塞ぐ者
勇者候補。
そう言葉を口にした賢者バルティナは、ゆっくりと言葉を吐露していく。
「シグサカから話を聞いたときは、まさかとは思っていたのだけれども、本当にそうだとはねぇ」
「…っ」
「ねぇ、顔に出やすい、って言われたことない?」
図星を突かれ、あからさまに動揺を現してしまった。
その事に神宿は悔やんだ表情を見せる。
そんな彼に対し、
「でもねぇ。例え、隠していたとして、そんなの直ぐにわかるはずだったのよ」
「は?」
だって、とバルティナは言葉を続け、
「貴方が食べていたそれには、私独自に開発した特別性の毒を使っていたんだから」
「!?」
その言葉に神宿は目を見開き、反射的に目の前にあった料理をはらってしまう。
「本来なら即効性を重視して、食べた直ぐ後に毒は回る手はずだったのよ。まぁ死にはしない上、私の眷属になるようにする誘惑類の毒なんだけど」
「ッ、お前…」
「でも、貴方にはそれが全く効いていなかった」
その言葉通り、神宿の持つ女神のスキルでもある自然治癒スキルの恩恵があった為だ。
「予想外。いえ、予想以上に貴方に興味が湧いたわ。貴方は一体どんなスキルを女神様にいただけたのかしら、ってね」
「…別に、俺の場合は最悪最低のスキルを勝手に与えられただけさ」
皮肉な言葉をつき、その場から立ち上がり、後ろにある出口を意識する神宿。
しかし、
「あら、もしかして帰れると思ってるのかしら?」
そこには、出口の前に立つ一つの人影が存在していた。
それはーーーーー
「…キャロット」
「申し訳ありません、トオルさん」
少女、キャロットが道を塞ぐようにして、神宿に対峙していた。
その手には風の魔法で作られた球体状の魔法が練り上げられている。
歯を噛み締める神宿。
その一方で、賢者バルティナは唇を緩ませながら、
「それじゃあ、今から貴方の力を。……いえ、勇者候補の力を見定めてあげようかしら。ねぇ、キャロット?」
「はい、バルティナ様」
主の命に従うように、キャロットは静かに息を吐きながら神宿を睨んだ。
そして、彼女は、
「手荒くしたくありません。なので、どうか素直に降伏してください、トオルさん」
「…悪いけど、嫌だね」
「そうですか……なら、仕方がありません」
神宿の返事を聴き終えた、その直後。
「!!」
「っ!?」
キャロットはその瞳を鋭くさせ、神宿目掛け風の魔法を放つ。
神宿とキャロット。
互いに競い合わないはずだった、二人の闘いが、こうして始まってしまったのだった……。




