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キャロット






それから一夜が明けた翌日。



「ふわぁ〜!」


学生服姿に身を包む神宿は今、大きな欠伸をつきながら学園内の廊下を歩いている。


ちなみに、今ちょうど四時間目の授業が終わり、昼休みに突入した所だったのだが、



(まさか、徹夜するはめになるとは思わなかった…)



その言葉通り、神宿はここまでの時間。

一睡も出来ずに学園の授業を受けるはめに遭っていたのである。




というのもーーーその原因となったのが、カフォンとカルデラ。二人が手にした魔法具の所為でもあるのだが、


(それにしても……ズルイよなぁ…)


そう、内心で呟く神宿。


それは真新しい魔法具を手に入れた事に対してーーーーーーではなく、昨夜から朝にかけて徹夜の修行をしていた彼女たちに対してであり、







「ねむねむ……ぅぅ」

「ぐー、ぐー」






朝方。

同じ登校時間にも関わらず、彼女ら二人は見事にリビング広間にて爆睡していたのである。

しかも、



「んー、多分魔力切れからの疲労だねー? 多分だけど、起きないと思うよー?」



そんな彼女たちを叩き起こそうとする神宿に対し、アーチェからはそんな言葉が返ってきた。








そんなわけもあって、結局一人で学園に登校しなくてはならなくなった神宿は、目の下にクマを作りながら、深々と大きな溜息をつく。

そしてーーー帰ったらあの二人に雑用たらふくやらせよう、と誓う。


そんな時だった。






「お久しぶりですね、トオルさん」





神宿は、背後から突然と声をかけられ振り返った。

すると、そこには、





「あ、アンタ…確か」

「はい、キャロットです。…あの……少し、お時間をもらっても大丈夫でしょうか?」





以前、カルデラを助ける際に手を貸してくれた少女ーーーキャロットが口元を緩ませながら、立っていたのであった。












場所は変わって、中庭の広場付近。

木製のベンチに腰掛ける神宿とキャロット、なのだが、


「どうしたんですか?」

「あ…いや」


キャロットは気にしてないようだが、その広場には今も少なからずも他生徒の姿がちらほら見える。

しかも、学園内でも密かに有名でもある彼女に加えて、先日の一件で悪目立ちをしてしまった神宿の二人が並んで座っているのだ。




(視線が凄すぎる…)



冷や汗を流しながら、あまり周りを見ないようにしよう、と思いつつ、神宿は話の本題へと移った。





「それで? 俺に話したい事があるっていうからここまで来たんだけど、一体何なんだ?」

「……ええ、その……実は」



キャロットは一度周囲を見渡しながら近くに人がいない事を確かめ、ゆっくりと神宿に顔を近づけながら唇を動かす。



近寄った際に見える、その潤んだ唇に一瞬とドギマギする神宿。










「シグサカ様のお師匠様から、貴方を一度、館に招待したいと言伝を頼まれているのです」

「……………は?」









だが、その言葉を聞いた瞬間。

神宿の心は一瞬にして正常に引き戻された。




一度たりとも面識のない、シグサカの師匠。そんな謎の存在からの招待?





物凄く嫌な予感する、と神宿が顔を顰める一方でキャロットもまた目を逸らしながら申し訳ない様子で頭を下げるのであった。



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