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◆魔法使いの弟子になる

一日1話ずつ更新できていけばと思っています!



魔法使いことアーチェはテーブルの上を片付けながら、一人口を動かしていた。


「私が持ってる鑑定スキルはその名の通り、相手の名前や力量とか後持っているスキルなんかを見破るスキルなの」

「…………」

「だからちょっと試してみたくなったんだけど、それにしても自害阻止と自然治癒か〜。これでもそこそこ色んなものを見てきてる自信はあったんだけど、流石の私もその二つは初めて見たかなぁ〜。……だけど、普通に考えたらそれって何というか自殺を防止するためにつけられたスキルに見えるのよね〜」


そして、粗方掃除をやり終えた後で、ニッコリと口元を緩ませながら顔を動かし、



「だからさ、そろそろこっちに来ない?」

「こっち来んなっ!!」



部屋の隅っこでガチ震える神宿に向かって、その笑みを向けるのであった。







「…………」

「ほらほら、そんなに拗ねないで。ちょっと試してみたかっただけなんだから」

「いやいやいや。試しで毒を盛るやつなんているかよ、普通……」


しばらくして何とか落ち着きを取り戻した神宿は今、ある一定の距離をとりながらアーチェの話に耳を傾けていた。


「でもね。今回、私みたいな魔法使いに見つかったからよかったものの、ほかの人たちなんかに見つかってたら、君。……色々とマズかったのよ?」

「いやいや、アンタみたいなやつよりマズイやつなんていないだろ」


神宿は今さっきやってくれた事をそのままアーチェに問いただしたくなる。

だがしかし、アーチェは難しい表情を浮かべながら、


「本当よ? だって私の場合は軽いイタズラで済んだけど、下手すれば最悪、牢屋にぶち込まれて一生地上の光も浴びれないほどに体を弄られちゃってたのよ?」


本気で心配した様子で、そんな言葉を口にしたのだ。

これには神宿も一瞬固まった後で、



「…………え、マジで?」

「うん、マジで」



最初は冗談で言っているのかと思った。

だけど、最後の言葉だけはわりと本当だったらしく、アーチェも真剣な顔で答えてくる。


「「…………」」


そして、しばしその場に沈黙が落ちたのち、



「も、森で一生住むっ!! お、俺には関係ないっ!!」


神宿は乱心したように、そんな叫び声を上げた。

だが、対するアーチェは首を横に振りながら、


「多分無理だと思う。だって君の事を探してた冒険者の人たち、今もギルドに応援を募ろうかとか言って、色々と話し合ってるみたいだから」

「はぁ!? 色々って、まだ諦めてないのかよアイツらっ!?」

「う〜ん、そうみたいだね」


マジか……、と項垂れる神宿に対し、アーチェは苦笑いを浮かべ、


「でも、仕方がないよね。だってこの森は魔族とかが出没することから、一般の人なんかは立ち入り禁止になってるほどの森だから。そんな森に君みたいな少年がいたら、変装した魔族かなんかだと思って勘違いしちゃうかもだろうし」

「いやいやいや、横暴すぎるだろっそれ!?」


この世界ならではの常識に意を唱えながら、神宿は再び頭を抱え悩みこんでしまう。

このままでは完全に住む場所がなくなってなってしまう事に加えて、日々恐怖に怯えながら生活しなくてはいけなくなってしまう。


(どうする、このまま逃げ続けるか? いや、もしくは、もう一度覚悟を決めて、命乞いを……ぅぅ、でも)


神宿の言葉すら聞かずに追いかけてきた冒険者たちだ。

今さら命乞いをして、何とかできる保証もなく、


(どうする。…………どうする!)


真剣に頭を抱え、神宿は困った表情を浮かばせていた。

だが、そんな時。


「ねぇ」


神宿の目の前でしゃがみ込んだアーチェは、ニッコリと笑みを浮かべながら、ある提案を持ちかける。



「 もしよかったら、君。ーーーー私の弟子になってみない?」

「…………は?」



一瞬、固まる神宿。

だが、そんな彼を気にせずアーチェは話を続ける。


「私の元で魔法を体得すれば、色々とやれることが増えると思う。それに加えて、この森にも当分は入られるよ? 一応、私。この森の滞在許可とかもらってる身だから」

「え、いや。……なんで、そこまで」

「さっきの詫びもなんだけど、まぁ〜強いて言うなら君のことが気に入った、からかな」

「…………」


ねぇ、どうする? と神宿の顔を覗かせ、笑みを浮かべるアーチェ。

事実その提案は神宿にとっても、悪いものではなかった。ただ、先の一件さえ除けば、素直にウンと頷けただろう。

だが、しかし、


「弟子になるんだったら、この家に住まわせてあげるし、それにご飯や寝床とかも普通に貸してあげれるよ?」


仮にこの提案を蹴って、逃げたとしても、その先に待つのは、後にも先にも冒険者たちによって捕まる未来しか見えない。

もしくは、殺されるかもしれない。


「…………」


神宿は今もこちらの顔を覗き込むアーチェを見上げながら、ここまでそう簡単に心を許してしまっていいのか、と考えながらも、


(……もう一か八か、腹をくくるしかない)


神宿は意を決した様子で顔を上げ、



「わかった。……俺、あんたの弟子になるよ」



了承の返事を返した。

そして、一方のアーチェは小さく驚いた後で口元を緩ませ、




「ふふっ。それじゃあ、よろしくね?  カミヤド、トオルくん?」




こうして、神宿 透はこの日。

魔法使いアーチェの弟子となるのであった。



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