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プラスチェイン





雄叫びと同時に、地面に散らばっていた床の破片の一つが砕け散る。


神宿は手を交差させ、それと同時に宙に展開されていた魔法陣もまた主を守るように、前へと移動する。

ーーーーだが、




「っガっ!?」




直後に来た衝撃は、魔法陣を含めた神宿自身をも纏めて後方に吹き飛ばしたのだ。


再び壁に激突し、口から血を吐き出す神宿。





魔法陣のおかげもあって、最初の一撃ほどの威力はない。

だが、敵の姿が見えない事によって、自害阻止スキルが十分に発揮されていないのもまた事実だ。


(ッ、く、そッ…!)


膝から崩れ落ちかけた神宿は何とかその場で踏みとどまり、霞む視界の中、目に見えない敵に向けて手のひらをかざす。




「ウォータ《スプレッド》!!」



そして、連弾の様に水の魔法を放った。



一つでも当たれば、敵の居場所が少なからずわかる。

それが神宿の狙いだった。

ーーーーしかし、



(あたらねぇ…ッ!)



全弾のどれもが、空を突いてしまった。

確かに、攻撃速度からしてみれば避けるのに苦のない魔法だった。

だから、簡単に避けられてしまうという、予感もあった。


だが、それでも、



(避ける際に、少なくても音が聞こえるはずだろ? …なんで)



床の上を移動する。

それなら、少なからずも微かな音ぐらい聞こえてくるはず…ーーーーーーいや、



(…ま、まさか…)



その時、神宿がある可能性に気づいた直後。

神宿は反射的にその場から真横に飛び逃げた。



その次の瞬間。



ドォン!!! という音と共に、神宿のいた場所に重い何かが落ちた。

床が悲鳴をあげるように、ヒビ割れる音が地面から弾きだされる。




「ッ、くっそ!」




神宿は手を突き出し、再び魔法を放つ。

だが、またしても当たらない。




「はぁ、はぁ、はぁ…っ」



神宿は疲労に満ちた顔で、荒い息を吐く。

賢者バルティナに啖呵を切ったものの、目に見えないバケモノに対しての勝機が見えない。



せめて、その姿が少しでも目で確認できたなら、自害阻止ソキルで攻撃をフルで防御することができるというのに、




(どうする…このままじや……)




神宿は歯を噛み締めながら、ふと視線を床にへと向けた。




「!?」




ーーーーーその時だった。













「あら、どうしたのかしら? もしかして、…もう諦めたの?」



じっとその場で固まる神宿に対して、全く無傷のまま椅子に腰を下ろす賢者バルティナがそう言葉をつく。


だが、その時。


「……?」


バルティナが見つめる中で、神宿がーーーーーーー笑っていたのだ。

それはまさに、勝利を確信しかのような笑みを浮かべながらーーー






「ストーン《ボム》」





神宿は手のひらを頭上に掲げながら土の魔法の唱え、かざした手の上には頭一つ分ほどの大きさの土の塊が作り出される。



そして、神宿がそれを頭上に高くへと放った、次の瞬間。





バン!!! という音と共に、土の塊はあっけなく爆発し、頭上にからはパラパラと土の粒が降ってくる。



「…一体、何を」


バルティナが目を見開き、そう唇を動かそうする。

だがそれよりも早く、




「ウォーター《ボム》!!」



両手に掲げ、更に続けて神宿は水の魔法を放った。


それもまた再び頭上高くまで飛ばされ、その地点で爆発する。

そして、真下に向けて、水の飛沫が降ってくる。







「…はぁ」



神宿は大きく息を吐き、だらん、と両腕を真下に下ろした。


そして、その時。


神宿が見つめていない方向から、目に見えないバケモノが迫り寄りーーーー





ーーーー回避できない距離にへと、迫った。









その次の瞬間だった。


ガキィィィィン!!! という音と共に、今度はバケモノの方が跳ね返るようにして後方へと吹き飛ばされた。


バケモノの吹き飛ばしたもの。



それはーーーー神宿の持つ自害阻止スキルが作り出した防壁の魔法陣だった。





「確かに危険を感知するあたり、獣じみてるとは思ったさ」



神宿は片手を真下にやり、そして、もう片方の手を少しあげて構える。




「だけど、危険は感知できても、自分の姿までは確認することはできなかったみたいだな」




神宿がそう指摘したのは、バケモノの体。


正確には、見えないはずの体にこびりついた濡れた土に対してだった。





(まぁ、図体がデカかった分…気にもとめなかったんだろうけど…)




