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スクルド




魔導書に込められた莫大な魔力によって作り出された火炎と爆水。

それらは敵を押し潰すように、戦乙女の姿が飲み込んだ。


ーーーーーだが、しかし。




「《ーーーーースコグル》」




その濁流のような攻撃が高出力で放たれ続ける中ーー。


そんな危機的状況でもあるはずの中で、平然として言葉を発する戦乙女、ワルキューレの姿がそこにはあった。

ーーーーその刹那。


「《邪魔です》」


振動波を食らったかのように、ヒビ割れと同時に粉々に砕け散った二つの魔法陣。



そしてーーーーワルキューレが、その瞳で大賢者を見据える中で、





「《ーーーーーースクルド》」





彼女がその言葉を発したーーその、次の瞬間だった。







ザン!! という音と共にーーーファーストの左肩から血が飛び跳ねたのだ。



「ぐっ…ッ!」


片膝をつき、顔をしかめるファースト。


血が流れ続ける肩には剣で切り裂かれたような傷痕が作られ、激痛と流血が続く。




「ッ、コヤツ、めが……ッ!」

「《ーー流石の貴女も、未来までは予期できないようですね》」



そして、ワルキューレが発した、スクルド、という言葉。


その意味が指し示すものーーーそれは未来。



それは、ーーー未来の事象を確定させる攻撃。




それこそが、戦乙女ワルキューレにのみ持つことを許された六つの力。

その一つだった。






「っ、リヴィアスッ!』





髪色を青に変え、即座に魔法を唱えるファースト。

その瞬間、肩に作られた傷が光とともに一瞬にして回復した。


だが、



「《ーーーどうやら、今のダメージで磨り減った体力までは…回復しなかったようですね》」

『ッ、大きなお世話じゃ…ッ』



ファーストは冷や汗を垂らしながら、苦痛に満ちた顔で立ち上がり、皮肉を言うようにその口を動かす。



『…しかし、スクルド、とはな…。以前のお主は確か、二つまでしか力を使えなかったはずじゃが…』

「《ええ……確かにそうですね。…そして、私は貴女に敗れ…封印された。しかし、それは仕方がなかった事なのです。何故ならあの時の私にはーーーーその二つしか、力を使うことを許されなかったのですから》」

『……………』



それはかつて昔、一度目となる戦乙女と大賢者。

二人の戦いの時に明かされなかった会話でもあった。



「《しかし、今は違う。ーーーこの世界が私の力に耐えられる世界になった。だからこそ、私は己に持つ力を酷使することができるのです》」



戦乙女ワルキューレは宙を浮きながら、地上に立つ大賢者ファーストを見下ろす。



「《……だから、今度こそ》」



そして、彼女は唇を緩ませーーーーーー






「《目障りな貴女を…やっと、殺すことが出来るのです》」







ワルキューレはーーーーーー笑った。

快楽と憎悪、それらを抱いたような笑みを浮かべた。


それはまるで…、弱者をいたぶりる悪質な強者のように…



『ッ…この、アバズレめ、がッ』



そして、ファーストがその言葉をこぼしたーーーーーーその次の瞬間。













ゴボッ、という音と共にーーー



『!?!?!?』



大賢者ファーストの腹部を、紅の槍が貫く。


その未来が確定されて、しまうのであった…。





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