様の闘いに…私たちみたいな子供が入り込めるわけがないじゃないですか……」

「………」

「それにっ ……奇跡なんて、そう何回も起こるものじゃないんですよ? 今度こそ…っ、死んじゃうかもしれないんですよ! それなのにっ!」


行って欲しくない。

もう傷ついて欲しくない。


悲痛な叫びのように、そう言葉を言い続けるカルデラ。



しかしーーーー





「……それでも、だ」

「ッ!?」

「俺のせいで師匠が大変な目にあってるんならーーーーそれを助けるのが弟子である……俺のやるべき事なんだ」




カルデラに振り返り、そう優しげに口元を緩ませながら言う神宿。

その表情からは、決して何を言われようともひくことのないーーー確固たる意志が感じ取れた。



それほどに、彼の思いは本物だった。




ーーーだが、それでも…。


「……ひどい、ですよ」

「…悪い」

「私やカフォンさんがっ、どれだけ心配したと思ってるんですかっ! あんな姿を見て…どれだけ怖かったと…思ってるんですかっ!!」

「…………」

「ちゃんと私たちのことも考えてよ……、傷ついて欲しくない! 行って欲しくない!! もういなくなって欲しくない!!っていう……私の気持ちを考えてよっ!!」



神宿の手を掴むカルデラは体を小刻みに震わせながら、そう言葉を叫んだ。

涙を流しながら、報われない感情に表情を歪ませた。


その場に居合わせるカフォンもまた悲しげにカルデラたちを見つめ、シグサカたちもまたその場で立ち尽くす神宿を見つめ続けた。





皆の視線が集まる中ーーーーー神宿はそんな泣き続けるカルデラに対し、





「………ああ、わかってる」





頭に、そっと…。

優しく手を置き、神宿は口を開く。



「それでも、なんだ。……俺はアイツを助けたい」

「ッ………」

「大丈夫さ……絶対に帰ってくるから、だから…待っててくれ」




カルデラの手からゆっくりと自身の腕を離す神宿は、言葉をなくし…唇を紡ぎながら泣き続ける彼女に笑いかけながら、




「……それじゃあ、行ってくる」




神宿はそう言って…背を向け、歩き出し、その扉から出て行った。



閉められた扉の奥から聞こえてくる、少女の嗚咽を耳にしながら…。





「…………」




神宿は大きく息を吐きながら、意を決して廊下となる道を走り出そうとした。



その時。




「僕も行かせてもらうよ」




開かない扉から、もう一人の勇者候補。

シグサカが足を踏み出し、並び立つように神宿の隣に立つ。



「お前…」

「今回の一件は僕の師匠が原因でもあるんだ。…君の言い分が通るなら、師匠の尻拭いをするために弟子である僕が付く事も構わないはずだろ?」

「………本当にいいのか? お前には。キャロットが」

「何、大丈夫さ。僕も、彼女に約束したからね。ーーー絶対に帰ってくる、って」



そう言って笑うシグサカに神宿はしばし茫然とした後、呆れたようにそっと溜息を漏らした。



ーーーーーーそして、





「逃げるんだったら、今のうちだからな?」

「ははっ…、それはお互い様さ」




互いに素性の知らない間柄の中でありながら、二人は共に笑みを浮かべる。


シグサカと神宿。

二人の勇者候補の共闘が確立された、瞬間でもあったーーーーーー





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― 新着の感想 ―
[良い点] 話の筋はいいと思います。胸糞な登場人物が多いのも、最終的にスカッとした展開さえあれば、それはそれでありかなと。 [気になる点] 誤字、脱字、いまいち意味がわかりにくい文章が目につくため、脳…
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