床に散らばる壁の破片。

それに土が使われていたのが幸いした。


神宿は視線を落とした際、それに気づきーーーーー目に見えない敵に対しての対処法を見つけたのだから、




「ーーーーそれじゃあ、終わりにするぞ」




自身の力をそのままモロに喰らい、未だ起き上がれずにいるバケモノ。


濡れた土が付着していることもあって、それが微かにオオカミのような姿をしていることは理解できる。



だが、そんな事は今更どうだってもいい。





「ウィンド《ビルド》」





神宿がそう唱えた直後。

目の前に旋風が生まれ、それは神宿が考える姿へと固定されていく。



(アレを倒すためには…あれしかねぇ)



バケモノを倒せる魔法があるとすれば、ーーそれはカフォンを助ける際に初めて使用した、互いに違う属性魔法とプラスチェインを重ね合わせた、あの魔法しかない。




だが、アローのような小さな攻撃では勝てない。

もっと、強い魔法でなければ、アレは倒せない。





(ならーーーっ)





だからこそ、神宿は考えたのだ。


特性を備付けるプラスチェインにおいて、一つの魔法に対し、二つ特性をつけることは困難なものだった。

自身にも被害が出る、あまりに不完全な魔法の使い方だった。



しかしーーーーそれに対する対処法を神宿は既に掴みかけていたのである。





それは、カフォンが新たに手にした武器、銃を見た時だった。




二つの特性によって、自身に被害が出る。

それならーーーー仮にそのどちらかの魔法を別の魔法の中に放り込んでしまえばどうだ?


例えばーーーー筒状の何かに放り込めば、少なくとも被害は最小限にとどめられるのではないか? と…





ーーーーーそして、神宿は一つの方法を見つけ出した。

それはーーー








「ーーーーーー《キャノン》」







その次の瞬間、神宿の目の前に小型化された軽量型のキャノン砲が作り出される。



直後、神宿の手には二つ特性を備え付けたことによる魔法の反動によって、擦り傷が生まれる。

その上、正確な形状が分からなかった分、容姿と機能、それらだけを重視したあまりに不完全な形とはなってしまった。


だが、それでもーーーー



「ファイア《ボム》《スクリュー》」



あのバケモノを倒せるなら、何だっていい。





キャノン砲の中に入れ込まれた火の魔法は二つの特性をによって激しく揺れ動く。


だが、風の魔法によって作り出されたキャノン砲の内部に詰め込まれた事によって、被害は最小限にとどめられている。






「これで終わりだ」






神宿はバケモノを睨みつけ、キャノン砲に魔力を更に注ぎ込む。



その場一体の空気が揺れ動き、同時に片方の手は既に血みどろとかしていた。

だが、それでも神宿はやめようとはしなかった。




その場で今も苦しみながら倒れるキャロットを助けるために。



神宿はーーーーバケモノを倒すと決めたのだから。







体を起き上がらせながら神宿に向けて咆哮を上げるバケモノ。

その敵に対し、








「ーーーーー吹き飛びやがれ、《キャノンボム》!」









ーーーー神宿の魔法は放たれた。


キャノン砲から発射されたそれは、回転と爆発を取り込んだ火炎の爆流弾となり、驚異的な速度によってバケモノに着弾した。


そして、その次の瞬間。






「!!?!?!!!?!?」







眩い光と同時に、爆流弾から生み出され大爆発がバケモノに炸裂した……




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